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パチンコは「グレー」ではないし「違法」でもない

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:ロイター/アフロ)

さて、大阪の松井市長のツイートが発端で、なにやら世の中にパチンコ論争が広がっております。以下、同氏によるツイートを転載。

「パチンコは賭博か遊技か」という論争は一種の神学論争の様な様相になっており、パチンコ業界側は「賭博ではない遊技だ」と言いがちですし、一方の反パチ派は「遊技じゃない賭博だ」という。その結果、そこに対する多くの人の表現が「グレーゾーン」というものに落ち着くわけです。

でもね。専門家として、この果てない神学論争を根底から引っ繰り返す事実をお伝えして良いですか?そもそも「パチンコは賭博か遊技か」という論争の命題自体が大きな間違いで、パチンコは法律的にいえば「賭博であり、同時に遊技である」んですよ。

そもそも、多くの人が大きな誤解をしているのですが、我が国の刑法は全ての賭博を禁じているわけではありません。以下、賭博罪を規定した刑法第185条からの転載。

第百八十五条  賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

(※太字は筆者)

上記条文の太字部を見て頂ければと思うのですが、我が国の刑法第185条は「原則的に」賭博は禁止していますが、一方でその但書きにて「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」という例外を明確に定めています。その辺の詳細に関して、以下で動画に判り易く纏めてみました。ご興味のある方はぜひご覧ください。

ということで、そもそもパチンコを規制している風営法というのは、パチンコという商業が刑法が刑罰の対象として除外している「一時の娯楽~」に留まるよう、営業者に対して様々な角度からパチンコ射幸性の上限を定めているわけで、風営法上で定められた「パチンコ遊技」は賭博ではあるけれども、刑法の但書きの規定に則って罰されないサービスであるという事。すなわち、パチンコは賭博であり同時に遊技であるわけです。

本件に関しては、松井市長の他にも例えば元2ちゃんねる管理人の西村ひろゆき氏だとか、政治評論家の三浦瑠璃氏だとかが論議に参戦し始めているわけですが、どんな主張を展開されるのもご自由なんですけども、論議の前提として立脚する法的事実だけは正確に理解しておいて欲しいんですよね。こういう社会的ヘイトを買いやすい業態は、どんな雑な叩き方しても批判を受け難いのは判るんですが、一般人ならまだしもプロの論者や政治家によるあまりにも雑過ぎる主張は、専門の立場からすると閉口してしまうというのが正直感想です。以下参照。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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