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過去10年で最悪の黄砂、中国でなぜ発生した? 日本への影響を解説

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
3月15日の北京(写真:ロイター/アフロ)

昨日(2021年3月15日)、北京では高濃度の黄砂に覆われ、多少奇抜な見出しを付けて各メディアで報道されました。

今回の大規模な黄砂現象の詳細な原因は、今後の研究で明らかになっていくと思います。この記事では、自ら開発したソフトウェアSPRINTARSを使って、PM2.5と黄砂の予測を毎日コンピュータシミュレーションして結果を提供している立場から、今回の現象を速報的に考察してみます。日本への影響も解説します。

原因は中国・モンゴルの砂漠だけではない?

私自身のシミュレーション結果では、今回の高濃度の黄砂の原因は、中国やモンゴルの砂漠起源の砂粒だけではないことを示しています。下の図は、地上付近だけではなく、上空も含めた空気中の砂粒の量について、コンピュータシミュレーションによる予測結果を示しています。前日14日に中東にあった高濃度の砂粒を含む空気(白丸の部分)が、1日程度で中国内陸部やモンゴルの砂漠に到達し、そこでさらに砂粒(黄砂)を含んで、昨日15日午前に北京へ到達していることがわかります。予測どおりに、実際に高濃度が観測されました。

前日14日0時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の計算結果
前日14日0時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の計算結果

昨日15日0時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の計算結果
昨日15日0時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の計算結果

昨日15日12時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の計算結果
昨日15日12時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の計算結果

14日の天気図を見ると、東アジア内陸部で、中心気圧が約50hPaも異なる低気圧と高気圧が接近しています。したがって、中国やモンゴルの砂漠で強風が吹いて、大量の砂が舞い上がったことは推測されます。さらに、私のシミュレーション結果から、中東の砂漠を起源とする砂も相当量混ざることで、さらに高濃度の黄砂となったことが示唆されます。

日本上空を黄砂が通過?

この黄砂は、本日16日に日本へ到達することが予測されています。しかし、北京での高濃度の黄砂の写真から受ける印象のわりには、気象庁の予測や私自身の予測では、それほど多い黄砂の飛来は予測されていないように見えます。これは、普段みなさんが目にする黄砂やPM2.5の濃度予測は、地上付近の空気の状態であることがポイントです。コンピュータシミュレーションでは、3次元で計算しているので、地上付近の分布だけではなく、高さ方向の濃度分布も計算されています。上の図と同じように、地上付近だけではなく、空気全体の砂粒の量の計算結果を見ると、本日16日は、かなり高濃度の黄砂が日本上空へ飛来すると予測されています(下図)。

本日16日12時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の予測の計算結果
本日16日12時(日本時間)の上空全体の砂粒の量の予測の計算結果

PM2.5の多くは都市部から発生するため、日本へ越境飛来する場合でも、地上付近を漂って飛来してきます。一方、黄砂は、地上付近を漂ってくる場合もありますが、上空高く飛来することもあります。これは、例えばタクラマカン砂漠は、そもそも周囲の標高が高いため、砂粒が強制的に持ち上がり、高い高度を維持して飛来することなどが要因です。ただし、黄砂の多くはPM2.5の微粒子よりも大きいため、上空から落下しやすいという特徴もあります。

本日16日は、一般的な黄砂予測では濃度がそれほど高くなっていないかもしれませんが、上空には黄砂が飛来することが予測されているので、念のため、呼吸器疾患や黄砂アレルギーのある方は、注意しましょう。また、本日16日は、西日本や日本海側で雨になりそうです。この雨をもたらす寒冷前線に沿って、黄砂が飛来するのです(その仕組みは、PM2.5に関する過去の記事で解説しています)。上空の黄砂が雨に混ざって落ちてくるので、雨が止んだ後は、きっと車などが汚れていることでしょう…。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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