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「選択的夫婦別姓」に「理解」7割~制度導入への議論一層活発化へ

竹内豊行政書士
夫婦別姓に「理解」が7割という調査結果が発表されました。(写真:アフロ)

早稲田大学の棚村政行教授と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は、18日、選択的夫婦別姓を巡る全国の20歳から59歳までの男女7000人を対象に行った調査結果を発表しました。

この調査によると、「自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」が34.7%、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」が35.9%となっており、そのふたつを合わせると夫婦別姓に理解を示したと考えられる人は7割(70.6%)に達したことがわかりました。

「選択的夫婦別姓制度」とは

選択的夫婦別姓制度制度とは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度です。

「夫婦同氏」の原則

現在の民法のもとでは、結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が、必ず氏を改めなければなりません。

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

なお、法律では、「姓」のことを「氏」といいます。そのため、選択的夫婦別姓制度は、「選択的夫婦別氏(べつうじ)制度」と呼ばれることもあります。

姓を改めるのはほとんど女性

現実には、男性の氏を選び、女性が氏を改める例が圧倒的多数です(前掲の調査結果によると、結婚する男女の約96%が男性の姓を選択している)。

また、同調査では、「賛成」とした女性の割合が男性よりも高い結果となりました。これは、女性の社会進出等に伴い、改氏による社会的な不便・不利益が原因の一つと考えられます。

結婚を諦めるケースも

現行法上、夫婦の氏を定めなければ婚姻届が受理されません。

民法739条(婚姻の届出)

1 婚姻は、戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

戸籍法74条

婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

一 夫婦が称する氏

二 その他法務省令で定める事項

このことは、婚姻届を役所に届け出なければ、法的に有効な婚姻が成立しないことを意味します。

氏には、単なる「個人の呼称」に止まらず、名と結合することで「自己の人格」を形成する役割もあります。そのため、結婚して姓が変わることを理由に、結婚を諦めたり事実婚を選択したりする方もいます。

このような、夫婦の氏を定めなければ婚姻届が受理されない(すなわち結婚できない)ことに対して、選択的夫婦別姓を主張する理由の一つとして、夫婦同氏の原則は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」という憲法の原則(24条1項)を制限しているという意見があります。

「旧姓」を住民票、マイナンバーカード等へ併記できる

結婚による姓の変更による不利益を改善することを目的の一つとして、住民票、マイナンバーカード等へ旧姓(その人の過去の戸籍上の氏のこと。法的には「旧氏」(きゅううじ)といいます)を併記できるようにするための「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」(平成31年4月17日公布)が、昨年令和元年11月5日に施行されました(詳しくは、「11月5日、住民票等に「旧姓」が併記できる新制度スタート!~女性の社会進出の後押しに期待」)。

この制度を利用すれば、一定の範囲内での姓を変えた者(ほとんどが女性)の職場や社会生活上の不利益を補うことができることが期待できます。しかし、前述のように姓にアイディンティティを見出す方にとっては、根本的な解決にはつながらないと考えられます。

選択的夫婦別姓制度の導入は、婚姻制度や家族の在り方にも関係する重要な問題です。政治および国民の間でも今後一層議論が活発になると予想されます。さて、あなたは賛成ですか、それとも反対ですか?

引用・参考:「選択的夫婦別姓」賛成が7割超。別姓選べず結婚を断念・事実婚選択した人の存在も浮き彫りに

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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