「婚姻届」はただの「紙」なのか

「婚姻届」はただの「紙」なのか、それとも意味があるのか考えてみました。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

ZOZO創業者で現スタートトゥデイ社長の前澤友作氏(44)が5日、フジテレビ系で放送された「直撃!シンソウ坂上」で、女優・剛力彩芽(27)さんとの破局の真相や、結婚しない理由を語りました。

前澤氏は、坂上忍による独占インタビューの中で、結婚しない理由について次のように語っています。

 

「(結婚に)意味がないと思うんですよ。恋愛した瞬間に結婚同然と思って付き合うんで、付き合ってる途中にわざわざ紙(婚姻届)を交わす必要性をあんま感じない、っていうだけですよ」

出典:「前澤氏 結婚しない理由は未婚の母との間に子供「そっちに示しがつかない」

このように、前澤氏は、「」(=「婚姻届」)を役所に届け出ることに対して「必要性をあんま感じない」とおっしゃっています。

今回は、前澤氏が必要性を感じない「婚姻届」について考えてみたいと思います。

届出なければ結婚なし

結婚するには、戸籍法で定める婚姻届を役所に提出しなければなりません(民法739条1項)。このように、民法は「届出なければ結婚なし」という届出婚主義を採用しています。

したがって、婚姻(法律では、「結婚」のことを「婚姻」といいます)の届出がなければ、いくら事実上の夫婦生活が続いていても、法的な婚姻にはなりません。

届出は、当事者双方および成年の証人2人以上から、口頭または署名した書面でしなければなりません(民法739条2項)。

民法739条(婚姻の届出)

1.婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2.前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

婚姻の効果~婚姻届を出すと発生する権利・義務

そして、大好きなパートナーと結婚、すなわち婚姻届を届け出ると、法律上、次のような権利と義務が生じます。

夫婦同氏(民法750条)

夫婦は、結婚の際に夫または妻の氏(法律では「姓」や「苗字」を「氏」と呼びます。)のどちらかを夫婦の氏として選択しなければなりません。

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

同居協力扶助義務(民法752条)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなくてはいけません。

民法752(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

貞操義務

夫婦は貞操義務を負います(つまり、不倫はダメということ)。

実は、民法には、「婚姻をして、配偶者がいる者は不倫をしてはならない。」といった、不倫を直接禁止する条文はありません。

しかし、次の3つの条文から、「夫婦は互いに貞操義務(配偶者がいる者が、配偶者以外の者と性的結合をしてはいけないこと)を負う」という不倫禁止が導き出されます。

1.重婚が禁止されている(民法732条)

民法732条(重婚の禁止)

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

ここでいう「婚姻」とは、戸籍に表れる関係のことです。法律上の配偶者がいる者が、別の異性と事実上の夫婦生活を営んでも、重婚にはなりません。

2.「同居」「協力」「扶助」の3つの義務が規定されている(民法752条)

3.不貞行為が離婚原因になる(民法770条1項1号)

民法770条1項1号(裁判上の離婚)

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一、配偶者に不貞な行為があったとき。

不貞行為とは、貞操義務に反する行為です。つまり、夫または妻以外の人と性的関係を持つ行為です。不貞行為が離婚の原因になるのは、道徳上当然の効果といえます。

ちなみに、民法770条は、離婚の原因として、「配偶者の不貞な行為」の他に、次の場合を挙げています。

二、配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三、配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

四、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

以上民法770条1項2号~5号

以上3つの条文に加えて、一夫一婦制という結婚の本質からしても、夫婦はお互いに貞操義務を負うとされています。

夫婦間の契約取消権(民法754条)

夫婦は結婚期間中に締結した夫婦間の契約を、結婚期間中はいつでも、何の理由もなしに一方的に取消すことができます(ただし、第三者の権利を害することはできません)。

民法754条(夫婦間の契約の取消権)

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

その他にも、

・姻族関係の発生(民法725・728条)

・子が嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子、つまり夫の子)となる(民法772・789条)

・配偶者の相続権が認められる(民法890条)

などがあります。

このように、法律上では、「紙」(婚姻届)を出す・出さないでは、大きな違いが生じます

また、外見上、結婚生活を送っていても、あえて婚姻届を届け出ない「事実婚」や「内縁」を選択している方もいらっしゃいます。事実婚と内縁についても見てみましょう。

「事実婚」とは

さて、1980年代後半から、自分たちの主体的な意思で婚姻届を出さない共同生活を選択するカップルが社会的に広がり始めました。代表的な理由は次のようなものがあります。

・夫婦別姓の実践

・家意識や嫁扱いへの抵抗

・戸籍を通じて家族関係を把握・管理されることへの疑問

・婚姻制度の中にある男女差別や婚外子差別への反対  など

このような理由で婚姻届を出さないのは当事者が主体的に選択した関係です。そのため、これまでの内縁とは事情が異なるので、「事実婚」と表現します。

「内縁」とは

内縁とは、事実上の夫婦共同生活をしていても、婚姻の届出をしていないために、法律上の夫婦と認められない関係をいいます。この点では、「事実婚」と違いは認められません。

「事実婚」と「内縁」の違い

一般社会において夫婦として生活している当事者が、主体的に婚姻届を出さないことを選択したかそうではないかで事実婚と内縁を区別することがでます。つまり、主体的に婚姻届を出さないことを選択した場合が事実婚、そうでない場合が内縁といえます。

「事実婚」が増える背景と今後の課題

事実婚が増えている背景はいくつか考えられますが、女性の社会進出と経済的自立が大きく影響していると思います。

ただし、事実婚では、婚姻届を届出ているカップルと比べて様々な法的保護を享受できないことも事実です。

近代的な法制度では、家族の基礎となる婚姻を法の規制と保護の対象とし、婚姻外の関係については、法的規制もしない代わりに法的保護もしないという立場をとるのです。

今後は、社会的要請として、「ライフスタイルの自己決定権」を基に、事実婚を選択したカップルへの法的保護が推進されることが望まれます。

憲法が定める結婚観

憲法は24条で次のように結婚(婚姻)について定めています。

憲法24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)

婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

したがって、お付き合いしている同士が、「お互いを認め合い、尊重し、協力し合って生きていく」という意思があれば、必ずしも婚姻届を届けなければならない、すなわち、法的婚姻にとらわれることはないともいえます。ただし、お互いが納得しているということが前提となります。

さて、あなたは、婚姻届をただの「紙」だと思いますか?それとも必要性を感じますか?