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徳島、栃木を下し3度目の日本独立リーグ制覇!エース竹内裕太『野球人生の行き先』

高田博史スポーツライター
最終第5戦で日本一を決めた徳島インディゴソックス(写真/高田博史)

2019.10.15 日本独立リーググランドチャンピオンシップ第5戦

徳島インディゴソックス 4‐3 栃木ゴールデンブレーブス

栃木 300 000 000|3 H5、E2

徳島 110 020 00X|4 H10、E1

※徳島が2年ぶり3回目の独立リーグ日本一に

勝 竹内 2勝

敗 秋山 1敗

バッテリー

栃木 前田、秋山、比嘉、若松、橋詰、金本 ‐ 秋庭、橋本、

徳島 安藝、竹内 ‐ 横溝

 15日、2勝2敗のタイとなった日本独立リーグ『2019グランドチャンピオンシップ』は、決戦の第5戦を迎えた。

 初回、徳島インディゴソックスの先発、安藝龍馬(板野高)をとらえた栃木ゴールデンブレーブスは、五番・飯原誉士(元ヤクルト)の中犠飛、六番・原田元気(平成国際大)の左中間を破る2点適時二塁打により3点を先取する。

 二死二塁のピンチに徳島・牧野塁監督(元オリックスほか)は、七番・佐藤翔(SUNホールディングス)カウント1-0の場面で第3戦に先発したエース、竹内裕太(鶴見大)を送る。竹内は佐藤を三振に切って獲り、後続を断った。

 徳島は1回裏、3連投の栃木先発、前田大佳(筑波大)から一死満塁とすると、五番・横溝拓哉(信越硬式野球クラブ)の二ゴロ併殺崩れの間に1点を返す。2回裏にも八番・崎ブライアン(豪州・ウェネルージャイアンツ)、九番・友居京太郎(徳島大)の連続二塁打により2対3と1点差に詰め寄った。

 5回裏、栃木は前田に代えて二番手、秋山陸(國學院大學栃木高)を送る。だが、第3戦で3回無失点に抑えられた秋山に対し、徳島打線が一気に襲い掛かる。2本の安打と犠飛により一死一、三塁としたあと、五番・横溝の二ゴロの間に三塁走者が還り同点に。さらに六番・吉田翼(山岸ロジスターズ)の左翼後方への飛球を左翼手が落球(記録は二塁打)、この回2点を奪い4対3と逆転に成功した。

 ロングリリーフを続ける竹内は、散発2安打、三塁を踏ませない好投で栃木に反撃のチャンスを与えない。最後の打者、代打・松井永吉(尽誠学園)を左飛に打ち取ると、両腕でガッツポーズを作った竹内を中心に歓喜の瞬間が訪れた。

 4対3で勝利した徳島が対戦成績を3勝2敗とし、2年ぶり3回目となる独立リーグ日本一の座に就いた。GC敢闘賞に栃木から3試合に登板し、1勝を挙げた若松駿太(元中日)が。最優秀選手には徳島から、同じく3試合に登板し、2勝を挙げた竹内裕太が選ばれている。

『野球人生の行き先』

 徳島インディゴソックス・竹内裕太(鶴見大)が中1日でマウンドに登るのは、プレーオフに入ってからこれで2回目である。年間総合優勝を争った愛媛マンダリンパイレーツとのチャンピオンシップ(CS)で、完投勝利を挙げた第1戦(9月21日、JAバンク徳島スタジアム)に続き、CS第3戦(9月23日、JAバンク徳島スタジアム)でも3回からロングリリーフし、9回まで投げ切った。2勝を挙げ、総合優勝の立役者となっている。

 中1日でも「いける!」と思って臨んだCSと、中1日で再び栃木ゴールデンブレーブスと対するグランドチャンピオンシップ(GC)第5戦とは、まったく違う緊張感があった。

「今回に関しては栃木でやられているので、そのときのイメージもありましたし。こっち帰って来て、オロナミンC(鳴門・オロナミンC球場)でもプレッシャーがすごくて、あっちの。対峙してて怖かったですし」

 栃木で行われたGC第1戦(10月5日、小山市総合運動公園野球場)で、試合には勝ったものの6失点(自責4)している。徳島でのGC第3戦(10月13日、鳴門・オロナミンC球場)でも3失点を喫し、序盤のリードを守ることができなかった。

