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NIKE ALL ASIA CAMPのようなエリートキャンプの日本開催は育成面で大きなプラスになる

青木崇Basketball Writer
NBA選手の解説に耳を傾けるキャンプ参加者たち (C)Takashi Aoki

 男子代表のワールドカップとオリンピックの出場権獲得、渡邊雄太のNBAデビュー、八村塁のNBAドラフト1巡目指名など、日本のバスケットボール界はこの1年で大きな発展を遂げている。FIBA(国際バスケットボール連盟)による制裁がきっかけといえ、日本バスケットボール協会内部の改革とBリーグの誕生による成果と言っていいだろう。

 しかし、今後もアジア・オセアニアを戦いを勝ち抜き、日本代表が世界の舞台に立ち続けるには、アンダーカテゴリーのレベルアップを継続させることが必要。男子は代表のアシスタントコーチを兼任する佐古賢一、女子は萩原美樹子をヘッドコーチに据えて強化を図っているものの、代表合宿に呼ばれていなくても将来有望な選手を集めて競わせるエリート・キャンプというものがない。2012年にNBA主催のバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズが東京で開催されたものの、日本から参加したのは富樫勇樹、田渡凌、高柳紗万の3人だけで、メディアの露出も少なかった。

 筆者は2012年を皮切りに、2015年から毎年男子のNIKE ALL ASIA CAMPを取材している。アジア・オセアニアの国々からアンダー・カテゴリー代表に入るレベルの選手たち60人が集結し、5日間でNBAのチームに在籍するコーチたちによるポジション・ドリルでスキルの向上を図り、6チームに分けてのゲームで競い合うというレベルの高いキャンプ。過去に指導したNBAコーチの中には、デンバー・ナゲッツのマイク・マローン、アトランタ・ホークスのロイド・ピアースというヘッドコーチになった人物もいる。

 また、ゲストとして招かれるNBAの若手選手のプレーを間近で見ることや、一緒にドリルをやるといった交流は、参加者にとって大きな刺激になる。昨年のキャンプに参加した選手の中には、6月29日からギリシャで開催されるU19FIBAワールドカップに出場するオーストラリア、ニュージーランド、中国、フィリピンの代表メンバーがおり、日本、韓国、チャイニーズ・タイペイから参加した選手も昨年のU18FIBAアジアでプレーしていた。

男子は昨年のU18日本代表メンバーだった福岡大附大濠高の横地聖真ら4人が参加。(C)Takashi Aoki
男子は昨年のU18日本代表メンバーだった福岡大附大濠高の横地聖真ら4人が参加。(C)Takashi Aoki

 

 NIKE ALL ASIA CAMPは、アンダー・カテゴリー世代の選手育成と新たなタレントの発掘をメインとしながらも、コーチの育成という点でも大きな意味を持っている。参加している中国人のコーチたちはポジション・ドリルを手伝いながらNBAコーチの指導を自身の目で学ぶだけでなく、それぞれが各チームのヘッドコーチとアシスタントコーチの仕事をこなさなければならない。即席チームの中でいかに選手の個性を把握し、戦略を構築し、いかに機能させるかといった試合の采配について、NBAのコーチから細かくチェックされるのだ。

 このキャンプにコーチとして参加している人たちの中には、中国代表選手の経験者もいる。昨年までコーチとして参加していたチャン・ジンソンはU18代表のヘッドコーチとして中国のU19FIBAワールドカップ出場権獲得に導き、チョウ・レンビンもワールドカップ予選を戦った代表のアシスタントコーチを務めていた。エリートキャンプでの経験が、彼らを質の高いコーチに成長するプロセスとなっているのは明らか。もちろん、選手にとってもコーチにとっても質の高いキャンプが開催できるのは、NIKEが中国バスケットボール協会(CBA)と強固な関係を築いてきたことも大きい。

 日本でも90年代にNIKE ALL JAPAN CAMPが行われたものの、長続きすることなく消滅した。最近は日本各地で様々なクリニックが行われ、NBA選手の来日プロモーションの一環で中高生を指導するセッションもある。しかし、NBAのコーチや参加する選手たちにかかる費用が高額なため、エリートキャンプの開催に必要なスポンサー探しは容易でない。また、有望な高校生をターゲットにしようとしても、6月だとインターハイ予選やブロック大会があるなど、なかなか参加しにくい事情もある。

 仮に来年の6〜7月にかけて日本でエリートキャンプを開催するのであれば、やはりバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズの招致がベストだろう。そう思える理由は、日本バスケットボール協会にとってはNBAとの関係をより深められる絶好の機会であり、東京五輪のプロモーションにもなるから。日本代表が五輪前に準備を進めるうえで重要な時期と重なるかもしれないが、ワシントン・ウィザーズにドラフトされた八村とメンフィス・グリズリーズの渡邊をNBA選手のゲストに迎え、期間中にキャンプの1セッションだけでも一般公開できれば、バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズの注目度も上がるはずだ。

 クリアしなければならない難題があるといえ、アンダーカテゴリーの選手とコーチがレベルアップできる機会として、日本でもエリートキャンプが定期的に開催してもいい時期を迎えたのではないか? 将来有望な選手やコーチへの投資、日本のバスケットボール界が発展するためにも、必要なイベントであることはまちがいない…。

 今年のNIKE ALL ASIA CAMPは6月5日から中国・深センで行われ、日本から男女4人ずつが参加した。特に女子は今年もレベルが高く、精華女高の樋口鈴乃が2016年の今野紀花(聖和学園高→ルイビル大)以来となる最優秀選手に選ばれ、チームメイトの三浦舞華もベスト5に選出。男子は横地聖真、平松克樹(ともに福岡大附属大濠高)、黒川虎徹(東海大付属諏訪高)、川島悠翔(群馬大附属中)が参加した。なお、男子選手については後日レポートを掲載する予定。

女子の最優秀選手となった樋口鈴乃(精華女高3年)はカイル・クーズマと記念撮影 (C)NIKE BASKETBALL
女子の最優秀選手となった樋口鈴乃(精華女高3年)はカイル・クーズマと記念撮影 (C)NIKE BASKETBALL
ベスト5に選ばれた三浦舞華(精華女高3年) (C)NIKE BASKETBALL
ベスト5に選ばれた三浦舞華(精華女高3年) (C)NIKE BASKETBALL
伊波美空(桜花学園1年) (C)NIKE BASKETBALL
伊波美空(桜花学園1年) (C)NIKE BASKETBALL
前田心咲(桜花学園1年) (C)NIKE BASKETBALL
前田心咲(桜花学園1年) (C)NIKE BASKETBALL
Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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