【政策会議日記9】わが国財政の長期展望をどう見るか(財政制度等審議会)

3月10日に、私も一委員として出席した財政制度等審議会財政制度分科会が開催されました。

財政制度等審議会財政制度分科会は、例年(民主党政権期を除く)5月頃と11月頃に、来年度予算編成に向けた建議を財務大臣に手交しています。財政制度等審議会財政制度分科会の位置づけについては、拙稿「【政策会議日記3】14年度予算案の収支改善は(財政制度等審議会)」でも詳述しています。

5月頃に提出する建議は、経済財政諮問会議で6月頃に取りまとめる、いわゆる「骨太の方針」(第2次安倍内閣での名前は「経済財政運営と改革の基本方針」)に盛り込む予算編成方針を意識して、4~5月にかけて集中的に同分科会で審議して作成します。同分科会でのこの一連の会合を、「春の財審」と言ったりもします。

ちなみに、11月頃に提出する建議は、まさに12月下旬に取りまとめる来年度政府予算案の内容について、どうあるべきか提言を打ち出すもので、10~11月にかけて集中的に同分科会で審議して作成します。同分科会でのこの一連の会合を、「秋の財審」と言ったりもします。

今年の「春の財審」

今回の会合は、まさに「春の財審」の皮切りとなる会合でした。昨年も「春の財審」を開きましたが、4月1日に初会合でしたから、今年は1か月弱早く議論を始めたと言えます。例年、通常国会で来年度予算案が審議中の時期(1~3月)は、政府にとっては予算案の可決が最優先で、予算案の内容に関して有識者が政府の会議でケチをつけて予算審議に後ろから鉄砲を撃つようなことを避けるためもあって、審議会は開かれないことが通例です。政府予算案はまだ審議中なのに審議会を開くのは珍しいです。

今年の「春の財審」の狙いは、安倍内閣が2013年8月に「中期財政計画」で掲げた財政健全化目標のうち、2015年度の目標が達成できそうな見通しになったので、2020年度の目標を意識しながら、長期的な財政の持続可能性をどう確保するかについて検討することです。「中期財政計画」については、拙稿「【政策会議日記3】14年度予算案の収支改善は(財政制度等審議会)」でも詳しく述べていますが、2015年度の目標は、国と地方を合わせた基礎的財政収支の赤字を2010年度に比べ対GDP(国内総生産)比を半減することで、2020年度の目標は、国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化することです。ただ、2020年度以降は、「その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。」とだけ記されており、どの程度の財政収支改善が必要かは、必ずしも明らかではありません。

今回の会合で、今後の審議の方向性が示されたのは、社会保障・税一体改革を実行することを見越して、わが国の財政の持続可能性を具体的に分析しようということです。5月下旬にも財政制度等審議会として今年の春の建議を取りまとめる予定ですが、それを念頭に、わが国の財政状況と政府債務に関する長期的な動向を分析し、財政収支改善がどの程度必要なのかを指標などで示そうと検討しています。

財政制度等審議会財政制度分科会では、2007年10月に「財政の持続可能性についての分析」(PDFファイル)として、わが国における長期的な財政の持続可能性についての分析結果を示したことがあります。この分析では、EU(欧州連合)の欧州委員会の分析手法を参考にして結果を示しました。欧州委員会は、加盟各国の人口動態や経済状況など財政支出や税収に影響を与える要因を織り込み、加盟国ごとに長期的な財政の持続可能性を分析し、その結果を定期的に公表しています。そして、指標の示し方として、2030年の債務残高を対GDP比で60%とするために必要な財政収支の改善幅などを用いています。

欧州委員会がこの指標を出した最新版が、"Fiscal Sustainability Report 2012"です。今回もこれを意識した分析になりそうです。わが国の分析について、どのように作業を進めるかはこれから検討しますが、遅くとも財政制度等審議会の春の建議に間に合うようには作業を進めることにしています。