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TBS「パチンコは反社一歩手前」発言に謝罪

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

5月8日放送の「ひるおび」にて、レギュラーコメンテータの八代英輝弁護士が以下の様な発言をし、物議を醸しました。以下、スポーツ報知からの転載。

八代英輝弁護士、営業再開のパチンコ店に厳しい対応求める「脱法ギャンブルです。1件2件を摘発すべき」

https://news.yahoo.co.jp/articles/ae0515d29f228aeed8954c1483a4b09768290df9

8日放送のTBS系「ひるおび!」(月~金曜・前10時25分)で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、引き続き営業の自粛要請が続く中、一部のパチンコ店で営業再開され客が行列を作った事などを報じた。

「ですから警察も今までは黙認していた所もあるのかもしれませんけど、ここを天下り先とは考えず、これだけ公共性の高い要請に従ってくれないパチンコ店が少なからずあるという事は、ある意味、反社会的勢力の一歩手前ですよ。考え直した方がいいと思いますよ」と厳しい対応の必要性を訴えた。

この様なコメンテータの発言に対し、パチンコ業界団体である全日本遊技事業協同組合連合会はTBSに対して抗議を行い、5月21日付けで以下の様な謝罪を得たことが発表されました。

テレビ番組「ひるおび!」での八代英輝弁護士の発言について

https://twitter.com/CRA50159291/status/1264873991145021442

TBSテレビからは、同テレビ情報政策局情報第三部長名の5月21日付け書面にて、「三店方式は風適法の規制に沿うものであるとの見解も当然に存在し、またそのように読み取り得る政府答弁書も存在する中で、一方の見解に立った論評のみを放送したことは、公平性の観点から番組に至らない点があったものと考えております」とし、さらに「暴力団との何らかのつながりがあるかのように受け止められたとすれば、誠に遺憾であります。そのような誤解を招いたとすればお詫び申し上げます」「日頃より、暴力団員等による不当な要求や暴力的不法行為に対し、これに抗してさまざまな活動を展開しておられる貴会からのご指摘を真摯に受け止め、今後とも番組において共有してまいります。」

世にしばしばグレーゾーンと言われるパチンコの景品買取システムですが、2016年に国会より内閣に送付された質問主意書に対する回答で、風営法に即した営業が行われている限りにおいてそれらは刑法賭博罪にはあたらず適法なものであるとして政府が公式回答を行った事実があります。

そもそもこれら景品買取システムは1960年代に大阪で始まり、その後全国都道府県に広まったものでありますが、その導入経緯自体が実は業界からの暴力団排除を目的にしたものであります。当時、システムとして確立していなかったパチンコ景品の買取過程において、暴力団が介入し、それを大きな資金源としている事が問題となりました。これに対し、パチンコ業界側は暴力団が介入出来ない仕組みとして、現在の景品買取システムの原型を警察庁の協力の元で整備し、全国に広めていった。

一方で、暴力団側は自身の収入源を守ろうと営業妨害は元より放火や、銃弾の打ち込みなど違法な妨害行為を繰り返してきたワケで、パチンコ業界における景品買取システムの普及は、実態として業界が命がけで暴力団と戦ってきた歴史そのものであります。そういう意味で、冒頭の番組内で八代氏がコメントを行った「反社会的勢力の一歩手前」という表現は全く事実に基づかない論評であり、TBS側の謝罪は当然であると言えるでしょう。その辺の詳細に関しては以下のリンク先参照。

【参照】パチンコ法制解説 木曽崇の「大人の遊び」研究所(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=KYr3BVGc-KM&list=PLzI1i7LCt7wNLOEYTV7qOJFjH18FtBLsj

ということで、今後はイメージにだけよる批判ではなく、法的事実に基づく報道を心掛けて頂くよう、TBSのみならず広く一般に心から宜しくお願い申し上げます。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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