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川崎ブレイブサンダース:栃木ブレックスに大敗してのシーズン終了はチーム変革への第一歩になるのか?

青木崇Basketball Writer
大黒柱ファジーカスは健在。川崎は来季に向けてどう進むのか…。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 川崎ブレイブサンダースと栃木ブレックスのB1クォーターファイナルは、レギュラーシーズンの対戦で4戦全勝の栃木にホームコート・アドバンテージがあったといえ、実力拮抗の好ゲームになるという期待があった。しかし、ほとんどの人が予想しなかったの大差による決着で、シリーズは終わりを告げてしまう。

 ゲーム1:57-87

 ゲーム2:62-89

 キャプテンの篠山竜青はゲーム2の後、次のような言葉を発した。

「栃木さんとはBリーグ初年度、ファイナルで戦って、その時は10点あるかないかの点差でしたが、それから2シーズンでこれだけ(力の)差をつけられたことの悔しさをすごく感じています。トップチームと言われるグループに、今年は食い込めなかったのかなという印象があります。意識であったりディフェンスだったり、大きく変えなきゃいけないという危機感はあるので、この悔しさは絶対に忘れてはいけないと感じています」

 今季の川崎はニック・ファジーカスの帰化により、外国籍選手2人を加えたラインナップで優位に立てると思われた。NBA経験のあるバーノン・マクリンとシェーン・エドワーズの獲得は、2年前に逃したB1のタイトルを今季こそ獲得するという強い意気込みを感じさせるもの。夏に足を手術した影響でファジーカスが欠場しながらも、開幕週にアウェイで千葉ジェッツ相手に2連勝という好スタートは、大きなプラス材料になると見ていた。

 しかし、ファジーカス、篠山、辻直人が日本代表に招集されたことと、水曜日に12試合あるなど厳しい日程もあり、練習よりも疲労回復を優先することを強いられた。新戦力のマクリンとエドワーズをうまくフィットさせるために必要な練習時間は、十分に確保できなかったという影響があったのかもしれない。それは、シーズン序盤の10月に4連敗を含む6試合で5敗ということへとつながり、新潟アルビレックスBBが中地区首位を突っ走る要因になったと言えよう。

 川崎は2月以降、7連勝と8連勝を記録して新潟に肉薄したものの、4月13日の直接対決に敗れたことで地区優勝を逃した。4Qに今季の武器となるはずだったファジーカス、マクリン、エドワーズのビッグラインナップで勝負をかけたものの、10分間のスコアは22-25。エドワーズが持ち味を発揮する機会はほとんどなく、栃木ブレックスとのクォーターファイナルでもその状況は変わらなかった。

 2011年から北卓也コーチが指揮し、ファジーカスは2012年に入団して以来大黒柱としてチームを牽引。しかし、Bリーグ1年目こそファイナルに進出したものの、ここ2シーズンはクォーターファイナルで敗退している。特に、今季は力の差を見せつけられての敗戦だったことを考えると、チームを変革させる時だという声が出ても不思議ではない。

 川崎は東芝からDeNAにオーナーシップが変わった中で、マーケティング、集客、社会貢献活動で素晴らしい成果を出してきた。今季の1試合平均観客数は千葉、栃木に次いで3番目に多く、等々力アリーナに4000人以上駆けつけた試合も12回。フロントオフィスのハードワークは、着実に成果として現れていたのは、北コーチが「今シーズン、一番変わったのはホームアリーナでした。雰囲気もそうですし、ファンやお客様がたくさん入るようになって、選手たちにとっては嬉しい限りだと思います。ただそういった方々に優勝を見せられなかったことは残念です。(社長の)元沢さんをはじめクラブスタッフも集客のために色々な努力をしてくれたので感謝しています」というコメントでも明らかだ。

 しかし、オンコートに目を向けると変化が少ない。Bリーグで唯一他のチームのフリーエージェント選手を獲得したことがなく、大学卒業後に入団してきた選手を育てて使えるようにする東芝時代のやり方を継続してきた。永吉佑也と晴山ケビンが一昨季終了後、野本建吾が昨季限りで移籍した一方で、その代わりとなる戦力の補強は行っていなかった。

 今季は鎌田裕也、谷口光貴、林翔太郎、青木保憲のステップアップに期待するところもあったが、一貫した出場機会を得られないままシーズンは終了。栃木戦で改めて明確になったのは、B1で優勝するために必要な戦力がいなかったことだ。他のチームでフリーエージェントとなる選手の補強は、この2シーズンにおける閉塞感を打破するための第一歩にしたいところ。また、外国籍選手の入れ替えも来季における重要な決断になることは間違いない。篠山が口にした「大きく変えなきゃいけないという危機感」は選手個々の意識や姿勢だけでなく、経営陣に向けたメッセージという気がしている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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