「あの大藏君か!」中日から育成1巡目指名の徳島インディゴソックス大藏、仮契約に合意

笑顔を見せる大藏(中央、右・中田部長、左・音スカウト)(写真/高田博史)

 5日、中日が育成枠1巡目で指名した大藏彰人投手(徳島インディゴソックス)への指名あいさつが、徳島市内で行われた。訪れた中田宗男スカウト部長、音重鎮スカウトを、南啓介徳島IS球団代表、養父鐵監督、大藏の3人が迎えている。

 指名あいさつの後、仮契約交渉が行われ、支度金200、参加報奨金300※で合意に至った。背番号は未定(※金額は推定、単位は万円)。

「あの大藏君か!」

 仮契約を終え、会見の席に着いた大藏彰人の表情に、いよいよこれから始まる――という決意が垣間見られた。

「お話させて頂いて、これからプロとしてやっていくんだなっていうのをすごく感じています。指名して頂いてからは不安しかなかったんですけど、これから実感がもっと湧いて来ると思います。これからはどういう選手になりたいか、どういう弱点があって、それをつぶしていかないといけないかを考えて、プロで活躍するために練習をやっていかないといけないなと思っています」

 同席した音重鎮スカウトは会見で「言葉は悪いんですけど、ノーマークだった」と話す。香川オリーブガイナーズと年間優勝を争っていたチャンピオンシップ第2戦(9月24日、JAバンク徳島スタジアム)に、ほかの投手を視察に訪れ、大藏の球質の良さに見入った。

 試合後、養父鐵監督、南啓介球団代表からどういう選手であるのかを聞き、中田宗男スカウト部長に「見て欲しい」と進言している。

「あの大藏君か! 大垣西の子やろ!」

 連絡を受け、すぐにピン! と来たと言う。高校、大学時代を通じて、素材の良さを感じていた投手だった。だが、徳島ISにいたことまでは知らなかった。

ドラフト12日前の10月14日、GC第3戦。この日の好投が中日を動かした(写真/高田博史)
ドラフト12日前の10月14日、GC第3戦。この日の好投が中日を動かした(写真/高田博史)

 視察に訪れたのはグランドチャンピオンシップ第3戦(10月14日、JAバンク徳島スタジアム)最後の登板となった試合で、獲得を即断している。

 8個の三振を奪って完封勝ちしたこともそうだが、中田部長の目を引いたのは、下半身の体重移動がうまく使えるようになったことだった。

「一番ピッチャーに大事な(体重の)入れ替えができるようになった。まだムラがあるんですけど、できたときの球の角度と、しっかり指にかかったときに、アウトローに一級品の球がくる。その精度がまだまだなんですけど、その分、上積みが期待できる。やっと、そういう感覚ができだしたのかな、というのが素直な感想ですね。球速もまだまだ上がる」

「ここの選手は、確実に成長できている」

 昨年、徳島ISからは木下雄介が育成枠で指名を受けている。今年、育成選手ながらファームで猛アピールを続けていると聞く。木下と大藏との共通点は、ブランクがあることだ。共に野球から離れた期間、野球を諦めて別の仕事に就いた、就こうとしていた期間がある。

「やっとブランクを克服して、次のステップに大きく踏み出そうとしている。そこが2人の共通点。だから、まだまだ無限の可能性がある。まだまだもっと良くなる。それを見越して獲ったということですね」

 シーズン最終盤のプレーオフに、中日だけが大藏を見ていた。もちろん、そこでプロのスカウトをうならせるだけのパフォーマンスを発揮したことは言うまでもない。調査書が送られて来たのは中日1球団のみである。養父監督が言う。

「愛知出身でしょ。高校時代から見てくれてたっていう縁があった。来年になったら、ほかのチームにピックアップされるだろうから、その前に獲った。体を鍛えさせれば面白いかなと思いますね」

 中日には又吉克樹(元香川OG、中日14年~)以降、亀澤恭平(元香川OG、ソフトバンク12年育成~、中日15年~)ドリュー・ネイラー(元香川OG、中日15~16年)まで含めれば、過去6人がアイランドリーグから入団を果たしている。徳島ISからは山本雅士(15年~17年育成~)吉田嵩(16年育成~)木下雄介(17年育成~)と、4年連続での指名となる。

会見に応える中日・中田宗男部長(左)と音重鎮スカウト(右)(写真/高田博史)
会見に応える中日・中田宗男部長(左)と音重鎮スカウト(右)(写真/高田博史)

 日本代表に名を連ねるまでになった又吉をはじめ、先輩たちの野球に対する真摯な姿が、のちの指名に好影響を与えていることは間違いない。中田部長の感じている確信がある。

「確実に全員、成長している。それが一番大きな要因です。このリーグの選手は、野球に対する本当のハングリーさを持っているし、ブレずにしっかり自分のことができる。野球選手って、力を出せずに終わることがほとんどなんです。ここの選手はみんな、確実に成長できている」

 ブランクは決してマイナスではなく、もう一度、野球に全身全霊で立ち向かうために必要な時間だった。それを超えていま、さらに上の世界に身を置き、戦っている。アイランドリーグが、高い意識を持った選手を育てる場所になり得ている。

「一番大事な野球をする喜びを、肌で感じているなと我々も感じることがある。いろんな事情があって、いままでうまくできなかった。それをやっと本腰を入れて野球をやりたい、野球がやれている喜びというかね。一所懸命さが感じられる。それが一番大きいんじゃないですか」

 スカウトが「見てみたい」と足を運んでくれるのには、そういう理由がある。次は大藏が大きく羽ばたく番である。