Yahoo!ニュース

宇都宮で起きたミスはテーブルだけの責任ではない。Bリーグは深刻な問題として認識・共有すべき!

青木崇Basketball Writer
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3月19日に行われた宇都宮ブレックス対レバンガ北海道戦で、映像を見ていた視聴者の指摘で初めてわかるという重大な問題が発生した。1週間以上経過してもBリーグから声明が一切ないことに対し、筆者はファンを軽視していると感じ、この件について個人的な見解を書きたいと思う。

 問題のシーンは、4Q残り7分を切った局面で北海道がオフェンスをしていたが、宇都宮の厳しいディフェンスでショットを打てず、レフェリーは24秒バイオレーションの笛を吹いた。重大な問題が起きたのはその直後だ。

 笛が鳴った際にゲームクロックが流れて6分50秒になったため、レフェリーは時間を少し戻して修正することを指示。しかし、試合の映像で確認してみると、リプレーを流した後に出てきたゲームクロックの表示が“5:49”となっており、その後2秒戻した“5:51”から再開されてしまう。本来は“6:51”への修正でなければいけないのだが、テーブルオフィシャルズ、ゲームディレクター、レフェリー、両チームの選手やベンチにいるスタッフを含めてだれもこのミスに気付かず試合は進み、北海道が延長の末に98対89で勝利という結果で終わった。

 チームがこの問題に気付いていた場合、クルーチーフのレフェリーがスコアシートにサインをする以前であれば、Bリーグの規定にある「プロテスト/抗議」が可能。しかし、クルーチーフがサインをした時点でその機会は消滅し、北海道の勝利という結果は成立する。バスケットボール競技規則の第7章・第44条の「訂正できる誤り」の中に、下記のような記載がある。

44-2-6 訂正可能な誤りでも、クルーチーフがスコアシートにサインした後では訂正することはできない。

44-2-7 スコアラーによる得点、ファウルの数、タイムアウトの数などについての記録の間違いや、タイマーによるゲームクロックの操作の誤りによる競技時間の計測の間違い、およびショットクロックオペレーターの操作の誤りによるショットクロックの計測や表示の間違いは、クルーチーフがスコアシートにサインする前であれば、審判の承認によっていつでも訂正することができる。(Bリーグではチームが得点やクロックの誤りを把握し、試合中にレフェリーやテーブルオフィシャルズに指摘し、抗議は試合終了後15分以内にキャプテンがゲームディレクターに申し出ることが必要)

 今回のミスはヒューマンエラーであり、いつどこで起きても不思議ではない。重要なのは、他のテーブルオフィシャルズ、レフェリー、ゲームディレクターといった人たちがミスに気付き、修正対応をするというサポートであり、ミスしたタイマーだけに責任を押し付けてはいけない。ゲームクロックの修正を指示しながら、試合再開の前に確認を怠ったレフェリー3人の責任は重い。

 また、両チームのベンチがまったく気付かなかったことも非常に残念だった。試合中におけるアシスタントコーチには、クロック、試合再開時におけるインバウンドパスの位置、チームファウル数、ファウルが重なった際の処置など、常に自チームに不利益が起きないよう注意すべきという役割も担っているはず。また、スコアをつけているベンチスタッフも、クロックのチェックが甘かったと言われても仕方ない。

 バスケットLIVEでこの試合を実況していた篠田和之アナウンサーは、問題に気付かなかったことを自身のツイッターで謝罪。しかし、篠田アナウンサーが謝るよりも、試合を主催するBリーグが真っ先に何らかの声明を出すべきだった。3月28日の時点でも何も出ていない現状からすると、Bリーグのトップである島田慎二チェアマンが“こういった事態を軽視しているのでは?”と感じるのは、筆者だけではないだろう。

 問題が起きたときの修正と素早い対応は、どの組織にとっても大事なことだ。しかし、昨年のファイナルで起きたチケットの問題によって、多くのファンから信用を失ったことを島田チェアマンは忘れてしまったのだろうか? 選手やコーチが起こした問題に対する処分発表は迅速だが、宇都宮対北海道戦で起きたような事態への対応が遅いという印象は否めない。

 別競技ではこんな事例があった。日本ハンドボールリーグは3月14日にアワード受賞者を発表したが、今季の女子最優秀新人賞が対象外の選手だったことが発覚。元Bリーグの事務局長だった葦原一正日本ハンドボールリーグ代表理事は、20時間弱で対応協議、プレスリリース作成、謝罪会見まで行っていた。また、自身のツイートでも謝罪の言葉を記したのは、今のBリーグとは対照的である。

 バスケットボールはチームスポーツ。Bリーグの試合は選手やコーチだけでなく、多くの人たちのサポートがあったうえで開催されていることを忘れてはならない。だからこそ、今回の問題はBリーグを筆頭に、日本のバスケットボール界が一つのチームとして深刻な問題として認識・共有し、再発防止に向けた取り組みを明らかにすべきである。

★NBAではこんな例も

 2007年12月19日のマイアミ・ヒート対アトランタ・ホークス戦、延長残り51.9秒にシャキール・オニールがファウルの笛を吹かれた。その際、スコアラーが6つ目のファウルとしたが実際は5つ。ホークスが117対111で勝利した後、ヒートはNBAに異議を申し立てると、オニールのファウルアウトは誤りということで、残り51.9秒でホークスが114対111とリードした状況からやり直すという裁定が下される。デイビッド・スターンコミッショナーは過失と対応のまずさを理由に、ホームチームのホークスに5万ドルの罰金処分を科した。

 ヒートとホークスはアトランタでもう1試合あったため、2008年3月8日に延長残り51秒からやり直しを実施した。両チームとも得点できないまま、ホークスの勝利で試合終了。ちなみに、誤ってファウルアウトとなってしまったオニールは、2月20日にフェニックス・サンズへトレードされていたため、やり直しの局面でその姿がなかった。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事