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オリンピックイヤーに「遺言」を残すとよいこれだけの理由

竹内豊行政書士
(写真:アフロ)

いよいよ明日、東京オリンピックが開幕します。そこで、オリンピックイヤーという記念の年に遺言を残すメリットをご紹介したいと思います。

遺言は残した後のケアが肝心

遺言は遺言者(遺言を残した人)が死亡した時から効力が生じます(民法985条1項)。

民法985条1項(遺言の効力の発生時期)

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

したがって、一般的に、遺言を残してから効力が発生するまで数年かかります。その間、事情が変わることがあります。思いつくまま挙げてみましょう。

人に関すること

・財産を残そうとした人と不仲になった

・配偶者(夫または妻)に財産を残すとしたが離婚してしまった

・財産を残そうとした人が自分より先に死亡してしまった

・孫が生まれたので孫にも残したい

・財産を残したい人が新たに現れた

財産に関すること

・残そうとした財産を売却等して処分した

・宝くじに当選して大金が入った

その他

・財産を寄付するとした団体(財団、社団、会社、学校、NPO等)が解散してしまった

・単に気が変わった

・遺言執行者に指定した者が認知症になってしまった

遺言の放置はトラブルの元

このようなことが起きると、残した遺言をそのままにしておくと相続トラブルの原因になったり、自分の希望が叶えられなくなってしまいます。だから、遺言を残したら、定期的な見直しが必要になるのです。

4年に一度の見直し

オリンピックは4年に一度のスポーツの祭典です。もし、オリンピックイヤーに遺言を残せば、「そういえば、前回のオリンピックの年に遺言を残したな」「前回のオリンピックには出会っていなかったあの人にも財産を残してあげたいわ」といった感じで遺言を残したことを思い出し、内容の確認や見直しにつながるきっかけになるでしょう。

遺言は実現しなければ意味がない

冒頭でご紹介したとおり、遺言の効力は遺言者が死亡したその時から生じます。したがって、内容によっては遺言作成時と死亡時の間で事情が変わってしまって、遺言に書いた内容が実現しないばかりか複雑な法律関係を生じさせてしまって相続トラブルを引き起こす元凶にもなりかねません。

遺言はその内容が実現しなければ意味がありません。そのためには定期的な見直しが必要です。遺言を残そうと思ってなかなか踏み切れない方は、オリンピックイヤーの今年に残してみてはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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