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【島根スサノオマジック】トラビスのビッグショット連発が決め手となって初のセミファイナル進出!

青木崇Basketball Writer
3本連続の3Pショットで島根を勢いづけたトラビス (C)B.LEAGUE

 34点差で大敗した翌日夜のゲーム3、島根スサノオマジックは試合開始早々から15対2という最高のスタートを切った。しかし、アルバルク東京は故障欠場を強いられたライアン・ロシターの代わりに出場している吉井裕鷹が、トップからの3Pショットやドライブからのレイアップでフィニッシュするなどステップアップ。1Q残り41秒にジョーダン・テイラーのレイアップで東京が18対18の同点に追いつくと、その後は両チームとも譲らない一進一退の攻防が3Qまで続いた。

 ショットを決められたら決め返し、ディフェンスで止めたら止め返すシーンが繰り返される中、試合は3Q終盤で一気に動き出す。田中大貴のレイアップで東京に55対55の同点に追いつかれた直後、島根はぺリン・ビュフォードとのピック&ロールからリード・トラビスが3本連続で3Pショットを成功させる。

 4Q開始早々にドライブからフィニッシュするなど、トラビスはチームの16連続得点中13点を一人で稼ぐ大暴れ。残り8分2秒で71対55とリードを広げた島根は、最終的に80対62のスコアで逃げ切り、チーム史上初のセミファイナル進出を成し遂げた。東京を撃破する決め手となった3Q終盤について、トラビスはこう振り返る。

「あの瞬間はとてもハッピーな気分になりましたし、とても集中していました。前半で3ファウルになってしまってベンチに座ることを強いられたので、なんとしてでも貢献したいと感じていましたし、こんな形でシーズンを終わりたくなかったのです。ハーフタイム中のロッカールームで“しっかり準備し、自分のショットを打ち、アグレッシブにプレーしよう”と、声をかけ続けてくれたチームメイトを称賛したいです。あのようなオープンショットであれば、決める自信はありました」

 ルカ・パヴィチェヴィッチコーチが「今季はこれまでに山あり谷あり、数多くの困難を乗り越えてきたけれど、3Q終盤にトラビスの連続スリーが決まった後は、山を乗り越えるだけのパワーが残っていませんでした」と振り返ったように、東京が4Qで奪った得点はわずか7。吉井がチーム最高の17点という素晴らしい活躍を見せたものの、最後は島根の勢いに押し切られる結果となった。

 島根は安藤誓哉が20点、ビュフォードが14点、10アシスト、ニック・ケイが17点、10リバウンドと頼れる主力たちが期待に応えた。しかし、トラビスのビッグショット連発が勝敗を決定づけたのは間違いない。2月以降故障に悩まされ、欠場が長期化していたトラビスは、チャンピオンシップでプレーしたいという強い思いを胸に、辛抱強くリバビリの日々を過ごしてきた。ポール・ヘナレコーチはトラビスを称賛する。

「彼は規律をしっかり守れる本物のプロ選手。すごく厳しい数か月を過ごしていたけど、回復するためにできる限りのことを全力で取り組んでいました。故障する前はMVPレベルの活躍をしていたので、まだ万全な状態ではないかもしれませんが、ポストシーズンで復帰するために努力し続けていました。このような結果が出るというのは、彼が辛抱強く自分と向き合ってきたからこそです。彼のことを称賛したいですし、すごく誇りに思います」

 トラビスは島根で2年目を迎えた今季、1月30日までの30試合で20点以上を16回記録。戦列から離脱する直前のサンロッカーズ渋谷戦で39点という大爆発を見せていただけに、故障による離脱はトラビス自身もチームにとっても痛かった。しかし、辛抱強く故障と向き合い、回復に向けて努力してきたことによって、トラビスがメンタル面で一回り成長したのは間違いない。

「今季最後の3か月は、私にとって非常に難しいものでした。復帰しても戻ってきてもまた故障するなど、よくなったり悪くなったりの状況が続いたことには本当にフラストレーションを感じていました。バスケットボールというゲーム、このチームのみんなが大好きですから、ベンチで座っているというのはとても辛いものです。ポストシーズンまで数週間のところでも、体調はいまひとつの状態でした。でも、この機会を逃すわけにはいかないとわかっていましたので、コートに出て何かできることがあればやるという思いを持っていました。100%回復したわけではないですけど、辛抱強く待ってくれたコーチ陣とチームを称賛したいです」

 セミファイナルの相手は、B1最高勝率で西地区を制した琉球ゴールデンキングスになる。試合で貢献できるレベルまでトラビスのコンディションが回復したことは、フィジカルの強さが武器のチームと敵地で戦う島根にとって明るいニュース。トラビスが持ち味である身体能力の高さとフィジカルの強さを活かしたプレーを攻防両面で発揮できれば、島根にもシリーズを制するチャンスは十分あるだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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