【政策会議日記12】地方法人課税はどこが問題か(税制調査会)

4月24日に、私も一委員として出席した政府税制調査会法人課税ディスカッショングループ(DG)第4回会合が開催されました。今回は、地方法人課税が議題となりました。本コラムでは拙稿【政策会議日記8】法人減税論議の焦点は(税制調査会)でも、議論の経過を紹介しています。

目下の法人実効税率引下げ論議における最大の焦点は、国の法人税というより、地方の法人課税です。なぜなら、法人課税で得られた税収の60%強は、地方自治体に入っているからです。代替財源を考えずに法人実効税率を引き下げると、国の税収は減りますが、地方自治体の収入はもっと減ります。代替財源の検討というのは、地方自治体の収入減にどう対応するかという点が1つのポイントになります。

地方自治体の収入となる法人課税は、大まかにいうと以下の通りです。より正確には、第4回法人課税DGの資料4-1の3ページに示されています。

(1)法人住民税の法人税割(法人が稼いだ所得(利益)に比例して課税)※

(2)法人住民税の均等割(法人の資本金額や従業員数に応じて定額の課税)

(3)法人事業税の所得割(法人が稼いだ所得に比例して課税)

(4)法人事業税の付加価値割(法人の「付加価値額」に比例して課税;大企業のみ)

(5)法人事業税の資本割(法人の資本金額に比例して課税;大企業のみ)

(6)国が課す法人税(法人が稼いだ所得に比例して課税)の34%(地方交付税として国から自治体に分配)

※2014年度に新設された「地方法人税」も同様

これら6つのうち、「法人実効税率」に関係するのは、(1)と(3)と(6)です。要するに、法人が稼いだ所得に比例した課税です。ところが、地方自治体の収入となる法人課税は、他にも(2)と(4)と(5)があります。

単純に法人実効税率を引き下げると、(1)と(3)と(6)の収入は減ります。しかし、(2)と(4)と(5)は関係ありません。そこに目を付けて、法人実効税率を引き下げるのと引き換えに、代替財源として他の法人課税を「増税」するという発想が出てきています。特に、(4)と(5)は、「外形標準課税」とも呼ばれています。つまり、法人実効税率を引き下げる代わりに、外形標準課税の適用拡大という話が出てきたのです。

ここで、話を次に進める前に確認ですが、外形標準課税である(4)と(5)は、上記の通り、資本金が1億円超の大企業にのみ課税されており、1億円以下の中小企業には課税されていません。また、外形標準課税のうち付加価値割(4)は、企業の「付加価値」に比例して課税されるのですが、「付加価値」とは、報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料+単年度損益の合計です。ちなみに、報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料を、「収益配分額」といいます。

外形標準課税適用拡大の建前と本音

外形標準課税の適用拡大には、2つの方策が考えられています。1つは、資本金が1億円以下の中小企業にも外形標準課税を課すこと。もう1つは、法人事業税の中で所得割(3)の税率を下げて減税する代わりに、付加価値割(4)の税率を上げて代替財源とすること、です。

外形標準課税は、法人が稼いだ所得に比例しないので、企業は赤字になっても税負担が課されます。このことから、「外形標準課税の適用拡大によって赤字法人に課税を強化する」と言われたりもします。赤字法人にも税を払ってもらうには、外形標準の適用を拡大すればよい、という「本音」も見え隠れします。

赤字法人となっている企業は、中小企業に多いことが背景となって、中小企業は外形標準課税の適用拡大に猛反対しています(もちろん、今まで適用されていなかったのに適用されると、新たに納税のための事務負担が増えることも反対理由に挙がっています)。

赤字法人は、確かに法人が稼いだ所得に比例した課税(1)と(3)と(6)は払っていません。しかし、法人課税以外にも、企業が持っている土地や家屋や機械類(償却資産)に課される固定資産税や従業員の社会保険料(年金、医療、介護等)の事業主負担を払っていますから、負担を逃れているわけではありません。その上に、外形標準課税の適用拡大をすると、(1)と(3)と(6)における法人実効税率の引下げの恩恵は全くないのに、その分だけ税負担が純粋に増えることになります。法人実効税率引下げという政策を実行しようとしているはずなのに、企業に増税を強いるという本末転倒なことが起こってしまいます。

そんなこともあってか、中小企業の人たちから支援を受けている政治家ならまだしも、「外形標準課税の適用拡大」自体に賛成する論者でさえ、中小企業への適用拡大には慎重だったりして及び腰です。

