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もめないための「お墓」の「相続」ルール~来年の「春分の日」は3月21日!?

竹内豊行政書士
春分の日にお墓参りをした方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。(写真:アフロ)

今日3月20日は春分の日。春分の日は祝日法「春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。」とされています。このように、春分の日は特定されていません。

「春分日」とは、太陽が春分点を通過する瞬間を含む日、つまり、太陽が真東から上がって、真西に沈み昼と夜の長さが同じになる日を言い、現在の祝日法ではそれがそのまま「春分の日」になります。このため、春分の日は、3月20日または21日になります。ちなみに、来年は3月21日が春分の日になります。

また、春分の日をはさんで前後3日合計7日間を春彼岸になります。今年は、3月17日が「彼岸入り」、本日3月20日が「お中日」、そして3月23日が「彼岸明け」となります。そして、この期間に仏様の供養をすることで極楽浄土へ行くことができると考えられています。そのようなことで、お彼岸の期間に先祖のお墓参りに行く習慣ができたようですす。

そこで、今回は、民法で規定するお墓の引継ぎについてみてみたいと思います。

相続財産が引き継がれるルール

お墓の引き継ぎ方をご紹介する前に、相続財産はどのように引き継がれるのかみてみましょう。

民法は、被相続人(亡くなった人)の財産について、原則として相続人が承継するものと定めています(民法896条)。

民法896条(相続の一般的効力)

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

「お墓」は相続財産とは「別ルート」で承継される

このように、民法は、原則として相続人が承継するものと定めています。しかし、祭祀のための財産、たとえば、系譜(家系図など)、祭具(位牌、仏壇仏具、神棚、十字架など)、墳墓(敷地としての墓地を含む)は相続財産とせず、次のように相続財産とは「別ルート」で引き継がせるように定めています。

民法897条(祭祀に関する権利の承継)

1.系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条(筆者注:896条)の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

このように、祭祀財産は、まず、慣習に従って「祖先の祭祀を主宰すべき者」(祭祀主宰者)が承継します。ただし、被相続人の指定がある場合には指定された者が承継します。なお、指定方法は特段決められていません。生前に口頭または文書でもできます。もちろん、遺言でもできます。

そして、被相続人の指定がなく、慣習が明らかでない場合は、権利を承継すべき者を家庭裁判所が定めることになります。 以上のことをまとめると次のようになります。

第1順位~被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者

第2順位~慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者

第3順位~家庭裁判所によって定められる者

お墓が「別ルート」で引き継がれる理由

明治民法の下では、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は家督相続の特権に属す」(明治民法987条)と規定されていました。この規定は、系譜、祭具および墳墓を戸主となる家督相続人が単独で承継することを定めるものであり、戸主が長として司る家の一系をもって盾に連なる連続性を象徴する役割を果たしたとされています。

明治民法における系譜、祭具および墳墓の所有権の扱いがこのような性格を有していた以上、家制度を廃止する現行民法においてそれらの扱いをどうするかは、当然問題となりました。

そして、戦後の民法改正時の国民感情や保守派の抵抗の中で、それらをある程度配慮しつつも、家制度の廃止を達成するための妥協として、祭祀財産の相続制度との切断といった形として前述の承継順位が定められました。

お墓は「特殊」な財産~お墓の引継ぎでもめないために

このように、お墓は「特殊」な財産といえます。お墓をめぐる争いになってしまったら、ご先祖様はあの世で落ち着いて過ごせないでしょう。そうならないためにも、お墓の引継ぎがあいまいなら、タイミングを見て、親子や兄弟姉妹の間で話題にしてみるのもよいかもしれません。

また、前述のとおり、お墓の承継者を遺言で指定することができます。お墓の承継者をはっきりとさせておきたい場合は、遺言で「祭祀主宰者を長男の〇〇〇〇に指定する」といったように祭祀承継者を指定することも検討してみてはいかがでしょうか。

引用・参考『新注釈民法(19)相続』有斐閣

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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