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黒川検事長の麻雀賭博問題、訓告処分は軽すぎるのではないか

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

流石にこれは酷いと思って筆を執ります。以下共同通信より転載。

黒川検事長が首相に辞表提出 訓告処分、賭けマージャン問題

https://news.yahoo.co.jp/articles/5102bcec2a1cfd486d079be74f88add5c1d7bc3b

森雅子法相は21日、賭けマージャンをしていた東京高検の黒川弘務検事長(63)が安倍晋三首相に辞表を提出したと記者団に明らかにした。22日の閣議で承認を得るとし、黒川氏を訓告処分としたと述べた。

本日朝イチの解説記事にも書いたのですが、検察庁というのは刑法犯罪者を公訴する立場にある行政機関で、その検察庁においてNo.2という責任ある立場の人間が刑事犯罪である賭け麻雀を行うなんてことが許されて言い訳がありません。一方で「賭け麻雀をしたこと」を認めた黒川氏に対して今回法務省が取った処分がただの「訓告処分」。国家公務員法は国家公務員に対する処分に関して、その重さの順に免職・停職・減給・戒告の4つの処分を定めていますが、今回行われた訓告とは法律上定められた最も軽い処分である戒告よりも更に下の法律に基づかない「非公式な処分」。なぜ刑法犯罪において非常に重責のある検事長による違法な賭博行為が、これ程までに軽い処分で済むのか? 法務省および検察庁は、刑法犯罪である賭博罪をこれ程までに軽く扱っていると世の中に発信している事を自覚しているでしょうか?

この様に、社会的影響力のある立場の人間による違法な賭博行為に対する戒めに関しては、2015年から2016年にかけて起こった読売巨人軍の選手による賭博事件が記憶に新しいですが、この時、それこそ検察に刑法賭博罪容疑で訴追された読売ジャイアンツの笠原投手に対して行われた東京地裁の判決が思い起こされます。以下、当時の判決を伝えたJキャストニュースからの転載。

元巨人・笠原被告に執行猶予判決 野球賭博事件

https://www.j-cast.com/2016/10/06279952.html

プロ野球・元巨人選手らによる野球賭博事件で、東京地裁は2016年10月5日、賭博開帳図利ほう助と常習賭博の罪に問われた元巨人選手・笠原将生被告(25)に懲役1年2か月執行猶予4年(求刑・懲役1年2か月)の判決を言い渡した。また、賭博の「胴元」として賭博開帳図利罪に問われた飲食店従業員の斉藤聡被告(38)に懲役1年6か月執行猶予4年(求刑・懲役1年6か月)を言い渡した。

報道によると、細谷泰暢裁判官は現役選手として野球賭博に関わったことの社会的影響の大きさを指摘し、「プロ野球への信用を失墜させた」などと述べた。

当該事件に対する判決を行った細谷裁判官は、笠原投手に対して「現役選手として野球賭博に関わったことの社会的影響の大きさを指摘し、プロ野球への信用を失墜させた」などと述べたとして報じられましたが、現役の検事長が麻雀賭博に関わった今回の事件は社会的に重大な影響を与えるものであり、検察庁の信用失墜そのものであります。法務省および検察庁は黒川検事長が行った違法な賭博行為に対して適切な行政上の処分を与えないつもりならば、せめてその社会的影響の大きさを考えて刑事責任をキチっと追求すべき。ここで手心を加える様ならば、それこそ「検察の信用」などは地に落ちると受け止めるべきだと思います。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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