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「観光都市ではない」京都がまた勘違いをし始めた

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

2019年に京都市長自らが先頭に立ち「観光都市ではない」と非・観光地宣言をしたことでおなじみの京都にて、何やら意味不明のキャンペーンが始まったようです。以下、トラベルボイスからの転載。

観光地づくり意識の普及目指す自販機、ダイドードリンコらが設置、京都市内で観光客と地域住民の関係構築に向け

https://www.travelvoice.jp/20211130-150147

飲料事業のダイドードリンコは、京都市の一般社団法人CHIE-NO-WAと共同で、「ツーリストシップ普及支援自動販売機」の設置を開始した。観光客と地域住民が寄り添いあい、より良い観光地を作る意識を普及する取り組み。

自動販売機を設置したのは、祇園町と錦市場の2カ所。飲料のほか、ツーリストシップの意思表示とするブレスレットを販売する。祇園町の販売機では、金銭投入時や商品の搬出時には「ツーリストシップの歌」を再生するなど、利用者に観光地の文化を尊重し、相互に敬意を払う気持ちを醸成することを期待する。

2019年までは何もしなくとも観光客はくるものとイキり散らかし、観光ヘイトを振りまきまくり、挙句の果てに「観光都市ではない」宣言まで飛び出した京都ですが、その後のコロナ禍によって1年半に渡る観光不況に喘ぎました。今年7月には観光関係者や地域行政などが集まり、「反省会」なんかも行われていたハズなのですが、あれはどこに行ったのでしょうかね?以下京都新聞からの転載。

京都・嵐山のごみ「インバウンドが悪いとは言えない」 関係者ら現状と取り組み議論

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/599332

嵐電嵐山駅エリアマネジャーで地元の清掃活動にも参加してきた長井喜美さんは、コロナ流行前後でのごみの変化について紹介した。インバウンド(訪日外国人)の激減後はごみの量も減ったが、「コロナ後も落ちている場所は変わっていない。一概にインバウンドが悪いとは言えないのではないか」と報告。

上記のシンポジウムでは、コロナ禍で観光客が減ったハズの京都・嵐山において依然としてゴミが散乱している現状において「コロナ後も落ちている場所は変わっていない。一概にインバウンドが悪いとは言えないのではないか」との地域のゴミ清掃ボランティアからの報告もあったはずですが、冒頭でご紹介した京都の新たなる観光キャンペーンでは「ツーリストシップ」などとして、ゴミ問題をまた観光客のせいにするメッセージが発されているなどというのは、いかにも「京都人らしい」言えばそれまでなのでしょうか。

そもそも、上記のキャンペーン、「観光客と地域住民が寄り添いあい、より良い観光地を作る意識を普及」だの「利用者に観光地の文化を尊重し、相互に敬意を払う気持ちを醸成することを期待」だのと言っていますが、弊社が今月実施した「観光に対する住民意識調査」では大阪、京都、奈良の3地域に居住する住民の中で、京都人が最も「観光客は迷惑」と考えており、また「訪日外国人観光客の受け入れに消極的」で「行政は観光振興に予算を使うべきではない」と考えている事がわかりました。

観光に対する住民意識調査:以下は「はい」と答えた比率

回収期間:2021年11月12日~13日

サンプル数:大阪、京都、奈良の居住者各100名ずつ、計300人 

調査手法:インターネット調査パネルより無作為抽出

対して、同じく観光で地域経済が成り立っている奈良県居住者は、大阪、京都、奈良の三地域内では最も観光客を歓迎しており、外国人観光客の受け入れにも積極的であり、行政はもっと積極的に観光振興に予算をさくべきだとしている。私が上記調査の詳細を発表した動画内で「観光客は京都ではなく奈良に行くべきだ」と主張したのは当然のこと。同じ観光に行くのなら、文字通り「観光客と地域住民が寄り添いあい、より良い観光地を作る意識」のある地域に観光に行った方が、地域住民も観光客も当然のように幸せであるからであります。

当該調査の詳細にご興味のある方は以下動画をご参照いただければ幸いです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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