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結婚について知っておきたい法知識~その6「結納」

竹内豊行政書士
一般的に、婚約がととのうと、めでたく結婚が成立することを願って結納が交わされます(ペイレスイメージズ/アフロ)

一般的に、婚約がととのうと、めでたく結婚が成立することを願って結納が交わされます。

結納とは、男性の側の親から女性の側の親に金銭などを贈与する慣行ですが、その由来ははっきりしていないようです。最近は簡略化する傾向がありますが、地域によっては今でも結納の儀式が大掛かりになるようです。

今回は、結納を法的側面から考えてみます。

●結納の成立

判例では、「結納は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家の情宜を厚くする目的で授与される一種の贈与である」(最高裁判所昭和39年[1964]9月4日判決)としています。

「情宜」(じょうぎ)とは、聞きなれない言葉ですが、「いつも誠意をもって知人・師弟などとつきあおうとする気持」(引用:新明解国語辞典)です。

この判例から、結納は、次の二つの目的があると考えられます。

1.婚約(将来結婚しようという約束)の成立を確かなものとする

2.結婚成立後に当事者と両家が誠意をもって付き合うために行うための贈与

●もし、結婚が成立しなかったら

婚約は、「将来結婚しよう」という約束です。したがって、何らかの事情でその約束が果たされないことも残念ながらあります。

結婚が成立しなかった場合には、先に挙げた目的が達成できなかったことになります。したがって、不当利得として授与者は相手方にその返還を求めることができます。

ちなみに、先ほど挙げた判例は、結婚式を挙げて婚姻届も済ませ、約8か月間夫婦として同居したが不和のため協議離婚した夫婦間で、元夫が結納金の返還を元妻に求めた事例です。

最高裁は、挙式後8か月余りも夫婦として共同生活を続けて婚姻届も済ませたような場合、結納授受の目的は達成されている。したがって、「(元妻は)結納の返還の義務はない」と判示しました。

なお、婚約解消について責任のある者は、信義則上、結納金の返還を請求することはできません。たとえば、結納を交わした後に、結納金を渡した男性が浮気をしたことが原因で婚約解消に至った場合などです。当然のことでしょう。

「信義則」とは、相互に相手方の信頼を裏切らないように誠実に行動することを指します。この信義則を欠くときは一般的に権利の濫用とみなされます。

さて、結納の段階までくるとお互いの親も「当事者」として参加してきます。つまり、結納をしようと決めたときから二人だけの世界から「両家」を含めた世界にガラッと変わります。

結納をするために、日取り、場所、結納の品やお金などを決めなくてはなりません。そうなると、二人や家同士の価値観の相違が出てくることがよくあります。時には、「結婚なんてもういいや!」と投げ出したくなったり、二人や両家の意見が衝突することもあるでしょう。

婚約と同様に結納も結婚に至る試練かもしれません。二人や両家の意見が分かれたときこそ、二人の愛が試されるときです。

そんなときは、まず相手の意見に耳を傾けましょう。その上で、自分の考えを伝えれば、きっと解決策が見つかるはずです。

結納は「二人の愛の試金石」と言えます。どうか二人で力を合わせて幸せをつかみ取ってください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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