Yahoo!ニュース

相続がガラッと変わる!2019 vol.4~正月明けに遺言書が作成しやすくなる

竹内豊行政書士
お正月明けの2019年1月13日から遺言書の方式が緩和されます。(写真:アフロ)

円満な相続を実現するには、「遺言」を残すことが有効です。しかし、自筆証書遺言を法的に成立させるためには「全文を自書」させる必要がありました(民法968条1項)。

968条(自筆証書遺言)

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

しかし、全てを自分で書くことは意外とハードルが高いものです。特に、高齢者や療養・闘病中の方には負担を強います。そこで、「遺言書の一部を自書を要しない」ことに改正しました。

また、次のようなことが原因でせっかく残した遺言書が遺言者(遺言書を残した人)の死後に執行(実現)されずに遺産分けが行われてしまうことがままありました。

・遺言者が自筆証書遺言を紛失してしまった

・遺言者の死後に発見されない

・遺言者の死後に遺言書を発見した人が破棄したり、隠してしまう

そこで、遺言書の保管制度を創設しました。

では、詳しく見てみましょう。

自筆証書遺言の方式緩和(施行期日:2019年1月13日)

自筆証書遺言は、添付する財産目録も含め、全文を自書して作成する必要がありました(つまり、自分で全て書かなければならない)。

その負担を軽減するために、全文を自書する要件を緩和して、自筆証書遺言に添付する「財産目録」については自書を要しないとしました。これにより、パソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付するなどして遺言書が作成しやすくなります。

なお、この場合においては、財産目録の各頁に署名押印をしなければならないので、偽造も防止できます。

改正後の自筆証書遺言の見本は、法務省ホームページをご覧ください。

保管制度の創設(施行期日:2020年7月10日)

さらに、法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)により、公的機関である法務局で遺言書を保管する制度を設けました。

これにより、遺言書の紛失・隠匿や真贋を巡る争い等を防止され、高い確率で遺言者の最終意思が実現されるようになります。また、相続人等は遺言者の死亡後に法務局に対し遺言書の有無の照会及び遺言書の写し等の請求をすることが可能になります。なお、保管された遺言書の検認(注)は不要となります。

(注)検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にすることで遺言書の偽造・変造を防止するための手続。このように検認は証拠保全の手続であって遺言の有効・無効を判断する手続ではない。

また遺言書の閲覧や写しの取得のために法務局に来た相続人に対して、直接相続登記を促すといった取組も可能となるなど、相続登記などの手続が円滑に行われ、その結果、所有者不明による空き家の増加の阻止等が期待できます。

保管制度の流れについては、法務省ホームページをご覧ください。

遺言の目的は最終意思を実現すること

自筆証書遺言の方式緩和によって、「遺言を作成してみよう!」という人が増えることが期待されます。ただし、「作成しやすくなった」ことと「内容が実現されること」は別です。

内容が確実に実現されるためには、「内容の工夫」が必要です。たとえば次のようなことが考えられます。

遺言の内容を確実に実現するための工夫

・予備的遺言を設ける

財産を残そうとする者が、自分より先に死亡してしまった場合、その者に代わる者を「予備」としてあらかじめ記しておく。

・遺言執行者を複数指名する

遺言の内容を実現するには遺言執行者が重要な役割を果たします。遺言に記した遺言執行者が相続開始時(遺言者が死亡した時)に、既に死亡していたり健康や仕事上等の都合で「遺言執行ができない状態」に陥っているとも限りません。そのため、複数の遺言執行者を指定しておくことも必要でしょう。

・実印で押印する

遺言書に押印する印は規定されていません。認印でも構いません。しかし、「本人が強い意思で作成した」ことを表明するために、実印で押印しましょう。

遺言書の目的は「作成すること」ではなく「最終意思を実現すること」です。そして、その時には遺言者はこの世にいません。遺言を作成する時は、このことを肝に銘じておいてください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

竹内豊の最近の記事