【四国リーグ】苦戦を続ける王者・愛媛、勝利よりもドラフト指名を求めて戦う葛藤のなか、選手たちは――

14日、2連勝のあとスタンドに深々と頭を下げる愛媛の選手たち(写真/高田博史)

苦しい戦いを続ける愛媛マンダリンパイレーツだが、新居浜に場所を移して行われた13日の対徳島インディゴソックス戦、14日の対高知ファイティングドッグス戦で2連勝を挙げた。

13日の対徳島前期7回戦では、先発の高下貴生(福岡大)が8回を投げ1失点と好投する。打線も三番・ポロ(元楽天/ドミニカ共和国)の2試合連続となる2号2ランを含む4安打など17安打と爆発し、8対2で勝利した。

14日の対高知前期6回戦でも打線が爆発する。三番・ポロが左翼ポール際へ3試合連続の3号2ランをたたき込めば、五番・古川敬也(立命館大)も2号3ランを放つなど、大量13安打を放った。先発・四戸洋明(愛媛MP)は6回表、四番・マニー(元レッドソックスほか)にバックスクリーンへの2号ソロを浴びるが、7回を2失点で乗り切った。8回からリリーフした正田樹(元ヤクルトほか)が後続を断ち、8対2で高知を下している。

「このキツいなかでも試合でできなきゃ、上へは行けない」

借金「1」で4月を終えた愛媛マンダリンパイレーツだったが、5月に入り、いきなり3連敗を喫した。7日の対ソフトバンク戦(今治)から再び連敗が続き、4連敗と白星が遠い。

ファンのフラストレーションが溜まるのも分かる。負け方が良くない。

対徳島前期5回戦(9日、西条ひうち)で19安打を浴び、2対13と大敗した。続く対香川前期8回戦(11日、西条ひうち)で再び19安打を許し、3対15と一方的なゲームになってしまっている。12日を終え、借金は「7」にまで膨れ上がっていた。

だが、場所を新居浜に移したところで流れが変わる。上位を走る徳島、高知に連勝した。しかも2試合で30安打、計17点を挙げての快勝である。

最悪の状況から、なぜ急に好調に転じられたのか。河原純一監督(元巨人ほか)に理由を聞いた。

「やっぱり先発ピッチャーが、ある程度しっかり入ってくれればね。この前の大量失点のときは、先発が早い回に獲られてしまってるので。野手も正直しんどいと思いますよ、ああいう展開になると。はっきり言っちゃうと、ただそれだけなんですよ。もちろん、守りのミスとかもあるのかもしれないけど。ある程度、こういうふうに先発ピッチャーが形を作ってくれればね」

この2連勝は、先発した高下貴生(福岡大)、四戸洋明(国士館高)がしっかりゲームを作ってくれたことが大きい。監督が挙げたポイントはそこにあった。

噴出したファンの不満

新居浜での試合後、野手がランニングを続ける
新居浜での試合後、野手がランニングを続ける

連敗が止まった13日、新居浜での試合後、ユニフォームを脱いでアンダーシャツ姿になり、ランニングシューズに履き替えた野手たちが、右翼の芝生へと集まっていた。

松下智トレーナーがランニングメニューを伝える。試合に出た選手は30メートルダッシュ×10本。復路は早めのジョグで。試合に出ていない選手と練習生は、さらにプラス5本がノルマとして課された。

「クールダウン」ではなく「ランニング」である。「たとえ試合が続いても、練習量は落とさない。『調整』などいらない。練習量を抑えて試合に専念するというスタイルは考えていない」

今年1月6日、河原監督は監督就任会見で、そう明言した。練習ができない選手は試合に出さない。投手であれば、走ることができなければ試合では使わない。4月5日、JABA四国大会への出場を前に10人が練習生落ちした理由は、その辺りが関係したと聞く(四国大会へは練習生も出場可能)。選手間の競争をあおる部分もあったのではないか。

一昨年に初の独立リーグ日本一、2年連続でリーグ優勝を果たしながら、ドラフト指名にはつながらなかった。今年はまず、選手育成に重点を置く。さらに育成指名ではなく、ドラフト指名を目標に掲げる。NPBに選手を送り込むことが、愛媛県民の喜びにつながるのだと信じ、今シーズンに挑む。

