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大阪万博へ向けて関西経済界“チーム関西”始動 ウィズコロナのリスタートへ

武井保之ライター, 編集者
大阪・関西万博に向けた大型フェス開催/提供Warai Mirai FES2022

 2025年4月から10月にかけて大阪で行われる「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」。その3年後の開催に向けて関西経済を盛り上げるべく在阪大手企業・団体が集結したチーム関西が主体となり、第1弾となるキックオフ大型イベント「Warai Mirai FES2022 〜 Road to EXPO 2025 〜」を大阪・万博記念公園で4月29日から3日間にわたって開催した。

■お笑い&音楽ライブと体験型ワークショップの複合フェスが盛況

M-stage2日目のトリを飾ったGENERATIONS from EXILE TRIBE。大勢の観客を魅了した/写真提供:Warai Mirai FES2022
M-stage2日目のトリを飾ったGENERATIONS from EXILE TRIBE。大勢の観客を魅了した/写真提供:Warai Mirai FES2022

“未来の開会式”をテーマに掲げる本イベントは、会場内に「お祭り広場(M-stage)」「W-zone」「EXPO’70 パビリオン」と3つのエリアが設けられた。お祭り広場のM-stageでは人気芸人やアーティストによるお笑いと音楽ライブが繰り広げられ、W-zoneでは“楽しみながら学ぶ”をテーマにSDGsをはじめさまざまなステージイベントやワークショップ、スポーツ体験プログラムが組まれたほか、フードコートでは世界のグルメと大阪・関西の地産地消の料理を楽しめた。

 そして、「ライブ感溢れる体験型展示」を掲げるEXPO’70 パビリオンでは、大阪・関西万博に向けて先端技術に触れて学ぶ「やってみた展」の体験型展示や、1970年大阪万博の熱気と興奮を伝えるVR体験のほか、当時の万博に関連した懐かしい物品を展示。52年前の大阪万博と未来の大阪・関西万博を体感することができた。

52年前の大阪万博と未来の大阪・関西万博を体感できる「EXPO’70 パビリオン」/写真提供:Warai Mirai FES2022
52年前の大阪万博と未来の大阪・関西万博を体感できる「EXPO’70 パビリオン」/写真提供:Warai Mirai FES2022

 また、W-zoneには万博さながらの企業や団体ブースも設けられ、在阪テレビ局によるメディアマーケット、近畿大学、法務省、大阪府、豊島区、日本郵政、くら寿司、コアレックスなどが出展。さまざまな展示や体験プログラムで来場者を楽しませた。

 会場は、お祭り広場のM-stageのみ有料席となり、そのほかのエリアは感染症対策オンライン登録のみで無料入場でき、1日楽しめる。M-stageチケットは1日目と2日目が完売、3日目は8割ほどが売れ、GW中とあって期間中は多くの来場者がつめかけ、会場を大いににぎわせた。

■大雨のなかも熱く盛り上がる 多彩な楽しみで笑顔があふれた3日間

大雨のなかのW-zoneイベントステージで芸人のトークを楽しむ観客/写真提供:Warai Mirai FES2022
大雨のなかのW-zoneイベントステージで芸人のトークを楽しむ観客/写真提供:Warai Mirai FES2022

 初日は大雨が降る荒天のなか、M-stageは雨具に身を包んだ若者たちが観客席を埋めた。トップバッターは若い世代に絶大な人気のEXIT。続いて、すゑひろがりずや今回の出演最年長芸人となる博多華丸・大吉など人気芸人たちが登場し、漫才やコントなどのネタを披露。初日のトリはフットボールアワーが務めた。エンディングで初日後半のMCを務めた陣内智則は、どしゃぶりのなか8時間のステージを最後まで楽しんでいた観客へ「大阪のお客さんは本当にお笑いが好き。ずっとがんばって楽しんでくれた」と感謝の言葉を送った。

 初日とは打って変わって快晴となった2日目。音楽ライブがメインになったこの日のM-stage MCはニューヨークが務め、オープニングアクトのfumikaが登場。続いてOCTPATH、NMB48、円神が会場を盛り上げる。後半はOWVからDOBERMAN INFINITYと続き、トリにはGENERATIONS from EXILE TRIBEがステージへ。J-POP、アイドル、ダンス&ボーカルからHIP HOPまで多彩なジャンルの実力派アーティストたちの音楽ライブが観客を熱くした。

こがけんが生バンドの演奏で熱唱したW-zoneイベントステージ/写真提供:Warai Mirai FES2022
こがけんが生バンドの演奏で熱唱したW-zoneイベントステージ/写真提供:Warai Mirai FES2022

