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「練習も好きだけど、試合はもっと大好きでワクワクする」。NBA優勝経験者マカドゥが渋谷を活性化させる

青木崇Basketball Writer
マカドゥの持ち味は高い身体能力とエナジー満載のプレー 写真提供/B.LEAGUE

 サンロッカーズ渋谷はBリーグが創設されて以降、ロバート・サクレ、ライアン・ケリーというNBA経験者を獲得してきた。このオフに天皇杯制覇に大きく貢献したセバスチャン・サイズを千葉ジェッツへの移籍で失ったが、新たな外国籍選手としてジェームズ・マイケル・マカドゥとの契約は、いい意味での驚きであると同時に、渋谷らしい補強という印象を持った。

 彼の経歴を簡単に紹介すれば、NCAAの名門ノースカロライナ大で活躍し、ゴールデンステイト・ウォリアーズの一員としてNBAチャンピオンシップを獲得するなど、トップレベルのバスケットボールを経験している選手だ。叔父のボブは1975年にNBAのMVP、ロサンジェルス・レイカーズで2度、マイアミ・ヒートのアシスタントコーチとしても3度NBA制覇を経験した偉大な人物である。

 新型コロナウィルスの影響で入国が遅れたこともあり、マカドゥのBリーグデビューは10月24日の宇都宮ブレックス戦だった。高い身体能力、機動力、両手を広げたウイングスパンが220cmという腕の長さを生かしたプレーで15点、10リバウンドのダブルダブルを記録。ただし、Bリーグに順応している段階であり、好不調の波が出ているのは否定できない。11月7日の京都ハンナリーズ戦では、「昨日は早々とファウルが2つになってしまい、ほとんどプレーできなかった。1Qの途中から2Qはベンチに座らざるを得なかったし、3Qもリズムをつかめないまま苦戦した」と振り返ったように、10分間の出場で無得点に終わってしまう。

 しかし、翌日のマカドゥは1Q5分25秒に最初のシュートをペイント内で着実に決めるとリズムに乗り、チャールズ・ジャクソンとのハイローからアリーウープダンクを叩き込むなど、21分間で10本すべてのシュートを成功させるなど22点の大活躍。7リバウンド、2アシスト、3スティール、1ブロックショットという数字を見れば、攻防両面で躍動していたのは明白である。常にボールを持つ必要がなく、試合の流れの中で持ち味を発揮する術を知っているのは、チームプレーヤーとしてしっかり仕事ができることを示すものだ。

京都との2戦目ではペイント内のフィニッシュで強烈な存在感を示した 写真提供/B.LEAGUE
京都との2戦目ではペイント内のフィニッシュで強烈な存在感を示した 写真提供/B.LEAGUE

「今日はコートに立ち続けられたのが大きな違いであり、昨日のようなアグレッシブに行きすぎることなく、ゲームの流れに乗りながらいいプレーができた。試合後に場内アナウンスで言われるまで、10本中10本成功というのは知らなかった。試合中はチームの勝利に貢献するためにプレーしていただけさ。ダンクがたくさんあったけど、ジャンプショットも決めた。気分がいいよね。新型コロナウィルスの影響でチームへの合流が遅れたし、ここ数試合は自分の役割を見つけて貢献するという点でも苦戦を強いられた。

 この1週間いい練習ができていたから、すごくワクワクして臨んだけど、昨日はすごくフラストレーションを感じる試合になってしまった。まあ、起こってしまったことに関しては気にしても仕方ない。昨夜はぐっすり眠れたし、今日の試合はより集中して臨んだ。時には自分の望み通りになることがある。今日はすごくそう感じる試合だった。昨日は悪いゲームをしてしまったけど、自分をサポートしてくれたチームメイトには心から感謝したい。コーチ陣も勇気づけてくれたし、コートに出てプレーするのがすごく楽しかった」

高い身体能力とエナジー満載のプレーでの貢献が期待されるマカドゥ 写真提供/B.LEAGUE
高い身体能力とエナジー満載のプレーでの貢献が期待されるマカドゥ 写真提供/B.LEAGUE

 筆者が長年NBAを取材してきた中で、選手の口からよく耳にしたのがひどい大敗を喫したり、プレー内容が悪かった後の「すぐに試合をしたい」という言葉。京都との2戦目におけるマカドゥのパフォーマンスは、正にフラストレーションをモチベーションに変え、いいマインドセットで試合に臨めたことを示すもの。他のリーグと違い、Bリーグが週末に同じ相手と同じ会場で対戦することについては、「違いがあるのは確かだし、昨日が午後5時からで今日起きたらすぐに体育館に行くから、短時間で切り替えなければならなかった。でも、私はバスケットボールが大好きなんだ。練習も好きだけど、試合はもっと大好きでワクワクする」と語る。

 まだ5試合に出場しただけだが、マカドゥは「素晴らしいリーグだと思う。ヨーロッパ、NBA、アジア各国といったリーグを見たけど、選手の安全確保が継続できているし、ファンがアリーナで試合を観戦できるということからすれば、Bリーグが今開催されている中ではベストだと思う」と、Bリーグに対して好印象を持っている。今後リーグ全体の傾向を把握し、対策をしっかりできるようになれば、マカドゥがスロースタートを切った渋谷が巻き返す要因になるかもしれない。

「チームが勝つための助けになりたい。ディフェンスをし、エナジーをもたらし、コーチ陣が私を必要とするところは、試合によって変わってくる。昨日はチアリーダーだったけど、今日はプレーで貢献できた。毎試合エナジーをもたらす選手でありたいし、必要なところを自分が補えればと思う。ディフェンスとかオフェンスに関係なく、とにかく勝利に貢献したい。プレーオフに進み、チャンピオンシップを目指して戦い続けられたいと思う」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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