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ウィシュマさんの手紙を基にした朗読劇、名古屋各地で同時上演へ

関口威人ジャーナリスト
朗読劇でウィシュマさん役を演じる劇団名古屋のメンバー(2月28日、筆者撮影)

 名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で収容中に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん=当時33歳=の手紙を基にした朗読劇が3月4日と5日、名古屋市内各地で同時上演される。2020年12月に始まった支援者との交流から、衰弱して翌年3月に亡くなるまでのウィシュマさんの心情が役者によって表現される。

 「NAGOYA同時発信ウィシュマ」と銘打つこの企画は創立66年の「劇団名古屋」代表・谷川伸彦さんが呼び掛け、市内の7団体が応じた。

 ウィシュマさんは収容中に支援者の一人で津島市のシンガーソングライター・眞野明美さんと約1カ月半の間に13通の手紙をやり取りしていた。ウィシュマさんの死後に眞野さんが遺族の許可を得て、『ウィシュマさんを知っていますか?』(風媒社)という本にまとめた。

名古屋市内の稽古場で練習に励む劇団名古屋の団員たち(2月28日、筆者撮影)
名古屋市内の稽古場で練習に励む劇団名古屋の団員たち(2月28日、筆者撮影)

 谷川さんは本を読み、眞野さんから直接話を聞いたり入管に足を運んだりして、自分なりに何ができるかを考えた。ウィシュマさんの遺族による国を相手にした訴訟も始まったため、芝居よりも制作に時間のかからない朗読劇で伝えることを決めた。

 3月6日の2年目の命日を前に、多くの場所で上演すればより多くの人に知ってもらえると考え、他の劇団や日本語教室などにも呼び掛けた。

 谷川さんが構成した台本を各団体がアレンジし、講演やミニコンサートを組み合わせる舞台もあるという。

 劇団名古屋は5日の午前11時と午後2時、稽古場でもある名古屋市熱田区の「アトリエ★758」で公演する。私も2月28日の稽古を取材したので、下の動画から雰囲気を感じ取ってもらいたい。

 谷川さんは「言葉に出してみるとウィシュマさんの言葉の力をすごく感じる。眞野さんと会って生まれた希望や、やりたいことがあるという語り掛けがすごく胸を打つが、そういう夢や希望さえも踏みつけにする入管のあり方は許せない」と話していた。

 公演する各団体名とリンク先は以下。

劇団名古屋(4日16時半からの「おはなしトランク」公演も同稽古場で)

日本語ボランティア教室JLVN

人業劇団ひらき座

劇団名芸

労働者劇団つぶれそう一座

朗読の会 ことの葉

 命日の6日には名古屋市内と津島市内で「しのぶ会」も予定している。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。2022年まで環境専門紙の編集長を10年間務めた。現在は一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」代表理事、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集委員、NPO法人「震災リゲイン」理事など。

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