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【日本独立リーグGC第1戦】「楽しいです、ほんと」群馬の前に初戦を落とした香川がつかんだ手応え

高田博史スポーツライター
試合前、両チームが記念撮影に並ぶ(写真/高田博史)

2018.10.7 四国アイランドリーグplus 2018 チャンピオンシップ第1戦

香川オリーブガイナーズ(四国リーグ王者) 2‐4 群馬ダイヤモンドペガサス(BCリーグ王者)【高松・レクザムスタジアム】

群馬 100 010 110|4 H10、E1

香川 010 100 000|2 H5、E0

勝 センテノ 1勝

S 荻野

敗 又吉 1敗

バッテリー

群馬 柿田、センテノ、荻野 ‐ 速水

香川 畝、石田、又吉、箱島、原田 ‐ 三好、岡本

本塁打

群馬 李1号ソロ(8回箱島)

香川 

 7日、独立リーグ日本一を争うグランドチャンピオンシップ2018(GC)が開幕した。四国アイランドリーグplus王者・香川オリーブガイナーズのホーム、高松・レクザムスタジアムに、ルートインBCリーグ王者、群馬ダイヤモンドペガサスを迎えている。1点を奪い合う好ゲームとなった。

 1回表、群馬は一番・青木颯(鶴見大)の中越え二塁打を足掛かりに、五番・富田光孝(立教大)の適時中前打で先制する。だが、香川も2回裏、併殺崩れの間に1点を返し、同点に追い付く。4回裏には無死一塁から香川の五番・中村道大郎(日体大)が左超え適時二塁打を放ち、香川が2対1と勝ち越しに成功した。しかし、リリーフしたセンテノ(レイズ/ベネズエラ)が後続を断ち切る。

 5回表、群馬は先頭の九番・鹿沼柊太(フェデックス)が右翼線に長打を放つと、快足を飛ばし一気に三塁を陥れる。二番・藤井一輝(平成国際大)の適時右前安打により、再び2対2の同点に追い付いた。

 7回表、群馬はこの回からマウンドに登った香川の三番手・又吉亮文(環太平洋大)をとらえ、先頭の九番・鹿沼が中越え二塁打を放つ。一死三塁として二番・藤田がきょう2打点目となる適時打を中前に放ち、3対2と勝ち越しに成功した。8回表には途中出場の七番・李福健(TOKYO METS)が左越え1号ソロを放ち、リードをさらに2点に広げた。

 センテノの前に無得点を続ける香川は、8回表無死一、二塁のチャンスも得点に結びつけることができない。9回裏をクローザー・荻野恭大(桐生西)がきっちりと3人で締め、4対2で勝利した群馬が、GC第1戦に先勝している。

 第2戦は8日、香川のホーム・レクザムBP丸亀で行われる。

「楽しいです、ほんと」

 香川は4回裏に2点目を挙げたのを最後に、9回まで無得点に終わった。群馬の二番手・センテノ(レイズ/ベネズエラ)の好投の前に、三塁を踏ませてもらえなかった。

 群馬・平野謙監督(元中日ほか)が「お互いにいいゲームだったと思います。きょうは、ウチがたまたま勝たせてもらったけど、あすはどうなるか分からない」と話す。

「ウチのセンテノが二番手でいいボールを投げてくれたから、見ていて楽しかったし。ボコボコ打ってもね。ピッチャーがしっかり放ってくれないとゲームにならないから」

5回無失点の好リリーフを見せた群馬・センテノ(写真/高田博史)
5回無失点の好リリーフを見せた群馬・センテノ(写真/高田博史)

 群馬先発の柿田兼章(拓殖大)もセンテノも、投げた球種のほとんどがストレートだった。柿田が制球を乱したことをきっかけに香川が2点を奪ったが、力で押しまくるセンテノには沈黙させられている。

 6回裏、前の5回から続く三者連続三振のあと、遊撃手の左をライナーで抜ける左前安打を放ったのは六番・クリス(稲垣将幸/中央学院大)だった。9球目、センテノが投げた147キロのストレートをとらえている。

「全部、真っすぐやったっス。低目は垂れるというか、ちょっとクセがある感じ。(指に)引っ掛けて落ちる感じがあったんですけど」

 ノーワインドアップからボールをリリースするまでの、一連のモーションのなかに変化をつけていた。クイックを入れる。足を上げるタイミングを逆にワンテンポずらすなど、細かくタイミングを変えている。打者は見ている以上に打ちにくかったはずだ。

 150キロ前後のストレートで押して来るセンテノに対し、クリスも普段の打撃フォームを変えて対応していた。

「いつも通り、大きいテークバックじゃ打てないと思ったので。(左足を)ちょっと上げるだけで振る状態のスタンスにもっていって、バットを出すだけってイメージにしたら、とらえられました」

 左足を大きく上げてタイミングを取ることをやめた。普段は顔の前辺りに置くバットのグリップ位置も、初めから右肩の前辺りまで下げている。すると、うまく粘ることができ、とらえることができた。それがあのヒットだった。

6回裏二死、香川・クリスがセンテノのストレートを左前に弾き返した(写真/高田博史)
6回裏二死、香川・クリスがセンテノのストレートを左前に弾き返した(写真/高田博史)

 明らかにアイランドリーグの投手とはタイプが違う。ここまで大胆にストレートばかりを投げて来る投手は四国にはいない。相手打者の打撃を見ていて感じた部分があった。スタンスが広く、重心を低く構えている打者が多い。

「なんで向こうのバッターが、あんなスタンス広いのかなあ? って考えたときに、球が向こうは速いので。だからやってるんだろうなあと思って。向こうはストレート、ストレートで押して来る。(群馬の)選手に聞いたんですけど『やっぱり、こっちは真っすぐで勝負しないと、みたいな傾向があるんで』って言ってたんですよ」

 投手と対峙したときに、NPBのそれと近いものを感じたという。それに臆するのではなく、むしろプレーヤーとして燃えるものがある。

「正直、楽しかったです。むちゃくちゃ。ウチのリーグよりいいピッチャーが多かったので。どんな球投げるんだろう? とか。最後のピッチャー(三番手・荻野恭大)もいいスライダー投げてたので。あしたこれ、どうやって打とうかなあ? とか、楽しい部分もありましたね」

 右中間に2点目となる適時二塁打を放った五番・中村道大郎(日体大)も同じである。

「いいチームだとは思ったっスけど、150キロ投げるピッチャーがいたりとか。このチームに勝って終われれば、最後、僕たちも一皮むけるんじゃないか。いい相手だと思います。楽しかったです」

 ほぼ全員が2打席ほどセンテノと対戦することができた。これを次にどう生かすか。群馬ラウンドの勝負どころで再び対戦することになるだろう。そこで打ち勝つ。第2戦(8日)に先発が予定されているトーレス(元レイズほか/ベネズエラ)も、非常にいい投手だと聞いている。ワクワクする気持ちは、さらに高まる。

「楽しいです、ほんと。お客さんもたくさん入ってもらって。僕、8回ぐらいの守備のときに楽しくなってきちゃって!」

 観客のお見送りを終えたあとの香川のドレッシングルームには、シュンとしたような重たい空気はみじんも感じられなかった。

スポーツライター

たかた・ひろふみ/1969年生まれ。徳島県出身。プロ野球独立リーグ、高校野球、ソフトボールなどを取材しながら専門誌、スポーツ紙などに原稿を寄稿している。四国アイランドリーグplus は2005年の開幕年より現場にて取材。「現場取材がすべて」をモットーに四国内を駆け回っている。

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