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「離婚」で「姓」はどうなるのか~妻の姓は?子の姓は?「親権者」と「子」の姓が違うことがある!?

竹内豊行政書士
離婚で姓はどう変わるのでしょうか。子の姓は親権者の姓に自動的になるのでしょうか。(写真:アフロ)

今夜放送される、日本テレビ系バラエティー『踊る!さんま御殿!!』(毎週火曜 後7:56)に元フジテレビアナウンサーの大島由香里さんとモデルの西山茉希さんが出演して、番組MCの明石家さんまさんと“苗字変更”の話題について大盛り上がりするそうです。

元フジテレビアナウンサーの大島由香里、モデルの西山茉希が、21日放送の日本テレビ系バラエティー『踊る!さんま御殿!!』(毎週火曜 後7:56)に出演。新婚、バツあり、独身と、それぞれ境遇の違う芸能人たちが登場し「結婚は幸せなのか」というテーマをめぐって激論を繰り広げるが、番組MCの明石家さんまと“苗字変更”の話題について大盛り上がりする。

大島が「すごく大変だったのに、まだ結婚時の苗字で郵便物が来る」と嘆くと、西山も「子どもたちの親権が私で苗字が元夫。正解がわからない」と率直な思いを吐露。さんまも「娘の自転車に書かれた苗字が変わってた。すごいショック」と振り返るなど、苗字エピソードが止まらない。

出典:西山茉希、離婚後の胸中をさんまに告白「親権が私で苗字が元夫」 大島由香里は元夫の言い訳に大激怒

そこで今回は、離婚と「氏」(法律では、苗字や姓のことを「氏」といいます)の関係と親権と子の氏について解説したいと思います。

「夫婦同氏」の原則~結婚をすると夫婦は同じ氏になる

まず、婚姻(結婚)と氏の関係をみてみましょう。

結婚をすると、夫婦は結婚の際に夫または妻の氏のどちらかを「夫婦の氏」として選択しなければなりません。これを夫婦同氏の原則といいます(民法750条)

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

このように、結婚をすると、夫婦は「同じ氏」になります。このことは、夫婦の一方は、氏を変えることを意味します。そして、現状では氏を変えるのはほとんどが妻です。

「離婚復氏」の原則~離婚をすると「旧姓」に戻る

離婚をすると、婚姻の効力が消滅します。したがって、夫婦同氏の効力も当然に失われます。その結果、婚姻によって氏を改めた者(ほとんどが妻)は、当然に「婚姻前の氏」に復します(民法767条1項)。このことを離婚復氏の原則といいます。

「婚氏続称」制度

しかし、「婚姻前の氏」に戻すと、仕事などで支障が生ずるなど社会生活に影響が出ることもあります。そこで、離婚によって婚姻前の氏に復した夫または妻は、離婚の日から3か月以内に届け出ることによって、「離婚の際に称していた氏」を称することができる制度が設けられています(民法767条2項・戸籍法77条の2)。これを婚氏続称制度といいます。

民法767条(離婚による復氏等)

1 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

戸籍法77条の2(離婚)

民法767条第2項(同法771条において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

未成年の子の「親権」と「入籍届」

離婚するときに夫婦間に未成年の子がある場合は、子の「親権者」を父母のどちらかに定めなければなりません(民法819条1項・2項)

民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)

1.父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2.裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3.子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4.父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5.第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6.子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

たとえば、夫の氏で婚姻していた夫婦が、親権者を母と定めて離婚したとします。離婚届で母は戸籍の変動がありますが、子は、たとえ母が親権者になったとしても戸籍の変動はありません。

子が母の戸籍に入籍を希望するとき

この場合、子が母の戸籍に入籍することを希望するときは、家庭裁判所の許可を得て(民法791条1項)、母の戸籍に入籍するための入籍届が必要です(戸籍法98条)

民法791条(子の氏の変更)

1.子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。

2.父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

3.子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。

4.前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。

戸籍法98条(入籍)

1.民法第791条第1項から第3項までの規定によつて父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

2.民法第791条第2項の規定によつて父母の氏を称しようとする者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。

このように、親権者になると、子が親権者にともなって自分の戸籍に移動すると思っている人がいますが、そうではありません。注意しましょう。

「氏」が変わると、同一人物であるか区別しにくくなるなど社会的に不自由が生じることがあります。また、氏が変わることでアイデンティテイの喪失を感じる方もいらっしゃいます。また、未成年の子がいる場合は、子の姓についての配慮も欠かせません。

離婚となると、財産分与の話が中心になりがちですが、結婚によって氏を変えた方(ほとんどが妻)は、離婚前の氏を離婚後も引き続き称するのか、それとも、旧姓に戻すのか、そして、未成年の子がいる場合は子の姓をどうするかも検討しておいた方がよいでしょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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