 栃木打線の圧力に圧倒されそうになる。気持ちで負けてしまえば、一発で試合の流れをもっていかれてしまう。技術や球威じゃない。気持ちで勝つしかないと考えていた。

「負けるわけにはいかないので、見せかけでも気持ちを出していくというか。ホントに自分の心のなかでは『うわ、怖ぇなあ』という場面もいっぱいありましたけど、それを見せるわけにもいかないし。ピンチで出て来るバッターそれぞれが怖くて。普段やってない相手ですし、どういうふうに抑えればいい? ってのが分からない状態なので」

 栃木で打たれた理由の1つに、ボールの違いがある。すでに周知の事実となっているが、アイランドリーグの試合球に比べてBCリーグのボールは飛ぶ。もっと正確に言うなら、NPBの試合球に近い『飛び感』があるBCリーグの試合球に比べて、アイランドリーグの試合球は飛ばなさすぎる。これは以前から言われ続けてきたことであり、すでにGC開幕前から両球団が考慮していた部分だった。

 1勝1敗で栃木ラウンドを終えたあと、徳島・牧野塁監督(元オリックスほか)は、BCリーグの打球が飛びすぎるあまりに竹内がリズムを崩し、本来の投球ができなかったことを告白している。

 竹内も「栃木で打たれたのはボールのせいではない」と言いながらも、いつものボールに戻ったことで竹内らしさを取り戻していた。

「そういう『飛ぶ』っていう意識があると、ホントに『高目に投げちゃいけない』とか『甘くなっちゃいけない』っていうアタマが働くので、すごく余計に疲れますし。でも、こっちに帰って来てからは、やっぱりボール(打球)が飛ばないってこともありますし、(自分の)ボールもこっち帰って来てからのほうが全然行ってたので、そこはちょっと自信もって投げられたかなと思います」

優勝決定の瞬間、マウンドで竹内が叫ぶ(捕手・横溝拓哉、写真/高田博史)
優勝決定の瞬間、マウンドで竹内が叫ぶ(捕手・横溝拓哉、写真/高田博史)

 GC第3戦で投げた7回125球に続き、第5戦では8回3分の1を投げて無失点、114球を投げて日本一の歓喜に酔いしれた。

「チームのみんなに助けられた試合でした。でも、自分がやったっていうよりは、ホントにすごくいい場面で守ってくれたりもしました。助けられた(プレーオフの)5試合だったと思いますし、助けられた1年だったなあと思います」

 152キロをたたき出し、自身の最速記録を更新したGC第3戦終了後「人生最後のピッチングでしたから」と満足そうに言い残して球場を出て行った。あの試合が『人生最後のピッチング』にはならなかったし、絶対にここで野球人生を終らせたくはないはずだ。

「でも、ホントにこういう形で最後、自分がいいピッチングして日本一になれたっていうのは、ホントにいい締めくくりだなって。自分の野球人生においても……まだ分からないですけど」

 2年間、インディゴソックスのユニフォームで投げた試合はすべて終わった。あす17日、ドラフト会議の結果を待って、野球人生の行き先が決まる。

日本独立リーグ 2019グランドチャンピオンシップ結果

 第1戦 栃木 ●6-7〇徳島(延長10回/栃木・小山運動公園野球場)

 第2戦 栃木 〇4x-3●徳島(延長11回/栃木・小山運動公園野球場)

 第3戦 徳島 〇5-3●栃木(徳島/鳴門・オロナミンC球場)

 第4戦 徳島 ●4-5〇栃木(徳島/鳴門・オロナミンC球場)

 第5戦 徳島 〇4-3●栃木(徳島/JAバンク徳島スタジアム)

 ※徳島が3勝2敗で独立リーグ日本一

スポーツライター

たかた・ひろふみ/1969年生まれ。徳島県出身。プロ野球独立リーグ、高校野球、ソフトボールなどを取材しながら専門誌、スポーツ紙などに原稿を寄稿している。四国アイランドリーグplus は2005年の開幕年より現場にて取材。「現場取材がすべて」をモットーに四国内を駆け回っている。

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