消費増税延期はこれでなくなった

今夏の参議院選挙が迫る中、10月の消費増税は予定通り行うのか(写真:松尾/アフロ)

今年10月の消費税率引上げは、確実になった。その根拠は、自民党の選挙公約と「骨太方針2019」である。

6月7日に、自民党は今年の参議院選挙向けの選挙公約を事実上決定した。そして、「令和元年政策パンフレット」と「令和元年政策BANK」を公表した。

両文書は、正式な「政権公約」ではないものの、両文書を合本して同じ文言で正式な「政権公約」とするのが、自民党の慣例である。

その中で、「2019年10月に消費税率を10%に引き上げます。」と明記した。

また、6月21日に閣議決定する予定である「骨太方針2019」(経済財政運営と改革の基本方針2019)では、各種報道によると、2019年10月には「社会保障の充実と財政健全化にも資するよう、消費税率の8%から10%への引上げを予定している。」と原案に明記されている。加えて、消費増税対策に万全を期す旨が盛り込まれている。

自民党が参議院選挙で有権者向けに掲げる公約でも、閣議決定する「骨太方針」原案でも、「リーマンショック級の出来事」とかの枕詞もなく、消費税率を10%に予定通り引き上げることを明記した。これらが決まれば、容易に覆すことはできないから、政治的には消費増税の延期はなくなったといってよい。

では、なぜそれらから、消費増税延期はなくなったといえるのか。

それは、2度目の消費増税延期を決めた2016月6月の経緯を振り返ればわかる。

まず、2016月5月18日に開催された経済財政諮問会議で、当初5月末に閣議決定する予定だった「骨太方針2016」の原案に、2017年4月の消費増税の文言を盛り込まないことがわかった。つまり、閣議決定する「骨太方針2016」で2017年4月の消費増税についてコミットしない立場を鮮明にした。

そして、2016年5月26~27日にG7伊勢志摩サミットを安倍晋三首相が議長となって開催した。その時、「骨太方針2016」はまだ閣議決定していなかった。6月1日に通常国会が閉会した直後、安倍首相が記者会見して、「新しい判断」に基づき消費増税の再延期を表明した。

6月2日に閣議決定された「骨太方針2016」には、「消費税率の10%への引上げを2019年10月まで2年半延期する」と明記された。

さらに、6月3日に、7月に控えた参議院選挙向けの自民党の「参議院選挙公約2016」を公表した。その中でも、「消費税率10%への引上げは延期し、2019年10月に実施します」と記された。

こうしてみれば、消費増税延期の判断は、選挙公約や「骨太方針」と完全に連動している。通常国会閉会時の首相記者会見で消費増税再延期の判断を示したのが6月1日、「骨太方針」閣議決定が6月2日、自民党の選挙公約決定が6月3日。その順番である。

他方、今年の選挙公約決定(6月7日)や「骨太方針」の閣議決定(6月21日予定)は、10月の消費増税実施を織り込んだものとなっていて、首相の記者会見があるかもしれない通常国会閉会日(6月26日予定)の前となっている。ここまでくれば、もはや容易に覆せないだろう。

そもそも、「消費増税撤回を問うて、衆参ダブル選挙!?」でも詳述しているように、消費税制に従い、6か月前の4月1日を過ぎたので、10月1日以降に商品の授受が行われる契約は、10%の税率を前提に契約を結ばなければならない。10%の税率でマンション購入の契約を結び、住宅ローンを組み、前金も支払ったりしている人がいる。なのに、いまさら10月1日に10%にせず延期するということは、実務的にみても困難である。1度目も2度目も、増税延期表明をしたのは、新税率適用開始予定日の6か月以上前のことだったのだから。

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』日本評論社、『日本の財政をどう立て直すか』日本経済新聞出版社、『入門公共経済学』日本評論社。行政改革推進会議議員、政府税制調査会委員、社会保障制度改革推進会議委員、財政制度等審議会臨時委員、産業構造審議会臨時委員、中央環境審議会臨時委員も兼務。

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