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親子になるとは~子どもの日に親子関係を考えてみる

竹内豊行政書士
親子になるとはどういうことなのか。子どもの日に親子関係を考えみましょう。(写真:アフロ)

法律上の親子関係の成立

まず、親子関係はどのようにして成立するのか見てみましょう。法律上の親子関係が成立するのは母子関係と父子関係では次のように違います。

母子関係の成立

民法には、法律上の母子関係に関しては、婚外子につき「認知することができる」という規定しかありません(民法779条)

民法779条(認知)

嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

現在の判例・戸籍実務では、妻が婚姻中に懐胎(=妊娠)した子および妻が婚姻後に出産した子を「嫡出子」(ちゃくしゅつし)とし、そうでない子は「嫡出でない子」としています。しかし、「嫡出」という用語には「正妻から生まれること」(新明解国語辞典)といったように「正統」という意味が込められているため、使用すべきでないという批判があります。

母子関係は出産の事実で発生する

しかし、判例は、嫡出でない子について「母子の関係は分娩(=出産)の事実によって当然に発生する」とされました(最高裁判決昭和37[1962]年)。この「分娩者=母」というルール(「分娩主義」)は、嫡出子にも該当するとされています。

父子の関係の発生

一方、父子の関係は、妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定されます(民法772条1項)。

民法772条1項(嫡出の推定)

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

この規定は、「母が婚姻中に妊娠した子の法律上の父は、母の夫と推定する」という父子関係の推定規定です。

しかし、実際のところ妻が婚姻中に妊娠したことを証明するのは簡単ではありません。そこで民法は、婚姻成立の日から200日を経過した後、婚姻解消の日から300日以内に出生した子は、婚姻中に妊娠したものと推定するとしています(民法772条2項)。この「200日」「300日」という数字は、医学的統計に基づくものです。そのため、未熟児・過熟児のような推定が働かない場合は、個別に婚姻中に妊娠したことを証明しなければなりません。

親子間の権利義務

法律上の親子関係が成立すると、法的な親子関係が成立します。それにより、現実に子の身の回りの世話をする監護教育と、子の財産を管理したり、子に代わって法律行為をする親権や子の経済的な援助をする扶養など法的な権利義務が親子間に発生します。

以下、親権者の権利・義務について見てみましょう。

親権者の権利・義務

未成年の子は親権に服します(民法818条1項)。具体的には次のようなものがあります。

監護教育権

親権者は、子の利益のために子の監護および教育の権利を有し、義務を負います(民法820条)。

職業許可権

子は、親権者の許可を得なければ、職業を営むことができません(民法823条)。

財産管理権

親権者は子の財産を管理します(民法824条)。この管理行為の対象となる財産は、未成年の子に属する一切の財産となります。

注意義務

親権者は、財産管理権を行使する際には、自己のためにするのと同一の注意義務を負います(民法827条)。

(以上参考『家族法・第5版』(新世社・二宮周平著))

このように、親子関係が成立すると法律上親子間に権利・義務が生じます。この権利・義務は子どもの健やかな成長を守ることを基盤としています。私自身、子を持つ親の一人として、子どもの日の今日、改めて肝に銘じたいと思います。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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