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五輪は夏から冬へ、北京五輪シーズン開幕 異例づくしの2021-22カーリングカレンダー(前編)

竹田聡一郎スポーツライター
吉田夕梨花、松村雄太は2種目での五輪出場を目指す(C)JCA IDE

 メダルラッシュとなった東京五輪の閉会式の8日が、2022年の北京五輪までちょうど約半年前の180日だった。冬季競技もこれから本格的に五輪シーズンに入る。

 2018年の平昌五輪銅メダル獲得やそれに波及した流行語大賞の受賞などで注目度が増したカーリングだが、北京五輪の代表候補チーム国内選考は昨季で8割方、済んでいる。

 2月に稚内で行われた日本選手権の結果で男子は連覇を果たしたコンサドーレが既に国内代表として内定。女子は優勝した北海道銀行フォルティウスと、ロコ・ソラーレ(2020年日本選手権優勝)による代表決定トライアルが9月に再び稚内で行われる。五輪初出場を目指すミックスダブルス(以下MD)も同時期に3つの候補ペアでトライアルが開催予定だ。

 ただ、男女、MDともに日本は北京五輪の出場権を得ているわけではない。9月のトライアルで日本代表候補になったチームやペアには、12月に行われる予定の五輪最終予選(場所未定)で北京行きの切符を勝ち取る大仕事が待っている。

 そのあたりのスケジュールを時系列で予習していきたいが、その前に惜しくも北京五輪の選考に漏れてしまった上記以外のチームに触れておきたい。

 日本選手権で上位に残ったトップチームは、数選手の入れ替えやポジション変更はあるが、基本的にはすべてのチームが今季も活動を継続する予定だ。オフとオフアイスでのトレーニングを挟んで、すべてのトップチームが今季のシーズンインを迎える。まずは2022年の世界選手権出場、日本選手権優勝を目指すことになりそうだ。

 同時に2026年のミラノ/コルティナ・ダンペッツォ開催予定の冬季五輪へ向けての強化プランを長いスパンで練るのも時期尚早ではないだろう。男子の日本選手権で準優勝した常呂ジュニアなど若いタレントの台頭もあり、今後、国内の競争はさらに激しくなってゆく。効果的なトレーニングを組んで、どのチームが世界に出ても戦える準備をしてほしい。

 ただ、今季も新型コロナウイルスの影響は免れない。

 本来ならシーズン開幕戦として8月上旬、昨秋にオープンした北見市のアルゴグラフィックカーリングホールでのJCA(日本カーリング協会)の強化合宿と、新設大会が開催予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で残念ながら中止が決定されている。

 自動的に8月19日から札幌のどうぎんカーリングスタジアムにて無観客で開幕予定のどうぎんクラシック2021が開幕戦となった。今大会は海外チームこそ出場しないが、男女ともに日本選手権ベスト4チームはすべて参加。さらにジュニア世代や北海道ブロックで結果を残したポテンシャルのあるチームが揃った。シーズン初戦とはいえ、ハイレベルな攻防が期待できそうだ。

 9月に入ると冒頭でも触れた稚内みどりスポーツパークで行われる北京五輪の国内選考「全農2021女子カーリング日本代表決定戦」が行われる。9月10日から12日の3日間、北海道銀行とロコ ・ソラーレが先に3勝したほうが勝者となるベスト・オブ・ファイブ形式で五輪代表候補の座を競う。

 その翌週にはミックスダブルスの五輪候補ペア決定戦「全農2021ミックスダブルスカーリング日本代表決定戦」が続く。2021年日本選手権優勝の吉田夕梨花(ロコ・ソラーレ)と松村雄太(コンサドーレ)ペア、2020年同大会優勝の松村千秋(中部電力)と谷田康真(コンサドーレ)ペア、そしてワールドカーリングツアーにMDペアとして国内最上位だった竹田智子と竹田直将ペアを加えた三つ巴で代表権を争う。こちらは総当たりのリーグ戦を2回繰り返して、成績上位の2チームが決勝を戦う。予選の成績も反映されるダブルラウンドロビンとベスト・オブ・ファイブを組み合わせたレギュレーションが採用されている。

 秋からはカナダを中心にツアーが活発化していく。JCAは7月末に「海外渡航ガイドライン」を発表しているが、もちろんワクチン接種や隔離など渡航先、帰国後のルールに従うことを前提に今季は渡航に関して基本的には承認している。

