PM2.5と濃霧の深い関係

(写真:ロイター/アフロ)

12月7日に、北京政府は、深刻な大気汚染がしばらく続くと予想されるとして、最高レベルの「赤色警報」を発令したようです。大気汚染の根本的解決には、石炭・石油・ガソリン等の化石燃料の使用量を大幅に減らす必要がありますが、使用量自体が大きく変わらなくても、日々の気象条件でPM2.5の濃度は大きく変動します。私の以前の記事「PM2.5濃度の急激な変化の原因」で解説しているように、今後2~3日の北京は、高い濃度になる気象条件になる可能性が高いということです。なお、この傾向は、私が毎日運用しているPM2.5予測でも計算されています(SPRINTARS大気微粒子予測の「大気汚染粒子予測動画」参照)。

ところで、この警報と同時に、北京などでは濃霧の警報も発令されているようです。PM2.5で空がかすんでいようが、霧が濃かろうが、見通しが悪くなることには変わりがありませんが、霧は水滴なので、PM2.5とは異なります。さらに、それだけではなく、PM2.5と霧の間には深い関係があります。

PM2.5は霧の材料

私の以前の記事「PM2.5が引き起こす気候変動」で解説したように、PM2.5は雲の材料になります。湿度が400%ぐらいあれば、PM2.5がなくても雲はできますが、実際にそのような湿度にはなりません。PM2.5などの微粒子に水蒸気がくっついて、ごく小さな水滴が作られて、雲ができます。

霧と雲の違いは、基本的には構成している水滴の大きさです。霧の方が水滴が大きいというだけです。したがって、霧はPM2.5がないと生成されません。

ここで、簡単な実験をしてみます。下の動画を見てみてください。ペットボトル(炭酸飲料用が良い)に少し水を入れて、炭酸をキープするためのキャップを取り付けます。動画では、見てわかりやすいように水を多めに入れていますが、少しで構いません。キャップを閉じてペットボトル内の空気に圧力をかけた後、解放して圧力を下げます。これは、気圧の低い上空に空気が運ばれて雲ができる状況を再現してみたいという実験なのですが、これだけではあまり上手くいきません。

一方、下の動画のように、キャップを閉じる前に線香の煙を少し入れておきます。そして、同じように圧力をかけた後、解放してみます。すると、ペットボトル内が白くかすみました。これは、ペットボトル内に入れた水と、微粒子である線香の煙を材料として水滴ができた、つまり、雲・霧ができたということです。このような簡単な実験で、PM2.5のような微粒子が雲や霧の材料になっていることが確認できます。

PM2.5濃度が高いと霧も発生しやすい

上で示した簡単な実験から、気温や湿度などの気象条件が同じであれば、材料となるPM2.5の濃度が高いほうが霧が出やすいことが確認できます。つまり、PM2.5は、それ自体が高濃度で空をかすませるほか、霧を発生させて、さらに見通しを悪くしてしまいます。

この現象は、大気汚染物質の越境飛来の影響を受けやすい九州では、実生活にも影響を及ぼしていると考えられます。例えば、普通であれば霧が濃くなるような気象条件ではないときに、PM2.5が高濃度となり、その結果、濃霧も誘発してしまって、電車の運行が大幅に遅延してしまうという事例が挙げられます。また、2011年2月3日の朝から昼ごろにかけて、九州の一部の地域では、乾燥注意報と濃霧注意報が同時に発令されるという珍しい、良く考えればおかしな事態となりました。この時にも、空気中のPM2.5濃度が高かったことが確認されています。見通しが悪くなった主な原因はPM2.5自体でのかすみですが、それに加えて、乾燥していたものの、PM2.5が助長した霧が重なってしまったようです。濃霧注意報には、見通しが悪いときに交通機関などに注意を促すという役割があるため、乾燥していながら、濃霧注意報を出さざるを得なかったと思われます。想定していない現象が起こっている、とも言えるでしょう。