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過去からの警告:1964年東京五輪に関する古文書が発見される

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

Twitterのタイムラインに1964年に行われた東京五輪に関連する古い資料が発掘されたとの情報が流れてきており、その内容を見て心が痛いです。

もともと十分な工期ではなかったわけではあるが、途中の手持ち等が最後にしわよせされたものと云えよう。

しかし、前後期を通じて雨天日数が以外に少なく、台風シーズンもさしたる事なく経過した事は誠に天祐と云わざるを得ない。ただわづかに異例の渇水による給水制限で8月中旬のプールアク抜き用水に困ったが、これも旧米軍の給水施設からの分水でどうやら切り抜ける事が出来た。

このようにして本施設はすぐれた設計、施工者の技術力と犠牲的な努力により是又天候にも恵まれ8月末の完成を見、無事にオリンピックを迎える事が出来た。関係各位に厚く感謝の意を表する次第である。

最後に此のような工事が同じ単価で同じ工期内で完成させる事は恐らく不可能であるという事を付記したい。オリンピックの旗印のもとに幾多の無理が通り道理がひっこんだのであって、このような事例を再現させてはならないと思う。

本資料を残したのは、1964年の東京オリンピック時に国立屋内総合競技場、すなわち代々木競技場の開発事務の一切を取り仕切った関東地方建設局営繕部。先人達が我々に対してこのように警告を残していたにも拘わらず、なぜこんなことになったのでしょう。本当に心が痛いです。

参考:国立競技場労働者の自殺:日本社会全体の敗北

https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20170725-00073698/

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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