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【Bリーグファイナル第3戦】千葉がB1初制覇。勝敗を分けたのは試合終盤における個の打開力

青木崇Basketball Writer
4Qの勝負どころでビッグプレーを決めていたショーター 写真:B.LEAGUE

 Bリーグ創設から東地区のライバルとして、数々の激戦を繰り広げてきた千葉ジェッツと宇都宮ブレックス。予想外の大差がついた過去2戦と違い、Bリーグの頂点がかかったゲーム3は、ファンの期待を裏切らない拮抗したゲームとなった。

 試合は2Q開始早々に千葉が飛び出して10点のリードを奪うも、宇都宮もタイムアウト後から3Pショットを2本連続で決めて反撃。2Qのオフィシャル・タイムアウト後は一進一退の攻防が続き、ハーフタイムも3Q終了時もスコアは同点だった。お互いに特徴や強みを知り尽くし、チームとして攻防両面で精度の高いプレーができることからすれば、終盤までもつれても不思議ではない。

 チームの総合力でほぼ差がないマッチアップ。勝てばチャンピオンシップ獲得というファイナルの最終戦になれば、勝負の行方は肝心な局面で選手個人の力で得点機会をクリエイトできるか否かに左右されるもの。個の打開力で試合に影響力をもたらす選手として、筆者は富樫勇樹とライアン・ロシターに期待を寄せていた。

 しかし、激しいディフェンスの応酬によって、両チームともなかなか得点が伸びない。富樫は1Qで2つ、3Q序盤で3つというファウルトラブルに陥るなど、オフェンスでリズムに乗れないまま時間が経過。ロシターも前半に4アシストとチームメイトを生かすプレーはしていたものの、3Qにレイアップ2本と速攻からダンクを叩き込むシーンを除くと、ゲーム2のような得点へのアグレッシブさがなかった。

 中心選手がなかなか得点できず、チーム一体となった戦いの部分でも差が出ないまま突入した4Q。勝敗を分けたのは、千葉のシャノン・ショーターが持つ個の打開力だった。

「チームとして戦うのは大前提なんですけど、最後に個の力で押し戻さなければいけない時間帯もあるのがゲームだと思っているので、そこに対しては最後彼が打開してくれたと思っています。ただ、前半を見ていただけたらわかりますけど、どうしようかなと思うくらいボールを離さなかった。それが彼の責任感だったので、“もっとリラックスしてやりなさい。まだまだ時間があるよ。我慢し続けてプレーしなさい”と彼に伝えました」

 大野篤史コーチがこう語ったように、前半のショーターは無得点とまったくいいところがなかった。しかし、4Q終盤にギャビン・エドワーズのレイアップにつながるアシスト、ドライブから決めたジャンプショットは、いずれもリードを3点に広げるというビッグプレー。ファウルゲームの局面ではディフェンダーを振り切ってインバウンドパスをもらい、勝利を決定的にするフリースローを着実に決めていた。

 個の打開力と勝負強さという点では、富樫も素晴らしいものを持っている。しかし、この日のショーターは14点中10点を4Qで奪っており、ビッグゲームで鍵を握る個の打開力で大きな違いを作ったのだ。富樫はショーターについて次のように語る。

「シャノンに関しては今年初めて一緒にプレーしているんですけど、すごく僕のことを認めてくれていて、本当に“勇樹が初めてのリング、チャンピオンシップを手にするのを手助けするから何でも言ってくれ”とシーズン前から言ってくれた。今日のファイナルもそうですし、4クォーター最後の場面も“I got you.”、任せろと言ってくれていた。それを信頼してボールを持たせるようにしていたので、しっかり結果を残してくれて本当によかったです」

 試合終盤の宇都宮は千葉と対照的だった。58対61となった残り3分47秒にコールしたタイムアウト後のオフェンスで、安齋竜三コーチはロシターをベンチに下げてしまう。その理由について質問すると、「ライアンはファイナルもそうですけど、その前(川崎ブレイブサンダース戦)も出突っ張りで疲れていた部分もあったし、1分くらい休ませて最後のところで出してやってもらうという考えだったので、少し休ませたかったというだけです」と説明した。

 この局面でロシターを休ませるというのは、かなりリスキーな決断だったと思えるが、チームの遂行力で勝つという安齋コーチの考えも十分に理解できる。

 とはいえ、2021年のBリーグファイナルの決着は、ショーターの打開力が最後の決め手となった。ロシターの言葉はそのことを象徴している。

「最後の数分間は千葉のほうが何をやるべきか、得意なプレーや効果的なオフェンスをよくわかっていて、それをしっかり遂行していた。自分たちは少し考えすぎたところがあり、プレーを複雑にしすぎてしまったために狙い目があやふやになってしまった」

 ファイナルスコアは71対62。千葉は3度目のファイナル進出で、悲願のB1のチャンピオンシップを手にした。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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