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今年4月1日「18歳結婚」スタート~校則で「高校生夫婦」を禁止できる?

竹内豊行政書士
今年4月1日から18歳になれば親の同意なしで結構できるようになります。(写真:アフロ)

2018(平成30)年6月13日,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立し、今年2022(令和4)年4月1日から施行されます。

この改正により、現行の成人年齢を規定する民法4条は、「年齢20歳をもって、成年とする。」から「年齢18歳をもって、成年とする。」と変更されます。

また、女性の婚姻開始年齢は16歳と定められており、18歳とされる男性の婚姻開始年齢と異なっていましたが、今回の改正では,女性の婚姻年齢を18歳に引き上げ、男女の婚姻開始年齢を統一することとしています。これにより、婚姻年齢を規定する民法731条は、「男は18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。」から「婚姻は、18歳にならなければ、することはできない。」に変更されます。

そこで今回は、女性の婚姻年齢の引き下げが与える影響について考えてみたいと思います。

男女の「2歳差」が設けられていた理由と背景

現行の「男性は18歳、女性は満16歳に達しなければ、結婚することができない。」という規定は、健全な家庭生活を営むには、一定の年齢的成熟が必要という理由で設けられました。男女の2歳の年齢差については、女子の方が成熟が早くて、早婚だからとされていますが、合理的理由とは考えられません。

こうした扱いの背景には、家庭の責任者として夫にはより高い成熟が必要であり、また男性は仕事につくため一定の年齢までは教育・訓練を受けるべきだから、婚姻年齢を高くするという性別役割分業があるとして、批判を受けていました。

しかし、社会的・経済的な成熟度といった観点からは、現在においては男女間に特段の違いはないと考えらます。そこで、婚姻開始年齢における男女の取扱いの差異を解消することにしたものです。その上で,高校等進学率が98パーセントを超えていることなどを勘案して、婚姻をするには、少なくとも18歳程度の社会的・経済的成熟が必要であると考え、女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げることとしたのです。

親の同意がなくても高校生で夫婦になれる

現行法の民法737条では、「未成年者の婚姻については、父母の同意を必要とする」とされています。

民法737条(未成年者の婚姻についての父母の同意)

1.未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。

2. 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。

そのため、未成年者(20歳未満)が結婚するには、「婚姻届」と一緒に、父母が結婚に同意していることが分かる「同意書」を提出するか、「婚姻届」の「その他」欄に父母が「婚姻に同意する旨」を記入し、署名押印する必要があります。

改正後の今年4月1日からは、「未成年者の婚姻についての父母の同意」を求める民法737条は「削除」されます。つまり、18歳になればお互いの合意のみで結婚できるようになります。

校則で結婚を禁止できるか

このとおり、改正民法が施行されると18歳になれば、親の承諾なく、お互いの「結婚しましょう」「そうしましょう」という合意のみで結婚できるようになります。

しかし、98%超が高校進学する現在では、18歳のほとんどは高校生でしょう。是非はともかく、「高校生で結婚は好ましくない」と考える高校もあるでしょう。では、校則で「在学中の結婚は禁止する」と「婚姻禁止」を課すことは可能でしょうか。

私が考えるに、民法で「18歳成人」と「18歳婚姻」が規定され、しかも、憲法で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」する(憲法24条1項)とされている以上、校則による結婚禁止は法的には困難と考えます。

憲法24条1項

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

「18歳成人」と女性の婚姻年齢の引き下げは、教育現場でも混乱を呼びそうです。改正まで残り4か月、教育現場でも改正民法施行に向けた十分な準備が必要になりそうです。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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