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二転三転、観光庁のGoTo施策がガッカリ過ぎる件

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:ロイター/アフロ)

もうね、ガッカリですよ。以下、10月24日のNHKの報道から転載。

「合宿免許」来月以降Go Toトラベルの対象外に 観光庁正式発表

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201024/k10012678611000.html

観光需要の喚起策「Go Toトラベル」で、観光庁は運転免許の合宿ツアーを来月以降、割り引きなどの対象から除外することを正式に発表しました。「Go Toトラベル」の対象から除外されるのは、自動車などの運転免許を合宿形式で取得するツアーです。来月1日以降に申し込みされる分から対象外となります。

いわゆる免許合宿に関して、観光庁は「代金の大部分を宿泊ではなく免許講習が占めるものが見られることや、国家資格の運転免許などを取得することが目的で、旅行需要を喚起するという趣旨に沿ったものとは言い難い」などと説明していますが、ここで10月11日の西日本新聞の報道を見てみましょう。

「GoTo合宿免許」あり? 「企業努力だ」「税金なのに不公平」

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/653245/

事業を所管する観光庁は「問題ない」との姿勢。割引は旅行商品全体を対象としており、合宿免許の講習料もその一部と見なされるという。合宿免許を行う自動車学校は地方に多く、「消費喚起も期待できる」と担当者。

この報道から13日の間で何があったのか知りませんが、上記報道内で「合宿免許を行う自動車学校は地方に多く、消費喚起も期待できる」と胸を張っていた担当者は、早く全国民に向かって謝罪して下さい。

…と冗談はさておき、正直申し上げると観光庁がなぜ急に方針を一転するのかが全く理解できないというか、本当のところは観光庁の担当者のいう「合宿免許を行う自動車学校は地方に多く、消費喚起も期待できる」は正解なのですよ。

自動車学校に限らず、何かしらの資格の取得や技能の習得を目的として行う観光というのは、いわゆる「スタディツーリズム」と呼ばれる立派な観光のいち形態であり、その資格の取得や技能の習得の為に支払う講習料まで含めて観光消費として扱われるのが一般的。例えば、自然学習や農業体験をするツアーや、スキーやスノボの技能取得を目的とした雪山合宿などもこれにあたります。

観光庁はこれをGoToキャンペーンの主旨に合わないなどと言っていますが、スタディツーリズムの業者であったって一連のコロナ禍で大きな被害を受けたのは他の観光業者と変わらないですし、他の観光とそこにどんな違いがあるのかが意味が判らない。むしろ、周遊型観光ではない新しい滞在型観光のいち形態として、我が国で育成をして行かなければならないジャンルの観光であると言えます。

まあ、そもそも「消費喚起も期待できる」と容認していたものを、2週間足らずで一転するというのは、要は世のの批判に耐えられなかったということなのでしょうが、そこまで含めて今回の観光庁のGoTo施策はガッカリ以外のナニモノでもない。ほんと残念ですわ。

今回、GoToキャンペーンから免許合宿業者を排除した観光庁が今後、どの面下げてスタディツーリズムを振興するつもりなのかと思いますし、また今回の「GoTo外し」に関しては自動車運転免許以外を目的とした合宿業者も対象から外さなければ不公平となる。代表的なところでは車以外にも船舶免許の取得合宿なんかも世の中には存在していますし、沖縄あたりではスキューバーダイビングのライセンスを3泊くらいで取得できるツアーなんかも存在します。これらも含めて、ゴッソリとキャンペーンの対象から外して頂くよう観光庁には宜しくお願いします。

返す返す観光庁には毎度失望ばかりでありますが、ホントがっかり組織だなと改めて感じた次第であります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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