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「カジノ」が再び次の総選挙の争点へ

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

時事通信が以下の様な報道を行っております。

枝野氏、「菅自民」との対決前面 再生アピール、問われる手腕

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091001237&g=pol

記者会見では、菅氏が唱える社会像「自助・共助・公助」を念頭に、「自助や過度な自己責任ではなく支え合う社会をつくる」と語った。9日にはカジノを含む統合型リゾート(IR)を推進する菅氏の地元横浜市を訪れ、「対立軸の象徴がカジノだ」と断言。安倍政権下で問題視された「権力の私物化」も引き続き追及する考えだ。

重要な合流新党の代表戦の直前にワザワザ横浜のIR候補地を視察して「対立軸の象徴がカジノだ」などとコメントを残した枝野氏、これにはワケが御座いまして。。

現在、次期総理として本命視されている菅氏が地盤とする横浜市を含む神奈川県選挙区ですが、実は元々リベラル色の強い地盤でありまして、枝野氏が代表となることが決定した新・立憲民主党においても衆議院議員7名、参議院議員3名を抱える大票田となります。逆にいうと、ここの選挙区が菅氏の総理就任による「菅旋風」によって自民党に「喰われる」こととなると、合流新党として非常に厳しいこととなる。枝野氏はそれが判ってるが故の、このタイミングでの横浜IR候補地への視察であり、「対立軸の象徴がカジノだ」というコメントであるわけであります。

一方で現時点での横浜IR誘致の進捗状況を改めて成立すると、横浜市は「8月中の公表」とされていたIR導入に関連する実施方針の公表を延期。この実施方針の策定の前提となる国側の基本方針が未だ発表されない&その公示スケジュールも示されない中で、市としての動きも相当不透明な状況になっています。

対して、IR誘致の反対派はこの9月から市の計画に対する住民投票の実施を求める署名運動を開始。住民投票の直接請求に必要となる有効署名6万2500人分の獲得を目指しています。ただ、この反対派も実は内部分裂をしている状況でありまして、住民投票の実施を求める署名運動と並行する形で、この10月から別の主体がIR誘致に反対し現・市長のリコールを求める署名運動を開始することとなっており、混乱をきたしている状況でもあります。

既に現衆議院議員の任期は1年あまりとなっており、次期総選挙は少なくとも1年以内、予想よりも国民受けの良かった安倍総理の電撃辞任劇をうけて「すわ年内早期解散」なんて話も永田町では吹き荒れているワケですが、いずれにせよカジノはまた次期選挙において重要な争点となってしまう様です。国内関係者の皆様は、ふんどしを引き締めて参りましょう。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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