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カーリング界に激動の春。フォルティウス、コンサドーレ、松村雄太がそれぞれ再出発を発表

竹田聡一郎スポーツライター
左から船山、近江谷、吉村、ニューズトテック粟津社長、小野寺、小林(著者撮影)

 五輪シーズンということもあり5月下旬まで続く史上最長のシーズンを送っている日本カーリング界だが、終盤にかけて男女の日本王者のニュースが立て続けに入ってきた。

 まずは30日、フォルティウスが都内で会見を開いた。2月からトップスポンサーとなった株式会社ニューズドテックの粟津浜一(あわづ・はまかず)代表取締役社長と共に登壇し、改めて5選手が今後に向けて抱負を語った。

 ニューズドテック社のスポンサーシップを受けて「チームにとってワクワクする出来事」と近江谷杏菜が笑顔を見せれば、小野寺佳歩も「心から嬉しく思います」と率直に喜んだ。

 特筆すべきはそのスポンサー契約だ。2002年ソルトレイクシティー五輪からカーリングを見始めたと言い、自らを「カーリングマニア」と呼ぶ粟津社長は「次の五輪までの4年間」と言い切った。また、粟津社長は「船山(弓枝)選手は僕にとってのアイドル」とも語ったが、その船山が「4年8年12年と長く愛されるクラブチームにしたい」と中長期の未来を見据えたように、カーリングの周知、普及や育成まで視野に入れた活動を考えているようだ。その第一歩として、まずは5月の日本選手権(北見市常呂町)で連覇を狙う。

 吉村紗也香が「残り二ヶ月を切ったところですが、着々と準備は進んでいますしチームとしても本当に良くなってきている」と手応えを感じたようにスポンサーがつくかどうかという不安も解消されて、あとは氷上のパフォーマンスに集中するだけだ。

 翌31日には北海道コンサドーレ札幌がリリースを配信。「第39回日本カーリング選手権出場メンバーについて」と題して、松村雄太が「本人の意向により」チームを離れる旨を発表した。

 松村は2018年のチーム発足前、前身となる「4REAL」時代も合わせれば2012年のチーム立ち上げから10シーズンに渡って在籍したメンバーだ。同じくオリジナルメンバーの阿部晋也と共に、Jリーグのチームとタッグを組みながら、自身は永山運送という都内に本社を置く会社に在籍し、職場の理解を得つつ競技に専心できる環境を整えるなど、男子カーリングの可能性を模索する役割も果たしてきた。

「赤黒のユニホームを着て日本選手権3連覇ができたこと、初出場でアジアチャンピオン、世界選手権4位になれたことは、このクラブにいなければ出来なかったことで、とても誇らしい思い出です」

などと、松村はチームに感謝の意と、惜別の言葉を残している。

 シーズン途中のチーム離脱はやはり異例だが、五輪挑戦という大きな節目を終えた今、編成を新たにするチームにとって日本選手権は、来季以降を考えれば新布陣を試す格好の大舞台となる。

 コンサドーレ関係者によると「ポジションなどは未定」としながらも、フィフスを新たに加入させることは現状ではないようで、相田晃輔、谷田康真、清水徹郎、阿部の4選手で、来季以降の布陣を探りながらまずは4連覇に挑むことになりそうだ。

 気になる松村の今後の動きだが、本人によると「基本的には未定です」とのことだ。

 他の男子チームに電撃移籍して日本選手権出場か、という憶測もネット上などで飛び交っているが、本人は笑顔で否定した。

「さすがにそんなややこしいことはしません。チームをサポートするタスクや、コーチング、アイスメイクなどに興味を持っています。解説や大会運営なども勉強になりそうですし、自分とカーリングのためになるようなことはすべて視野に入れて考えています。いずれにしても、プレーしない立場から競技を見ることでまた選手としての自分に還元できるのが理想ですね」

 現役引退ではなく、あくまで視野を広げる、経験値を増やすためのコンサドーレ離脱を強調した。まずは5月の日本選手権では女子のコーチ、解説者、運営スタッフなどといくつかの可能性がありそうだ。

 一方で、ロコ・ソラーレの吉田夕梨花とのミックスダブルスも継続を前提で練習も重ねている。来季以降はミックスダブルスに片足を置きながら、ジュニアの育成に携わったり、JCA(日本カーリング協会)強化委員会のサポートをしたりと、多岐に渡っての活動が予想される。

 フォルティウス、コンサドーレ、松村雄太。それぞれがチーム、あるいは自身とカーリングの可能性を広げるべく決断した。三者三様のリスタートとなった春だが、これまでどおりにそれぞれの立場でカーリング界を牽引してゆくのは変わりないだろう。「次の4年」はもう始まっている。

2021年の日本選手権は吉田夕梨花とのペアで優勝。来季は連覇(2022年3月に予定されていた大会は新型コロナウイルスの影響で中止)を狙う。 (著者撮影)
2021年の日本選手権は吉田夕梨花とのペアで優勝。来季は連覇(2022年3月に予定されていた大会は新型コロナウイルスの影響で中止)を狙う。 (著者撮影)

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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