すると、残るは、大企業への法人事業税において、所得割の税率を下げて減税する代わりに、付加価値割の税率を上げて代替財源とすることをどうするかが問われます。これを実現しようとするところには、大企業に狙い撃ち的に課税したいという「本音」もあったりします。

一見すると、法人実効税率(所得割の税率)が下げられるならば、外形標準課税を拡大(付加価値割の税率引上げ)してもよいではないか、と思うかもしれません。一部の黒字法人には、所得割で課されるより付加価値割で課される方が税負担が減るから良いとするところもあるようです。しかし、法人実効税率は下げられても、外形標準課税といえども企業に税を課していることに変わりはありません。

さらに、付加価値割は給与を増やすと税負担が増える性質を持っています。前述の通り、付加価値割は、報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料+単年度損益の合計に比して課税されます。そのうちの「報酬給与額」が増えると、税負担が増えます。

この性質があって批判が多かったことから、2004年度に外形標準課税が導入された際に、付加価値割に雇用安定控除を設けました。雇用安定控除とは、収益配分額の7割を超える報酬給与額を課税対象となる付加価値額から控除する仕組みです。例えば、第4回法人課税DGの資料4-2の17ページにあるように、報酬給与額が800、純支払利子が100、純支払賃借料が100、単年度損益が200だった企業があると、定義により収益配分額は1000、付加価値額は1200となります。報酬給与額は、収益配分額の8割ですから7割を超えており、収益配分額の7割である700を超える分である100(=800-700)が、雇用安定控除となります。したがって、付加価値割の課税対象は、付加価値額1200から雇用安定控除100を引いた1100となります。

確かに、雇用安定控除がある分だけ税負担は軽くなります。雇用安定控除があるから、付加価値割は「賃金課税」にはなっていない、と建前的な説明がなされたりします。

しかし、雇用安定控除があっても、給与を増やすと税負担が増える性質は変わりません。今の例で言えば、他は同じで売上が100増えたとして、経営判断で、それを全て給与の増額に充て、単年度損益は200のままにしたとします。すると、報酬給与額は900、他は同額なので、収益配分額は1100、付加価値額は1300となります。雇用安定控除は受けられますが、収益配分額の7割である770(=1100×70%)を超える分である130(=900-770)が控除額となります。したがって、付加価値割の課税対象は、付加価値額1300から雇用安定控除130を引いた1170となります。つまり、給与を100増やしたことで、付加価値割の課税対象額は70増えて税負担が増えることになるのです。

付加価値割の税率を上げれば、給与を増やすと税負担が増える度合いがますます高まります。この例で、所得割では、前述の単年度損益に相当する法人所得であれば、給与を増やしても法人所得が同じなので税負担は増えません。したがって、所得割の税率を引き下げて付加価値割の税率を引き上げると、一時的には所得割の負担減の効果が勝ることもあるでしょうが、後に給与を増やすと付加価値割の負担増に苛まれることになります。「アベノミクス」でも給与アップを喚起している最中です。所得割の負担減という「まんじゅう」に魅かれて食いつくと、給与を増やすと付加価値割の負担増という「毒」を食らう、という意味で、この付加価値割の適用拡大はまさに「毒まんじゅう」です。

逆に言うと、給与を減らせば付加価値割の税負担が減るので、付加価値割が強化されると、企業が税負担を減らしたいという誘因で(誤って!?)給与を減らす可能性無きにしも非ず、ということです。これでは、付加価値割の適用を拡大したことで別の悪影響が出てしまいます。

代替財源なら法人住民税の均等割

さりとて、地方自治体も行政サービスのためには財源は欠かせません。法人実効税率の引下げによる地方の収入源に対しては、きちんと代替財源を考えるべきです。

本来的には、行政サービスの便益が及ぶ住民に、個人住民税などの形できちんと負担をお願いするのが真っ当です。ただ、法人課税の中で代替財源を探すとなると、上記の中では、強いて言えば法人住民税の均等割(2)が適切です。企業が、どれだけ利益を上げても、定額の負担で済みます。現行の法人住民税の均等割は、各企業に少額しか課していませんから、法人実効税率を引き下げる代わりに、均等割の額を増額するという形で代替財源を賄うのが、外形標準課税の適用拡大より企業活動を歪めずに済みます。