これらはすべて、先の監督就任会見において、河原監督、薬師神績球団代表らが述べたことである。

だが、開幕から20試合を消化する頃から、ファンの不満がいたるところで噴出した。なぜ、勝てないのか。なぜ、苦しい状況でほかの投手を使わないのか。なぜ、負けた理由を首脳陣が説明しないのか。あるファンからは「『初めて見に来たが、試合が面白くない。もう見に来ない』と言って、席を立った観客がいた」と聞いた。

極論を言えば、勝つために戦っていないのだと思う。もちろんチームとして勝利を望んでいないわけではない。だが、選手の育成を最優先するうえで、経験させることも必要だ。いくら打たれようが、投手には任せたイニングを投げ切ってもらう。それもまた、成長に必要な経験値である。納得のいくパフォーマンスができなかったのなら、練習でできるようにしなければいけない。その繰り返しだ。

1つの試合の結果に一喜一憂するべきではない――。河原監督は、そう考えている。

しかし、独立リーグとはいえプロ野球である。お客さんあってのアイランドリーグであり、マンダリンパイレーツであることは言うまでもない。ファンは負け試合を観るためにお金を払っているわけではない。3連覇が懸かった大きなチャンスの年でもある。だから、フラストレーションが溜まる。スタジアムから足が遠のく。

「そのために……っていうのもありますね」

左翼スタンドに2号ソロを放ちダイヤモンドを周る四ツ谷良輔(深谷商)
左翼スタンドに2号ソロを放ちダイヤモンドを周る四ツ谷良輔(深谷商)

5試合ぶりの勝利の後、ランニングを終えた主将・四ツ谷良輔(深谷商)と話をした。

「NPBに行くためには……って感じですよ、ホントに。最初から言ってましたから。試合だから調整して、とかじゃなくて。でもやっぱ、勝ってこそファンは喜んでくれますもんね」

試合に勝とうが、敗れようが、練習量は変わらない。練習でできないことは、試合でできない。それも分かっている。「体重が10キロ落ちた」と、ある新入団選手の父兄から聞いた。

四ツ谷が言葉を続ける。

「練習はガンガンやってます。いままでよりランニングとかも多いし。そういう部分で高下(貴生/福岡大)とかはよくやってると思います。あれだけランニングとかもしてますし。結果残してるし。どの選手もやっぱ、このなかで結果残して行くしかないと思うんです、いまは。河原さんは『このキツいなかでも試合でできなきゃ、上へは行けない』って考えがあると思うので」

そういう四ツ谷自身、結果を出している。

14日終了時、打率・372を残して堂々、首位打者の位置に立った。ポロ(元楽天/ドミニカ共和国)は3試合連続で本塁打を放ち、右翼手・古川敬也(立命館大)もコンディションが万全ではないなか、打率・341(6位)と奮闘している。4月まで「打撃十傑」に1人もいなかった愛媛の打者の名前が、打率トップ10に食い込んできている。

これまでリーグ優勝、独立リーグ日本一を目指して戦ってきた愛媛は、大きく目標の矛先をドラフト指名へと変えた。選手たちの目標も当然、そこである。

いま、ここで結果を残さないと、その可能性がなくなる。年齢という抗えないリミットが迫っている。四ツ谷も今年6年目、来月で24歳になる。

「でもまあ、僕らが練習いくらキツいキツいって言っても、きょうとか、勝ったらファンの人、喜んでくれるじゃないですか。……ってなったら、やっぱり練習は頑張れます。僕は。ファンの人が喜んでくれる。そのために……っていうのもありますね」

15日の対徳島前期8回戦(JAアグリあなん)に敗れ、3連勝はならなかった。24試合を終え、8勝14敗2分けと最下位に沈む。前期は残り10試合である。

勝てないから応援しない、試合も観に行かない。それはファンの自由だ。だが、昨年までとは異なる状況でハードに練習を続け、連戦を戦い、なんとかドラフト指名を勝ち取ろうともがき続けている選手たちが、そこにはいる。

ファンに喜んでもらうために自分を奮い立たせようとする、四ツ谷のような選手もいる。