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令和元年 家族法5つのポイント~改正相続法、選択的夫婦別姓、旧姓併記、養育費算定表改定、幼児虐待

竹内豊行政書士
家族法に関する5つのキーワードで令和元年を振り返ってみます。(写真:アフロ)

今年も残りわずかとなりました。そこで、2019年に私がYahoo!ニュースに取り上げた記事の中から、家族法に関連するキーワードを5つ選んでみました。

この5つのキーワードは、ほとんどの方にとって、生活上かかわっていくものです。今年を振り返るひとつとしてご覧ください。

改正相続法スタート

約40年ぶりに大改正された相続法が、7月1日に本格的にスタートしました。この相続法改正によって、高齢化が進むことによる、配偶者に先立たれた高齢者(おもに夫に先立たれた妻を想定)に対する生活への配慮と相続をめぐる紛争防止のための遺言書の利用促進が期待されます。

改正相続法について詳しくは、令和元年 相続はこうガラッと変わった!~40年ぶりの大改正、「知りません」では済まされない。をご覧ください。

選択的夫婦別姓制度

選択的夫婦別姓制度とは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度です。現在の民法のもとでは、結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が、必ず氏を改めなければなりません(民法750条)

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

そして、現実には、男性の氏を選び、女性が氏を改める例が圧倒的多数です。しかし、女性の社会進出等に伴い、改姓による社会的な不便・不利益が生じるなどを背景に,選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見が高まっています。一方、選択的夫婦別姓制度の導入は、婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので、根強い反対意見もあるのも事実です。

夫婦別姓については、今後も国民の間で議論が高まっていくものと考えられます。選択的夫婦別姓制度について詳しくは、「選択的夫婦別姓制度」で知っておきたい法知識~明日「第2次夫婦別姓訴訟」の判決下るをご覧ください。

旧姓併記

住民票、マイナンバーカード等へ旧姓(その人の過去の戸籍上の氏のこと。法的には「旧氏」(きゅううじ)といいます)を併記できるようにするための「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」(平成31年4月17日公布)が、令和元年11月5日に施行されました。

この政令改正は、社会において旧姓を使用しながら活動する女性が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなるよう、との累次の閣議決定等を踏まえて行われたものです。

この制度によって、結婚等で姓が変わることによる不便の軽減が期待されます。この制度について詳しくは、11月5日、住民票等に「旧姓」が併記できる新制度スタート!~女性の社会進出の後押しに期待をご覧ください。

養育費算定表改定

最高裁判所の司法研修所は、離婚後に支払う子どもの養育費を決める際に、使われていた「算定表」を16年振りに改定しました。従来の算定表には、「低額過ぎる」との批判がありました。この改訂版によって、民法が掲げる「子の利益を最も優先」する養育費の支払いの実現を期待できます。養育費算定表について詳しくは、16年振り「養育費」算定表が改定~「子どもの利益」実現に期待をご覧ください。

懲戒権

山下貴司法相は5月31日の閣議後の記者会見で、親権者が子どもを戒めることを認める民法の「懲戒権」(民法822条)の削除を含めた見直しを、6月20日に法制審議会(法相の諮問機関)で諮問しました。

民法820条(監護及び教育の権利義務)

親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

民法822条(懲戒)

親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

親権者(おもに親)が子どもを虐待する悲惨な事件が絶えません。そして、子どもを虐待した親の多くは、懲戒権に基づく「しつけ」を口実に、虐待を正当化しています。

法制審議会での議論で、「しつけ」と「虐待」の明確な区分が提示されることを期待したいと思います。懲戒権削除の議論については、ストップ!児童虐待~民法の「懲戒権」削除をめぐり議論へをご覧ください。

私の2019年の記事は、これが最後です。来年も「家族法で人生を乗り切る」をテーマに、結婚、離婚、相続など、よりよく生きていく上で必要な法律をテーマに情報を発信してまいります。

では、今年も多くの方にご覧いただき、ありがとうございました。みなさま、よい年をお迎えください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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