 カナダに関していえば、政府は承認したワクチンの接種を完了し入国日まで14日以上経過している渡航者の隔離を9月7日から免除すると発表している。情報収集と柔軟な対応が求められながらではあるが、2年越しの遠征が敢行できそうだ。

 ツアー最高峰タイトルであるグランドスラムも日程が発表になった。年内には10月19日からオンタリオ州オークビル、11月2日からアルバータ州チェスターミアでの2大会が開催予定だ。この2大会をはじめ五輪に向けた強化として、世界仕様のアイスや試合数を求め、ロコ・ソラーレや北海道銀行、コンサドーレなどのトップチームが渡航する可能性は十分だ。選手やスタッフは既にワクチン接種を済ませている。

 難しい選択になるのが11月6日に開幕予定のパシフィック・アジア選手権(以下PACC)だろう。WCF(世界カーリング連盟)は、未定だった開催地をアルマトイ(カザフスタン)と発表している。ロコ・ソラーレが優勝した2015年大会以来の当地開催となる。

 男子は優勝、女子は2位以内で2022年の世界選手権の出場権を日本として獲得できる大切な国際大会だが、前述のカナダ遠征との兼ね合いになってくる。

 例えば前述の3チームがPACC出場を予定すると、カナダ入国はOKでもカナダから帰国時、あるいはカザフスタン入国や日本帰国時に隔離措置を課される可能性がある。

 東京2020のオリパラ関連大会に出場する選手や関係者には、到着空港での検査が陰性だった上で、競技会場や練習場などの移動は専用車を使用するなど、行動制限つきではあるが14日間の活動が許可される練習緩和措置、通称「アスリートトラック」が特例として設けられた。同様の制度が北京五輪代表候補チーム、あるいは日本代表チームにも適応されるかは現段階では未定だ。いずれにしてもJCAはその可能性を探り働きかけ、情報収集に努めるべきだろう。

 後述する五輪の最終予選のピーキングを含め日程的にタフなスケジュールとなった場合、PACC出場を他チームに委ねるという決断も現実的だ。

 PACCは基本的に直近の日本選手権の優勝チームに出場権があるが、今季のように日程や強化の優先順位、チーム事情などでやむを得ない状況になった時は、日本選手権の上位チームなどを対象にJCAが出場チームを指名することになる。

 今季の場合、男子は常呂ジュニア、TM軽井沢、SC軽井沢クラブ、女子はロコ・ソラーレ、中部電力、富士急が候補に挙がるだろう。

 9月の稚内の五輪トライアルを終え、上位チームからの決断という順序になるが、逆にいえばどのチームも今季は国際大会に出場する可能性があるということだ。各チームもそれを念頭にトレーニングができるため、上手に刺激として目標として活用してほしい。

 12月にはいよいよ大一番、北京五輪の最終予選だ決戦の地はオランダ・レーワルデン。12月5日からMD、11日からは男女という日程で行われる。日本からは男子はコンサドーレが出場、女子とMDは9月の稚内で決定。男女は3枠、MDは2枠の北京五輪出場枠を競う、五輪本番を除けば今季のもっとも重要なゲームだ。

 一方、国内でも同時期に、常呂町で日本代表選考強化合宿が12月9日から4日間、行われる。これは来年に開催される世界選手権の出場チームを決めるものだ。世界選手権女子は3月にカナダ・プリンスジョージで、男子は4月に米ラスベガスで行われる。

 例年では、昨季は日本選手権優勝のコンサドーレと北海道銀行が出場したように、世界選手権には直前に行われた日本選手権の勝者が日本代表として出場する。

 しかし、後編で詳細に触れるが、今季の日本選手権は五輪前後の過密スケジュールなどを考慮し、5月に開催される予定だ。これに伴い世界選手権を戦うチームを事前に決める必要があり、そのための試合形式の合宿となる予定だ。男女それぞれ最大3チームが参加し、ここでの勝者が世界選手権に向かうことになる。つまり今季は、五輪と世界選手権出場には異なるチームが出場する。

 まずがここまでがシーズン前半戦だろうか。昨季に続いてイレギュラーなシーズンになるが、同時に五輪候補のトップチームをはじめ、複数のチームが世界に触れるチャンスがある。どのチームがジャパンを背負っても、世界と互角以上に戦えるのか。“国力”が試されるシーズンになるのかもしれない。

※新型コロナウイルスの感染状況でスケジュールが変動するため、その都度に追記をする可能性があります

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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