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バー営業者に怒り:営業自粛はガールズバーの「巻き込まれ」事故

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

以下、朝日新聞からの転載。

バーと言えばガールズバー?千葉県の文書、まさかの分類

https://www.asahi.com/articles/ASN5W74W2N5WUDCB00L.html

千葉県が休業要請の対象としていた「バー」について、県は接待を伴う「ガールズバー」などに限定しており、飲食だけのバーは対象外だったことが27日、わかった。朝日新聞の取材後、県は同日夜、「補足説明」としてホームページに「バー(接待を伴う施設に限る)」との表記を追加した。

県によると、4月14日に休業要請を出した当初から、対象は接待を伴うバーに限定していたという。一般的なバーは「飲食店」に分類し、そもそも要請の対象外だったとした。スナックなども、店員が客の隣に座る場合などは休業要請の対象になるが、対象外になる場合もあるという。県の担当者は「個別に問い合わせがあった場合は、説明していた」とした。

緊急事態宣言の最中、様々な業種が行政からの営業自粛を要請されていましたが、千葉県の発表によると4月14日当初より既に1カ月半にわたって休業要請を出していた「バー」営業は、実はガールズバーなどに限定したものだったとの訂正が入りました。県の担当者は「個別に問い合わせがあった場合は、説明していた」などと言い訳していますが、逆にいえば個別に問い合わせをせずに当初発表を見てこれまで営業自粛をしてきたガールズバー以外の多くのバー業者に対しては誤解を生じてきたワケで、最初から「バー(接待を伴う施設に限る)」の表記を行わなかった事の理由にはなりません。どう責任を取るつもりなんでしょう。

但し、実はこの千葉県による「あってはならない」間違いは、役所の単純なる「凡ミス」なのではありませんで、風営法上の非常に難しい論議をはらんでいるものです。詳細に関しては私のYouTubeチャンネル上で解説を行っていますが、簡単に申し上げると風営法上で飲食営業者が提供するものとされる「接待」と「接客」の定義の問題であります。

夜のサービス業に関する様々な規制を敷いている風営法では、接待と接客について以下の様に解釈され区別して運用が行われています。

接待:特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為

接客:お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為

(出所:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準)

酒類の提供と共に接待を提供する飲食店に関しては、風営法上は風営1号業種として許可取得の対象となり、様々な営業上の規制をうけることになるわけですが、世の中には実態としては「接待」を提供しているのにも関わらず、あくまで自らが提供しているのは「接客」であると主張をし、風俗営業許可を取得せずに営業を続けている飲食店というものが沢山存在しておりまして、その代表格が今回、論議に挙がっているガールズバーであったりします。詳細解説は以下動画をご覧頂ければ幸い。

要は千葉県がなぜ当初、自粛規制の対象として「バー(接待を伴う施設に限る)」という表現を使用することを躊躇したかというと、彼らが自粛対象としたいガールズバーという業態はそもそも「提供しているサービスは接待ではなく接客である」という主張をすることで風営法上、脱法的に営業を行っている業者なのであって、県が営業自粛要請の対象として「バー(接待を伴う施設に限る)」と記述をした場合、同様の主張でその要請をかわされてしまう可能性が高いから。

県としては自粛要請の対象として「バー(接待を伴う施設に限る)」と表記をすることで、ガールズバーに「要請の回避」をされてしまうくらいならば、いっそガールズバーともども一般のバー営業まで自粛要請の対象となる表現で広く「網をかける」事を選択した、という事であります。但し、その県の判断によって「巻き込まれ事故」の対象となり、1カ月半も自粛要請の対象かの様に扱われてきた一般のバー営業者にとってはたまったもんではありませんが。

緊急事態宣言下で全国の夜の繁華街に対して営業自粛要請が為された当初、この様なバーとガールズバーを混同させるような表現を使って自粛を呼び掛けて来た都道府県と言うのは実は千葉県だけではありませんで、全国で散見されたもの。例えば大阪においても同様の不満がバー営業者から噴出していたのが実情であります。以下、毎日新聞からの転載。

「居酒屋良くて、なぜバーは駄目」 大阪の飲食業、安堵と不安 休業要請リスト公表

https://mainichi.jp/articles/20200410/k00/00m/040/330000c

休止を要請される施設の中には、緊急事態宣言前から府が利用を控えるよう求めていたキャバレーやナイトクラブ、バーなどが入った。一方、居酒屋を含む飲食店には営業時間や酒類の提供時間に制限を設けつつ、休止は要請しないとした。大阪・キタの繁華街にあるバーの男性店員(33)は「居酒屋は良くてバーは駄目という根拠が分からない」と戸惑った。

千葉県をはじめとして、表記上の問題を認めた都道府県においては徐々にこの点に関して修正が始まって居るワケですが、この様な行政による「巻き込まれ事故」を受けた(もしくは未だに受けている)バー営業者の方々は改めて自治体に向けて声を挙げるべき。必要とされていない営業自粛を受けざるを得なかったことに、もっと怒りの声を挙げ、また既に市民に広まってしまった「誤解」をいち早く訂正する様に要請をすべきだと思います。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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