【四国リーグCS第2戦】『22球、まったく覚えていない』又吉好投。香川、サヨナラ勝ちで総合優勝に王手

力投する香川・又吉亮文(環太平洋大)(写真/高田博史)

2018.9.23 四国アイランドリーグplus 2018 チャンピオンシップ第2戦

香川オリーブガイナーズ(前期優勝) 3x‐2 愛媛マンダリンパイレーツ(後期優勝)【レクザムBP丸亀】

愛媛 000 100 100|2 H8、E1

香川 000 000 012x|3 H10、E0

勝 又吉 1勝

敗 河津 1敗

バッテリー

愛媛 高下、クインティン、河津 ‐ 福田

香川 秀伍、又吉 ‐ 三好

本塁打

愛媛 

香川 

 23日、四国リーグの年間王者を決定するチャンピオンシップ(CS)第2戦は、舞台を高松からレクザムBP丸亀に移して行われた。

 前期王者・香川オリーブガイナーズの固い守備の前に初戦を落とし、1勝1敗のタイに持ち込みたい後期王者・愛媛マンダリンパイレーツは、左腕・高下貴生(福岡大)を先発マウンドに送る。高下は緩急とコーナーを突く投球で香川を翻弄(ほんろう)し、6回を無得点に封じ込めた。

 高下の好投に打線も勢いづく。4回表、一死一、三塁のチャンスに七番・大本聖也(関西国際大中退)がスタメン起用に応える中越え二塁打を放ち、先制する。7回表にも一番・新井勝也(新波)の中越え二塁打、三番・中西雄大(シティライト岡山)の右翼エンタイトルツーベースで追加点を挙げる。香川から2点を奪い、先発の秀伍(高島秀伍、セガサミー)を攻略した。

 香川はなおも二死二塁と続くピンチに、二番手・又吉亮文(環太平洋大)をマウンドに送る。三番・ヘイドーン(オランダ)を外角へのスライダーで空振り三振に獲り、この窮地を脱した。

 8回裏、香川が併殺崩れの間に1点を返し、1点差に迫る。又吉は8回、9回をきっちり3人ずつで終え、最終回の攻撃へとつなげる。

 9回裏、愛媛のクローザー・河津大樹(久留米工業大)を香川打線が捉えた。途中出場の六番・松井聖(中部大中退)が、きょう2本目となる右前安打で出塁する。七番・三好一生(駒澤大)のバントヒットのあと、八番・中村道大郎(日体大)が中前に運び、2対2の同点に。さらに九番・井戸川祐太(正則学園中退)のバントヒットで無死満塁となった。

 前進守備を敷いた愛媛内野陣は、二塁手・安野翔太(松山フェニックス)の攻守により香川に勝ち越しを許さない。しかし、二番・妹尾克哉(神戸国際大学附属)の打球は中前へのサヨナラ安打となり、香川が3対2で愛媛を下した。

 CS香川ラウンドを2勝で終え、年間優勝に王手を掛けて第3戦が行われる松山・坊っちゃんスタジアムへと乗り込む。

『22球、まったく覚えていない』

 香川に逆転サヨナラでの勝利を呼び込んだのは、7回表二死二塁からリリーフした又吉亮文(環太平洋大)の好投だった。打者7人をパーフェクトに封じ込めている。

「もちろん(流れを)作りに行くつもりで。でも、不安でしかなかったです」と話す。

 7回は三番・ヘイドーン(オランダ)を外角へのスライダーで空振り三振に獲り4球、8回は10球、9回もたった8球と、計22球で投げ終えている。

 だが、マウンドでの記憶が断片的にしか残っていない。

「気合いは入れてました。まったく覚えてない。僕のなかでは試合前のブルペンから調子が良くなくて。正直、苛立ちながら、いつも10球で終るブルペンを40球近く投げて。それで『行け!』って言われたときも、大丈夫なんかな? と思いながら行かせてもらって。ヘイドーンを切ったのはいいんですけど、全部スライダーでしたし。あそこも自分の一番自信のある真っすぐを投げてない。(7回表が)終わってから、またブルペンで投げて。まあまあかな? ぐらいの感じで行って。いいのかどうかはわかんないですけど。(8回からは)真っすぐで行きましたけど、それは自分の不安を払しょくするために、とりあえず腕振ろうってことだけ考えてたので。そこ以外は、ほぼほぼ覚えてない。ただ腕を振ったってぐらいで」

 だが、8回表二死から代打・肥後郁弥(旭川大)を迎えた場面ではストレートが走っていた。きょう最速の146キロで押しまくる。

「唯一覚えてるのは、2人切ったじゃないですか。2人でツーアウト獲ったので。3人で切れば、流れが来ると思って。(変化球で)かわして獲るよりも(ストレートで)押し込んだほうが、僕のなかでは流れに乗れるんじゃないか? って思ったのだけは覚えてます。そっからは全部、真っすぐでしたっけ? 思いっきり行ったので。三振獲りに行くことだけ考えて。覚えてるのは、三好さん(捕手・三好一生)のミットに投げることだけ」

 8回も三者凡退に封じ、9回もゼロで抑えればなんとかなるんじゃないか。そう思って最終回のマウンドに登った。抑えの原田宥希(滋賀・高島ベースボールクラブ)ではなく、ベンチは自分のことを買って、最終回も送り出してくれている。

 期待を裏切らないように。だが、ブルペンで球数を投げている分「まだボールが走るのか?」という不安はずっと付きまとっていた。試合後、球数は22球だったと聞いて「マジすか!」と驚いていた。

「ほんとに何も聞こえなかったんですよ。何も聞こえなくて」

 こんな経験は初めてだった。

 初戦を勝って迎えたCS第2戦、香川ラウンド最後の舞台に、スタンドには大勢の観客が詰めかけている。大学時代、神宮の大観衆のなかでうまく集中ができず、自分の投球ができなかったことがある。きょうはうまく自分の世界に入ることができた。

 故郷の沖縄から父・文彦さん、母・照美さんが応援に駆け付けてくれていた。高校、大学を含め、これまで両親が見に来てくれたときはいつもタイミングが合わず、まともに自分の投げる姿を見てもらったことがない。

ホームで連勝。香川が総合優勝に王手をかけた。サヨナラ勝ちに沸き上がる香川の選手たち(写真/高田博史)
ホームで連勝。香川が総合優勝に王手をかけた。サヨナラ勝ちに沸き上がる香川の選手たち(写真/高田博史)

 試合後のお見送り、父が一言「ナイスピッチング」と声を掛けてくれた。母は「良かったねえ。やっと見られた」と笑顔を見せてくれた。

「お兄(に)ぃ(中日・又吉克樹)は間がいいんですよ。見に行ったら絶対投げるんです。僕だけ、見に行っても絶対投げない。雨で流れたり……。やっと見せられました(笑)」

 兄にも劣らない見事な投球が呼び込んだものは、劇的な逆転サヨナラ勝ちと、年間総合優勝への王手である。