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祝・カジノ合法化と「新しい日本の政治」の形

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、昨晩、IR整備法が国会において成立いたしました。以下、日刊スポーツからの転載。

カジノ法成立 3カ所上限に整備、入場料6000円

https://www.nikkansports.com/general/news/201807200000948.html

第196通常国会は20日、事実上閉幕する。カジノ解禁を含む統合型リゾート施設(IR)整備法は同日夜の参院本会議で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数により可決、成立した。これに先立ち、衆院本会議で、野党6党派が提出した安倍内閣不信任決議案が与党と維新の反対で否決された。立憲民主党の枝野幸男代表は政権の西日本豪雨対応を批判し「災害よりギャンブル、災害より党利党略だ」として内閣退陣を求めた。

私が将来の日本のカジノ合法化を見据えて日本を飛び出し、ラスベガスに渡ったのが2000年の春。そこから数えて、およそ19年という長い年月がかかってしまいましたが、何とかここまで至りました。非常に感慨深いです。

新しく生まれた政治の形

それ以上に私が感動したのが、今国会の終盤です。今回の法案に先駆けて2016年に成立したIR推進法では、その採決を巡って推進派と反対派が最後の最後まで揉み合い、混乱の中での成立となりました。当時の記憶が未だ鮮明にある私としては、今回の整備法を巡っても同様の混乱を予測していたのですが、その予測が良い方向に裏切られた。

カジノを推進する与党と対立する最大野党の国民民主党は今国会において、法案の成立そのものには最後の最後まで強行に反対しつつも、法案の採決にあたって野党提案の付帯決議を要求。与党側もそれをのむ形で、国会での議決に至りました。その付帯決議はこれまで野党側が主張してきた我が国のカジノ合法化にあたっての懸念事項に関して、31もの要求事項を含むもの。付帯決議はあくまで法律に付随するものであり、それそのものに法的な強制力はありませんが、今後の政府施策に対して国会の議決をもって一定の「政治的制限」を加えるものであります。

【参考】特定複合観光施設区域整備法案に対する附帯決議

我が国の政治では特定政策を巡って与野党が最後の最後まで対立し、ただただ混乱の中で政治が進んでゆくという状況が散見されますが、今回のIR整備法を巡っては与党サイドは自身の押す政策を前に進めつつも、野党の主張するあらゆる懸念事項を付帯決議として受け止める。野党サイドはただひたすらに与党と対立するのではなく、自ら示す与党政策への疑問点を付帯決議を通じて実際の制度運用に反映してゆく。このような建設的かつ生産的な日本の新しい政治のあり方が、IR整備法の成立を巡って生まれたこと自体が日本にとっての最大の「成果」。このテーマに長らく携わってきた私としても本当に嬉しく思います

IR整備のこれから

ということでIR整備法は成立したわけですが、これで全てが決まったわけではありません。今回のIR整備法をもって我が国は正式にカジノ合法化を達成したワケですが、IR整備法は実際のIR施設の整備にあたって各地方自治体での議会承認を求めています。すなわち、今回国会で行なわれた様々な論議が、今度はIR導入を計画する各自治体レベルで巻き起こるということであり、実はこちらの方が寧ろ「本番」であります。

私自身も様々なメディアを通じて発信してきた通り、IRの導入というのは「経済効果があるから良い」ワケでもなく、「社会コストがあるからダメ」なわけでもない。その両者のバランスを鑑みた上で、その施策が地域に幸せを生むのかどうかを論議すべきものであります。

今回のIR整備法を巡っては、推進派の与党と反対派の野党が論議を戦わせながらも、生産性のある形の決着にまでもって行くことができた。ぜひこれから始まる各IR導入検討地域における論議においても、推進派、反対派どちらにとっても「実のある論議」になるよう各人が勤めてゆきたい。自分自身への戒めの意も込めて、心に刻んでおきたいと思います。

ということで、苦節19年。何とかここまで至りました。今夜は祝杯をあげたいと思います。宴じゃーーーー!!

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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