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「不倫」で叩かれる3つの理由

竹内豊行政書士
不倫は貞操義務に反します。不倫の代償は信頼失墜、仕事への影響など高くつきます。(写真:アフロ)

昨日の岩崎恭子さんの不倫疑惑の報道もそうでしたが不倫、すなわち不貞行為を行うとふつう世間から非難を受けます。

極めてプライベートな問題にもかかわらず、仕事への影響など社会的制裁が伴うこともあります。

今回は、不貞行為をするとなぜ非難されるのかを民法の視点から解説します。

結婚すると義務が発生する

男女が結婚すると、その間には一定の義務が発生します。言い方を変えると、相互に一定の義務を負うことを「約束」するのが結婚であるとも言えます。日本法において、夫婦の義務を定める規定の中心をなすのは、次の民法752条です。

752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

そこには同居・協力・扶助義務が定められています。

同居義務

同居義務は、結婚の成立、つまり役所に婚姻届を届出た時から発生し、結婚の解消まで存続します。この同居とは、夫婦としての同居であって、単なる場所的な意味ではありません。同じ屋根の下でも、たとえば障壁を設けて生活を別にするのは同居ではありません。

協力義務

その内容も程度も各当事者によって当然異なります。夫婦それぞれの職業、資産、社会的地位、その他一切の事情に応じて、夫婦の間で決めるしかないというのが実際のところです。

扶助義務

扶助とは相互的な経済援助を意味します。夫婦は同居して共同生活をするため、パートナーが要扶養状態に陥った場合には、パートナーの生活を自分の生活水準と同じように保持(キープ)する義務があります。このことを「生活保持義務」と言います。

不貞行為は義務違反

しかし、貞操義務は欠落しています。貞操とは、配偶者以外の者との間に性関係を持たないこと、貞操義務とはこのような不作為義務(当然することが期待される行為をしない義務)を指します。不貞行為とはこの義務に違反した行為、すなわち約束に反して婚外の性関係を持つことを言います。

不貞は離婚原因になる

もっとも、現行法が貞操義務を無視しているわけではありません。第一に不貞は離婚原因の筆頭に掲げられています(民法770条1項1号)。不貞が離婚原因になるというのは、それが義務違反にあたるからにほかなりません。

770条(裁判上の離婚)

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

貞操義務は同居義務に含まれている

第二に、貞操義務は同居義務に含まれていると考えることもできます。男女が同居するというのは、物理的に住居を同じくすることを越えて、「性関係がある」ことが意味されていますが、そのような関係にある以上、第三者との性関係を持たない義務を負っていると見ることもできます。

不倫が叩かれる3つの理由

以上から、不倫をすると世間から叩かれる理由は次の3つが挙げられます。

その1.結婚をすると貞操義務が発生する

その2.不貞行為は貞操義務違反になる

~配偶者(夫または妻)以外の者と性的関係を持たないという「約束」を破ったことになります。約束を守らないと世間から非難を浴びてしまうのは致し方ないことでしょう。    

その3.貞操は道徳観念に結び付きやすい

~そのため多くの場合、社会的制裁が伴います。このことは、貞操は夫婦双方がお互いに負う義務であり、不貞が離婚原因になるというのは、世界に広く見られることからも明らかです。    

約束の「約」も「束」も、「ちかう」、「ちぎる」という意味があります(参考:新明解国語辞典)。結婚したら義務を負う。その中には、当然貞操も含まれることを肝に銘じておきましょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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