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実際に黄砂が飛来したかわからない? 今年から各地で観測終了

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

本日2020年5月13日は、福岡・広島・高松・名古屋・新潟で黄砂が記録されました。ただし、視程(水平方向の見通し)は10キロメートル以上であり、非常に薄い黄砂の飛来なので、大きな影響はなかったと思います。ここで、少し考えてみましょう。今日は九州地方から中部地方まで、かなり広範囲で薄いながら黄砂が記録されているのですが、記録された地点数が少ないと思いませんか?

実は、黄砂は、各地方の中心都市でしか気象庁は記録しないことになったのです。具体的には、北から、札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・鹿児島・那覇のみです。

地方気象台での目視観測終了

2020年2月から、各都道府県に1カ所は必ずある気象台の多くで、気象現象の目視観測がなくなり、例えば「快晴」という記録は今後残らなくなったというニュースを覚えているでしょうか。正確には、各地方の中心都市にある管区気象台では目視観測を継続しますが、地方気象台では目視観測がなくなりました(関東甲信地方の地方気象台では、2019年2月にすでになくなっていました)。これまで気象庁職員の目によりなされてきた目視観測の主な項目については、自動測器を使うことで観測を継続していますが、「快晴」以外にも多くの観測項目が廃止されています。その廃止された項目の中に、「黄砂」も含まれています。

黄砂観測の大幅縮小の影響は?

皆さんが普段各地域で見るテレビの気象情報などで、黄砂が実際に飛来したことを知ることができない可能性があります。濃い黄砂現象の場合は、臨時で地方気象台が情報を出すことはあるとのことですが、今日のような薄い黄砂の場合は、一般の方々は情報を得ることが難しくなるでしょう。気象庁による黄砂の「予測」は充実してきているのですが、予測通りに実際に飛来したかどうかの情報が得にくくなります。

もちろん特別な測器を持っている専門家は飛来状況を引き続き把握できますし、少し知識があれば、非常に多くの地点で測定されている微小粒子状物質(PM2.5)と浮遊粒子状物質(SPM)の測定値の両方を見ると、黄砂の飛来状況の見当がつきます。

また、毎年変化する黄砂飛来の規模は、各観測地点ごとの黄砂観測の延べ日数の全国合計の数値で見ることがあったのですが、観測地点が大幅に削減されたので、過去のデータとの比較が難しくなりました。

なお、黄砂以外のPM2.5などの微粒子により空が霞む「煙霧」(視程が10キロメートル未満)については、各地方気象台での自動測器による観測で継続されます。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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