乃木坂46、日向坂46などアーティスト公式アプリゲームが大ヒット。エンタメDXを掲げ、ゲームをベースにしたメディアミックスからデジタル収益最大化と日本エンタテインメントの世界進出を目指す新鋭会社10ANTZが、『愛の不時着』プロデューサーを迎えた韓国スタジオとの業務提携による本格的なドラマ制作に乗り出した。その狙いを髙澤真社長に聞いた。

■音楽業界からIT企業を経て新たなアーティスト価値創出へ

 10ANTZは2013年創業の若い会社だが、アーティストゲームでヒットを生み出し急成長を遂げている。創業社長の高澤氏は、20代はレコード会社に勤めるが、携帯電話による新しいパーソナルメディア時代の到来を感じ、30代に入る頃にIT業界に飛び込んだ。

 そこでは、当時のガラケーの音楽コンテンツやストーリー性のあるソーシャルゲームを手がけ、デジタルのエンタテインメント・コンテンツでヒットを生み出す経験を10年ほど積み、その知見を得てた。そんななか、もともと音楽業界で抱いていた「アーティストの新しい価値を創出する事業を手がけたい」という思いから、40歳で起業する。

「それまでの経験から、自分たちの強みを活かして他社との差別化ができ、なおかつやりたいことに近づける事業を考えたときに、ゲームとアーティストを組み合わせるビジネスにたどり着いたんです。根底にあるのは、デジタル領域で総合的にエンタテインメントを展開していくことで、アーティストに貢献したい、さらには日本の音楽業界やエンタテインメント界に貢献していく会社を作りたいという思いでした」

 数あるIT企業やゲーム制作会社とは異なる10ANTZの強みは、システムを作ってクライアントに提供する一般的なDXとは異なり、コンテンツをまず走らせ、そこから展開を広げてプラットフォーム化していくエンタメDXを提供すること。高澤氏は「10ANTZはもの作りの会社であり、そこが大きな違いです。自分たちのコンテンツで収益化できるものを他社にも提供して拡大していくDXになります」と差別化を図る。

■ゲームを起点にイベントから流通まで連動する総合エンタメDX

乃木坂46を起用した公式アプリゲーム「乃木恋」は累計900万ダウンロードを突破。香港、台湾、マカオでもヒットした(C)乃木坂46LLC/Y&N Brothers Inc. (C)10ANTZ Inc.
乃木坂46を起用した公式アプリゲーム「乃木恋」は累計900万ダウンロードを突破。香港、台湾、マカオでもヒットした(C)乃木坂46LLC/Y&N Brothers Inc. (C)10ANTZ Inc.

 10ANTZのエンタメDXとは、ゲームから広がるメディアミックス展開に紐づく。ゲームを起点にライブやイベント、舞台から映像作品の放送・配信、グッズなどの商品流通までエンタテインメントとして総合的に拡張していく。そこでは、リアルでは難しいファンのニーズをデジタルで実現していくことで話題性を喚起。ファンの枠を越えるヒットを作り出している。

「デジタル領域を得意としますが、リアルを含めた総合エンタテインメントとして提供したいというポリシーがあります。そこでの10ANTZの強みは、デジタルコンテンツで収益化できるベースがあるうえで、さまざまな横展開に注力していけること。例えば、ドラマなどの映像展開をしながらゲームアプリにユーザーを誘導して収益化します。そのサイクルを確立しているからこそメディアミックスでできることの幅も広がるんです」

 もうすぐ創業10年になる同社は、乃木坂46を起用した公式アプリゲーム「乃木恋」を起点にいろいろな連動展開にチャレンジし、知見を積み上げてきた。そしていまそれをさらに推し進めていく体制と環境を構築しており、そこから次のステップへと進むのが、韓国の映像制作スタジオであるPLAYLISTとの業務提携。これまではゲームからの横展開のひとつであった映像制作を事業として独立させる。

「クリエイティブのクオリティのほか、体制に関してもひとつの事業として切り出せるまでに積み上げることができた結果の次のフェーズです。ただ、映像事業単体で収益化しようとは考えていません。ゲームをはじめ、すべての展開をリンクさせてプロジェクトとして大きくしていくのが弊社のやり方です」

■ドラマ制作に本格参入し日本エンタメ海外進出を後押し

PLAYLIST制作ドラマ。キム・ドンヒやAprilのナウン出演『A-TEEN』(左)とRed VelvetのイェリとPENTAGONのホンソクが出演する『ブルーバースデー』(C)PLAYLIST
PLAYLIST制作ドラマ。キム・ドンヒやAprilのナウン出演『A-TEEN』(左)とRed VelvetのイェリとPENTAGONのホンソクが出演する『ブルーバースデー』(C)PLAYLIST

 ゲーム会社でありながらドラマ制作に本格参入する高澤氏は「10ANTZはゲームだけを作っている会社ではない。新しいものをどんどん取り入れて、アーティストやファンに最適なものを提供していきます。あくまでファンとアーティストをつなぐ間に我々がいて、そこでなんらかの収益化できるやり方を模索するのが役割です」と力を込める。

 ゲームをベースにするこれまでの展開をさらに拡大させ、従来以上に映像をリンクさせていく。その先のフェーズはオリジナル映像作品。ゲームだけでなく、ドラマや映画でも自社IPを作っていくことを掲げる。

「もちろんドラマだけで勝てるような甘い世界ではないことは理解しています。ゲームやデジタルコンテンツとの連携による収益化を想定して、ドラマの企画制作をしていくことになります。ただ、先々にはテレビ局や配信プラットフォームと提携していくことも必要だと思っています」

 ゲームから映像、そしてデジタルからリアルまで、すべての事業をひとつのプロジェクトとしてシナジーをもって1社で運営するのが同社の強み。それを活かして「日本のアーティストやエンターテインメントの世界進出の手助けをするのが10ANTZのミッション」と高澤氏は語る。

 これまで日本エンタテインメント界は、国内市場規模が大きいために内向きとも言われてきた。しかしコロナがあったいま、そこに風穴を開けようとする人や企業が多く出てきている。そのひとりである高澤氏は、これまでの経験を糧にこの機を逃すまいと精力的に動き出している。

「コロナでライブができなくて収益源が減り、デジタルで新しい利益を作らないといけない。デジタル活用と海外進出へのエンタテインメント界の意識が変わっています。この状況は、創業当初は見向きもされなかったアーティストゲームで成功した弊社の歩ともリンクしています。これから3年、5年、10年というスパンで、これまでに環境が激変してきたゲームと同じことが起きるでしょう。そこを見据えてやっていくことが大事です」

「ひなこい」(C)Seed&Flower LLC/Y&N Brothers Inc. (C)10ANTZ Inc.