 一方、無料エリアとなるW-zoneのステージでは、芸人たちによるSDGsイベントなどのほか、JAZZの生バンド演奏では飛び入りしたこがけんが迫力の熱唱で観客を驚かせるなど、エリア全体を大いに盛り上げた。また、企業ブースや各種ワークショップでは、晴天のなかファミリー層が熱心に創作に取り組んでいる姿が見られ、スポーツ体験ではトップアスリートに技術を教わる子どもたちがキラキラする眼差しで汗を流している様子が印象的だった。

 3日目はお笑いと音楽ライブが融合したまさにお祭りとなるステージに。BiSHがオープニングアクトを務めたあと、かまいたち、見取り図、コウテイ、テンダラーなどの漫才が続き、休憩を挟んで、くるり、氣志團とロックバンド勢の圧巻のステージパフォーマンスで会場を熱狂の渦へ巻き込む。夜の部では日谷ヒロノリ、ぼる塾、和牛、タカアンドトシ、中川家など新鋭からベテランまで豪華芸人が登場。そして、3日間のフェスの大トリはベリーグッドマンのライブ。ノリノリのラップと応援ソングで締めくくった。

■コロナで離れていた日常のイベントの楽しさを思い出させてくれた

近畿大学のブース「ART REBUILD」で産学連携の継続型アートプロジェクトを学び、芸人と一緒に創作に挑戦する子どもたち/写真提供:Warai Mirai FES2022
近畿大学のブース「ART REBUILD」で産学連携の継続型アートプロジェクトを学び、芸人と一緒に創作に挑戦する子どもたち/写真提供:Warai Mirai FES2022

 3日間を通して会場は大勢の来場者でにぎわった。とくに印象深いのは、各エリアで若い女性グループやファミリー層の笑顔があふれ、心からフェスを楽しんでいる様子が伝わってきたこと。芸人たちのお笑いネタで笑い、アーティストのライブでは音楽に体を揺らせながら手を振って応える。ライブの前後には、フードコートで料理を楽しみ、ワークショップやSDGsイベントをのぞきに行くなど、さまざまなエリアの多彩なテーマに少なからず触れ、本フェスならではの1日をたっぷりと堪能する姿が見られた。

 ウィズコロナ生活のなかで、すでに音楽ライブやイベントは復活してきているが、そこに参加するのはアーティストのファンや音楽好きの層が中心になっているだろう。そうしたなか、ファミリーを含めた一般層が屋外イベントに集い、他者と触れ合いながら多様なイベントやワークショップを楽しむ本格的な大型フェスは、コロナになってから今回が初めてになるかもしれない。出演アーティストたちからは、久々となった屋外パフォーマンスで大勢の観客と一体になることへの喜びが口々に語られ、観客からも開放的な屋外会場で多様なイベントに触れる幸福感を噛みしめる声が聞こえてきた。

 本フェスに参加した多くの来場者が、巣ごもりや自粛生活のコロナの日常を長く送ってきたなかで、イベントに参加することの純粋な楽しさを改めて感じることができたに違いない。それはこれからのウィズコロナ社会において、コロナの2年間で忘れていた日常の楽しみを取り戻すことにつながっていくだろう。

■「大阪・関西万博」へ向けた下地作りから関西経済振興へ

最終日のM-stageで観客を沸かせる氣志團/写真提供:Warai Mirai FES2022
最終日のM-stageで観客を沸かせる氣志團/写真提供:Warai Mirai FES2022

「大阪・関西万博」へ向けた気分を盛り上げるキックオフイベントであり、ウィズコロナのイベントを楽しむ日常へのリスタートの位置づけとなった本フェス。その幸せなエネルギーに満ちた空間は、誰もがかつての日常でなにげなく抱いていた興奮や高揚感、感動といった感情の揺れを思い出させてくれた。それと同時に、この先の日常におけるイベント再開への期待と、参加への意欲を高め、国を挙げた一大イベントとなる「大阪・関西万博」が2025年に大阪で開催されることをしっかりと再認識させてくれた。

 国際博覧会担当大臣の若宮健嗣氏は、本フェスへ向けて「『大阪・関西万博』まで残り3年を切り、準備が本格化されるなかの開催をうれしく思います」とメッセージを寄せた。そんなチーム関西による第1弾イベントは、コロナから次の生活に向かうまさに絶妙なタイミングで開催され、「大阪・関西万博」へ向けたイベントを楽しむ空気を醸成する下地作りになるとともに、ウィズコロナの本格的な大型イベント復興への第一歩となった。

 チーム関西の活動はこれから第2弾、第3弾へと続き、万博までの道程において頂上へ向けた機運をさらに高めていくことだろう。それは同時に関西経済の振興にもつながる。まずは大成功に終わったフェスから、関西経済界が勢いをつけて動き出そうとしている。

【関連リンク】

公式サイト「Warai Mirai FES2022 〜 Road to EXPO 2025 〜」

大阪万博に向けて協議会「チーム関西」を立ち上げ

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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