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横浜市でカジノ反対派が仲間割れ

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

いや、これは皮肉とかでも何でもなく「そこはちゃんと調整しようぜ」と思うわけですよ。以下、7月31日の日経新聞からの転載。

横浜市長リコールの団体 10月署名開始

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62129970R30C20A7L82000/

横浜市が目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に反対し、同市の林文子市長のリコール(解職請求)を目指す団体が31日、今後の活動について記者会見した。団体によるとリコールに必要な署名数は約50万人分で、住民投票を目指す別団体の活動とは連携せずに、10月に署名活動を始める方針だという。

私自身は当然カジノ推進派ではあるのですけども、一方で社会の中には「ギャンブル=悪」と考える人がいらっしゃるのも事実であり、この様な方々の声もまた社会的論議の中にキチっと反映されるのも「正しい社会の在り方」であると思うのです。ちなみに、私のYouTubeチャンネル側で先月行ったミニ調査では、社会のうちのおよそ25%が自分自身や親族/友人ですらない「アカの他人」がギャンブルする事すら許せないと考えているという調査結果が出ています。詳細は以下動画をご覧頂ければ幸い。

そういう意味では冒頭で申し上げた通り、これは皮肉でも何でもなく私自身はカジノ推進派の立場として、一方で横浜でカジノ反対の主張を展開している人達の活動を「全力で頑張って下さい」と思いながら見守っているわけですよ。

一方で、今回10月に開始されるとして報道された市長のリコール運動が非常に残念なのは、実は横浜市で展開されているもう一つのカジノ反対運動と完全に衝突してしまっていること。以下、8月1日の産経新聞からの転載。

横浜のIR署名、来月開始 賛否問う住民投票条例求め

https://www.sankei.com/region/news/200801/rgn2008010006-n1.html

横浜市が目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致に反対する市民グループ「カジノの是非を決める横浜市民の会」は、誘致の賛否を問う住民投票条例制定を求める署名活動を、9月4日に始めると発表した。4月に開始する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期していた。

ここまで読んだ方は「いや、その記事は冒頭で読みましたよ?」って思われるかもしれませんが、これ冒頭でご紹介した横浜の署名活動とは別の運動です。

・日経新聞(7月31日):横浜市が目指すカジノを含む統合型リゾートの誘致に反対する団体が、林文子市長のリコール(解職請求)を目指して10月から署名運動を開始。

・産経新聞(8月1日):横浜市が目指すカジノを含む統合型リゾート施設誘致に反対する市民グループが、誘致の賛否を問う住民投票条例制定を求める9月から署名活動を開始。

両者とも横浜市のIR誘致に反対して署名運動を始めるのは同じなのですが、前者は市長のリコールを目指して10月から活動開始、後者は誘致の賛否を問う住民投票の実施を求めて9月から活動開始。日経新聞の報によると前者の「市長のリコール運動」を目指す団体は、後者の「住民投票の実施」を目指す団体の活動に対して、「住民投票ではカジノをとめることはできない」として署名時期をズラすように要請してきたが、両者の合意には至らなかった、とのことですが…いやあ、そこは何とか調整しましょうよ。

前者の団体が主張していることは住民投票の実施に関して定めた地方自治法第74条に基づくもので、これは制度的な「事実」として有権者の50分の1以上の署名によって住民が求めることが出来るのは、あくまで住民投票を実施する為の条例制定「請求」であって、実はそれを議会が否決した場合には投票の実施は不可能となります。一方で、市長のリコール請求に関しては必要となる有効署名数さえ集まれば、議会の判断は関係なく選挙管理委員会によって住民投票の実施が可能となる。要は、どちらがより現実的に「横浜市のIR導入を止めることが出来るか」の手法論を巡って、横浜のカジノ反対派の主張が割れてしまっている、ということであります。

まあ、それぞれの運動を主導する団体に主張があるのでしょうから外野の者、ましてやカジノ推進派側にいる私が「どちらが良い/悪い」を主張するつもりはありませんが、ひとことだけ申し上げたいのは「そこは何とか調整しようよ…」ということ。

同じ地域で、ほぼ同じ時期に、同一テーマに関連する2つの異なる署名が走ったところで市民は混乱するだけ。もし、どちらの署名も有効となる筆数があつまらなければ、直接、それを口に出すかどうかは別として、互いに「アイツらのせいだ」にしかならんわけで、横浜市の反対運動がモヤモヤっとした不完全燃焼で終わらねば良いなあ、と心より思っているところであります。(※これは本当に皮肉でもなんでもなく)

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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