安定感を打ち破れ。大躍進の北海道銀行フォルティウス、世界トップ10入りへ次なる挑戦と基本への回帰

スキップ吉村は「来季はいろんなことにチャレンジする年にしたい」とも(著者撮影)

 北海道銀行フォルティウスの2018/19シーズンが終わった。

 シーズン頭に、チーム創設以来の看板選手だった小笠原歩の退団が発表され、リード・船山弓枝ーセカンド・近江谷杏菜ーサード・小野寺佳歩ースキップ・吉村紗也香という新布陣を組む。

「実際にやってみないとどういうふうに転ぶのか。このラインナップでどれだけできるのか。分からずに始まったシーズンでした」

 近江谷がそう語るように多少の不安を抱いていたシーズンインだったが、初戦のどうぎんカーリングクラシック(札幌市)の3位入賞で幕を開けると、初秋のカナダ遠征では、オークビル(オンタリオ州)の2大会で優勝とベスト8、サスカチュワン(サスカチュワン州)では準優勝。オンタリオ州のウォータールーに戻ってベスト8と、5大会連続でクオリファイ(予選リーグ突破)を果たすなど、好スタートを切った。

「勝敗にかかわらず、なんでもトライする気持ちで、自分たちが『これをできるようにしよう』と決めた細かい一つ一つのことに集中していたら結果が少しずつ出てきて、パフォーマンスも安定してきた」(近江谷)

 さらに10月はストックホルム(スウェーデン)、バーゼル(スイス)でそれぞれベスト8、オーランド(フィンランド自治領)では準優勝と、欧州のアイスでも好成績を残すと、タイア2ながらグランドスラムのひとつである、カナダ・ノバスコシア州で開催されたツアーチャレンジに招待され、ファイナルまで駆け上がった。

 続くレッドディア(アルバータ州)で準優勝、ロイドミンスター(サスカチュワン州)でベスト8と結果を出し続け、再びグランドスラムのひとつ、コンセプション・ベイ・サウス(ニューファンドランド・ラブラドール州)で行われたナショナルに呼ばれた。

 2018年の最終戦となった年末の軽井沢国際(軽井沢町)の3位も数えると、グランドスラムを除けば、ツアー10大会に参戦し10/10、全てクオリファイを記録している。大会ごとにグレードはあるので他チームと単純に比較はできないが、これは誇れる数字だ。

 年が明けても1月にヨークトン(サスカチュワン州)で開催されたカナディアン・オープン招待(日本選手権の地区予選でもある北海道選手権に出場するために辞退)に加え、シーズンのクライマックスである世界ランキングの上位チームのみ出場できるツアー最高峰タイトル、プレーヤーズチャンピオンシップにも参加するなど、世界の勢力図に「Yoshimura」というニューフェイスが名を連ねた1年だったことは間違いない。

 ただ、それでも2月の日本選手権は3位と国内では勝ち切れず、ツアーチャレンジ以外のグランドスラムは2大会とも予選落ちと、世界のトップに肉薄できたかといえば、もう1ステージ届かなかったとも言える。

 何よりもそれを痛感しているのは選手自身だ。今季最終戦となったプレーヤーズチャンピオンシップを終えたメンバーはそれぞれ、振り返る。

 船山は「こんないい雰囲気の試合に出られて、世界のトップチームに挑戦できるのは財産」とした上で、表情を引き締めた。

「安定感はすごく出てきたんですけど、あと1歩、そこから上に行くっていうところで行き詰っている。上のレベルで戦うためにもっと必要なことをしっかりやっていけたら、もっと戦える」

 小野寺も同様に収穫と共に課題を挙げる。

「12チームしか出られない舞台に立てて幸せでした。(今季は)ほとんどの大会でクオリファイできて、グランドスラムにも呼ばれるようになって、そこで競ったり、勝てたりしたのは収穫です。チームとしては成長したシーズンでもあったんですけど、個人としては納得できるプレーやいい感覚っていうのがいまいち掴めないシーズンでもありました。もっと自分が良くなればチームが強くなることを感じたので、来シーズンに向けて見直してやっていきたい」

 船山が言う「上のレベル」で、小野寺が示す「見直し」とは何なのかと言えば、基本戦術だ。あるいは精度と言い換えることもできる。

 例えば今大会では、平昌五輪金メダルチームのスウェーデン代表チーム・ハッセルボリ(Anna HASSELBORG)と予選リーグで対戦したが、北海道銀行は常に追いかける展開を強いられた。

 ハッセルボリが採った戦術およびショットセレクションはいたってシンプルだ。後攻ではガードストーンの裏に強い自軍の石を送り、しっかり隠し切る。相手のハウス内の石を押しやりつつ、シューターをガードで守る位置にピンポイントで残す。

 逆に先攻では効果的にダブルガードを作用させハウスを狭くしフォース(先攻で相手に1点を取らせること)を強いる。ファーストドロー、カムアラウンド、ヒットロールといった各エンドで多用するショットでほとんどミスが見られなかった。

「基本ショットで差がついてしまった」(船山)

「難しいことはやっていない。それをしっかり決めてくる」(近江谷)

「きっちり決めていかないと勝てないのがわかった」(小野寺)

 彼女らが口にした上記の教訓は今季、世界トップとの互角の戦いを経験した男女トップチーム、コンサドーレ、中部電力、ロコ・ソラーレらのコメントに通じる部分がある。つまり世界で勝つための必須条件だ。

 エリアでなくポイントで石を置くこと。石半個ぶんのズレや開きを許さない、ランバックやダブルを狙わせないアングルを作ること。それに伴うラインコールやスイープも適切に遂行すること。もっともシンプルでもっとも難しい仕事とも言えるが、それを求めて来季以降、彼女らは挑戦を続けなければならない。

 吉村にはスキップとして迎えた新シーズンを総括してもらった。

「悩むところもありながら、話し合いながら、支え合いながら1年やってきた。厳しいショットでも決め切れる選手になりたいので、スキップとしてはまだ頼りないと自分では思っています。具体的にはウェイトコントロールと投げ。基本なんですけど、そこをトップのチームはしっかり読んでアイスにアジャストしてくる。そのアジャストする力をつけて、来年以降、高みを目指していきたい」

 最後に今季の採点を促す。

「点数化ですか? そうですね、6割くらいですかね。やっぱりトップのチームと戦うと勝ち切れない。それではオリンピックでメダルは狙えないので」

 吉村が口に出した2020年北京五輪レースは、国内選考も、日本としての枠も、来季以降の成績に応じたものになる。そこに絡んでいくには国内外のライバル相手に勝ち切らないといけない。

 ツアーに関しては躍進と評しても差し支えないシーズンを送った北海道銀行フォルティウス。国内外で戦った公式戦の数はゆうに100を超える。これはもちろん国内チームトップの試合数だ。

 経験は積んだ。悔しさも味わった。強化の方向も見えた。

 チーム名「フォルティウス(FORTIUS)」は、ラテン語で「より強く」を意味する。より強く、安定感のその先へ。あとは進むだけだ。その道は必ず五輪の舞台まで伸びているはずだ。