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「成人の日」はなぜ1月15日でなくなったのか~対象者は20歳とは限らない。「真夏の成人式」になるかも

竹内豊行政書士
数年後の成人式の晴れ着は、「着物」から「水着」に代わっているかもしれません。(ペイレスイメージズ/アフロ)

お正月休み明けで、12・13・14日の三連休を心の支えにして頑張っている方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

ところで14日はなぜ休日かといえば「成人の日」だからです。しかし、成人の日は「1月15日」と連想する方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、私もその内の一人です。

そこで今回は、「成人の日」と「成人式」について考えてみます。

成人の日の変遷

成人の日は1月15日から「1月の第2月曜日」へ次のような経緯で変更されました。

最初は1月15日

国民の祝日は、「国民の祝日に関する法律」(祝日法)に定められています。この法律は、1948年(昭和23年)7月20日に公布されて即日施行されました。

このとき、成人の日は「1月15日」と定められました。その理由は、この日が小正月であり、かつて元服の儀(奈良時代以降、男子が成人になったことを示す儀式)が小正月に行われていたことによるといわれています。

「1月の第2月曜日」へ

このように、祝日法はもともと1月15日を成人の日と定めていました。しかし、以下の法改正によって平成12年(2000年)から現在の「1月の第2月曜日」に変更されました。

国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(法律第141号・平成10年10月21日)

国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)の一部を次のように改正する。

第2条

成人の日の項中「1月15日」を「1月の第2月曜日」に改め、同条体育の日の項中「10月10日」を「10月の第2月曜日」に改める。

附 則 この法律は、平成12年1月1日から施行する。

ハッピーマンデー制度

成人の日を1月15日から1月の第2曜日に変更した背景に、ハッピーマンデー制度があります。

この制度の目的は、観光業や運輸業などを活性化することです。そのために、祝日と週休2日制をつなげ、3連休以上の期間を増やして、国民の祝日の一部を従来の日付から特定の月曜日に移動させて連休の日数を増やしたのです。

このハッピーマンデー制度によって、成人の日の他にも次の祝日の日付が特定の月曜日に変更されました。

1. 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成10年法律第141号)による変更

・成人の日 1月15日→1月第2月曜日

・体育の日 10月10日→10月第2月曜日

2. 国民の祝日に関する法律及び老人福祉法の一部を改正する法律(平成13年法律第59号)による変更

・海の日  7月20日→7月第3月曜日

・敬老の日 9月15日→9月第3月曜日

成人の日とは

さて、そもそも「成人の日」とはどのような日でしょうか。

祝日法は、「国民の祝日を次のように定める」として成人の日を次のように定義しています。

2条(内容)

成人の日 1月の第2月曜日

おとなになつたことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。

なお、同法は、「国民の祝日」を次のように規定し、「国民の祝日」は、休日とするとしています(同法3条1項)。

第1条

自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

以上から、成人の日は、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を国民こぞって祝いはげます日」ということになります。

対象年齢は法律で決められていない

祝日法は、成人の日の対象者を「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年」としています。

青年とは、「人を年齢によって分けた区分の一つ。普通、20歳ごろから30歳代前半までの人を指す」(引用「新明解国語辞典」)と定義されています。

このように、法律は成人の日の対象者の年齢を明確に定めていません。つまり、「20歳」とは限らないということです。

「20歳=成人の日の対象者」と考えられているのは、民法で「年齢20歳をもって、成年とする。」(4条)と規定しているのと全国の自治体が主催する成人式が「20歳」を対象としている影響と思われます。

成人式がガラッと変わる!?~「18歳成人」が成人式に与える影響

民法改正によって成人式の姿が大きく変わるかもしれません。

「成人式」の実施時期は法律で定められていない

実は、成人の日の対象者と同様に、成人式の実施時期も法律で規定されていません。

実際は、成人式の日程は、市町村ごとに地域の実情に応じて決められています。

ほとんどの自治体は成人の日に合わせて1月に開催していますが、東北などを中心に8月に開催する自治体もあります。

成人年齢が18歳に引下げられる

成人年齢を18歳に引き下げる民法改正案が昨年6月13日の参院本会議で与党など賛成多数で可決され、成立しました。このことによって、民法の定める「成年」は次のように変わります。

現行

第4条  年齢20歳をもって、成年とする。

改正後(2022年4月1日以降)

第4条  年齢18歳をもって、成年とする。

1月開催は困難になる

改正民法の施行後に、1月に成人式を開催するとなると、大学受験を控えた18歳の高校3年生や19歳の浪人生は参加を見合わせたり、参加できないこともありえます。

当事者が参加困難となると、開催月の変更を検討しなければならないかもしれません。

なお、「18歳成人」の改正民法は、2022年4月に施行されます。つまり、2022年4月以降に18歳になれば成人となります。

したがって、翌23年の成人式は、18~20歳がまとめて参加することになります。

当然、対象者が例年より増えるので会場確保など運営の困難が予想されます。

「18歳成人」については、「18歳成人」法案が成立!何が変わり、変わらないのか

「18歳成人」法案が成立~どうなる「成人式」!?

「18歳成人」一期生「現中学2年生」に起きること

をご参照ください。

「真夏の成人式」もありえる

では、夏休みの8月に開催するのはどうでしょうか。そうすれば、参加できる人は増えそうです。

しかし、成人式といえば晴れ着。晴れ着を真夏に着ると当然暑い・・・。

真夏の成人式となると着物業界にとっては相当なダメージが予想されます。

着物業界としては新たな晴れ着の提案が必要になるかもしれません。

このように、ハッピーマンデー制度によって元服の儀を起源とする1月15日であった成人の日が、1月の第2月曜日に変更されました。

実は、この制度に対しては、「本来の祝日が定められた意味を失わせる」といった反対意見もあり、制度廃止を訴える動きも根強く存在しています。

加えて、民法改正によって、現在ほとんどの自治体が行っている「1月の成人式」は変更を余儀なくされるかもしれません。

ひょっとしたら、数年後には「成人の日」と「成人式」はガラッと姿を変えているかもしれません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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