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山本太郎議員も注視する鮫川村の爆発事故現場とは

関口威人ジャーナリスト
爆発事故で稼働停止中の鮫川村の仮設焼却施設(9月27日、関口威人撮影)

福島県鮫川村の焼却施設爆発事故について、山本太郎参院議員が国からの説明資料や議員レク時の映像を公開している。

山本太郎資料ファイル:福島県鮫川村放射性廃棄物仮設焼却施設爆発事故について

この鮫川の施設は「電離則(電離放射線障害防止規則)」の対象施設で、法律を所管する厚労省の担当者は守秘義務を理由に「事故があったかなかったかも含めて回答できない」と言っているという。

「鮫川事故は『国家秘密』なのか」

と山本議員は問題提起する。もちろん、そんなことはあり得ないし、あっていいはずはない。私は9月27日、環境省の許可を得て施設内部に立ち入り、現状を記録してきた。まずはここがどんな施設なのかを、現場の写真と照らし合わせて見てみよう。

事故時は3000ベクレルの稲わらなどを処理

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施設は鮫川村南部の山間部にある。普段は人も車もほとんど通らず、夜間は真っ暗。しかし地元の反対を押し切った施設の建設、稼働、その10日後の事故発生などですっかり落ち着かない環境になってしまった。この日も私と入れ替わりで消防が入り、実況見分を続けていた。

入り口からまず目に飛び込んでくるのはクリーム色のテントのような建物だ。「貯留ヤード」と呼ばれるこの建屋には焼却処理される廃棄物がまず運び込まれ、放射性物質濃度が1万ベクレル/キログラム以下のものは破砕、混合などの前処理がされる。1万ベクレルを超えるものはまた別処理。環境省の資料によるとその管理が「電離則」の対象となる。

では事故時は1万ベクレル以上の廃棄物を扱っていたのだろうか。

運転データでは当日、焼却処理した稲わらや牧草などの平均セシウム濃度は2561ベクレル/キロ。本格稼働から間もないこともあったのだろう。連日搬入されていたのはまだ3000ベクレル前後の廃棄物ばかりだった。

施設内では、焼却灰を固化するセメント固形化室も電離則の規制エリアだという。しかしここでも1万ベクレル超の処理物をすでに扱っていたとは考えにくい。そもそも電離則は作業の従事者が受ける放射線量を最小限度に抑えるための法令。これを根拠に今回の事故情報を伏せようとするのは、まったく理屈が通らない。

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いずれにせよ、貯留ヤードには事故当日に処理する予定だった残りの廃棄物が積まれたままになっていた。

前処理が終わった廃棄物は、貯留ヤード裏手のコンベヤーを通って焼却炉に送られる。これは今回の事故で破損したのとは別のコンベヤーで、こちらの方が頑丈に見える。

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特殊な炉からつながるコンベヤーで爆発

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写真の右下手から斜め上に向かってコンベヤーがせり上がり、正面の焼却炉に処理物が投入される。焼却炉は実況見分などのため、下半分がブルーシートでぐるりと覆われていた。

もともとこの炉は「傾斜回転床炉」という特殊な構造。図面で分かる通り、焼却灰がたまる炉の下部がカクっと傾けられている。今回、その傾いた炉から主灰を排出する仕切り弁「ゲート」を、運転マニュアルに反して開きっ放しにしたことが事故の主要因であったと報告されている。

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その「ゲート」周りの写真が以下である。

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中央上から手前に突き出ている正方形の部品を含む装置がゲートで、空気圧によって弁が水平に開け閉めされる。そこから垂直に下がる円筒形のパイプから主灰が落ち、真下のコンベヤーによって手前から奥の方へ運ばれる。撮影時は実況見分のため、コンベヤーの囲い(ケース)が外されて、右下のスペースに寄せられている状態だった。

今回、主な爆発はこの奥で起こった。

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やや分かりにくいが、上の写真の左側の、ブルーシートがかかった部分が爆発で破損したコンベヤー。手前にシートのかかっていないコンベヤーがあるが、これはガス急冷塔やバグフィルターを通った飛灰が送られるコンベヤーだ。どちらも灰やガスは下から上に引き込まれ、左端の建屋でセメント固化処理される。

右の写真は、破損したコンベヤーを横から(左側の写真下の白い矢印の方向に)見たところ。部分的にブルーシートを開けてもらい、望遠レンズで撮影。銀色のケースが外され、中のコンベヤーの車輪などが茶色く見えている。

このコンベヤーに不完全燃焼で発生した可燃性ガスがたまり、主灰の一部が火種となって爆発、ケースの溶接部分が長さ3メートルに渡って裂けたほか金具や軸受けなども破損、変形した。

下は事故翌日の8月30日に現場に入ったフリーライター、畠山理仁さんによる写真だ。私とはちょうど反対側から撮影したらしい(赤い矢印は私が補足)。

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事故によって灰の飛散はほとんどなく、放射線量にも大きな変化はなかったという。この日、私が持ち込んだ線量計でも空間線量は毎時0.07マイクロシーベルト程度だった。

環境省は9月25日、最終的な事故原因調査結果再発防止対策案などを示した。しかし、私自身は現場取材を踏まえた上で、調査結果や再発防止策に対してなお疑問や不信が募る。

その問題点などは別稿で検証したい。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。2022年まで環境専門紙の編集長を10年間務めた。現在は一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」代表理事、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集委員、NPO法人「震災リゲイン」理事など。

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