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バスケットボール日本代表:アジアカップは結果以上にワールドカップ予選の準備という意味合いが強い

青木崇Basketball Writer
アルゼンチンの名将ラマスに将来を託された日本代表(写真:松尾/アフロスポーツ)

 FIBA(国際バスケットボール連盟)の改革により、アジア選手権はアジアカップへと変わり、2019年に行われるワールドカップ予選がホーム&アウェイで別に行われる。8月8日にレバノンのベイルートで開幕するアジアカップで、日本はオーストラリア、チャイニーズ・タイペイ、香港と対戦するグループに入った。これを見て最初の印象は、FIBAアジアに対しての「なぜ?」である。その理由は、11月から来年6月までの間にワールドカップ1次予選でも、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイと同じグループだったからだ。これは日本のグループに限ったことでなく、シリア、インド、ヨルダンもアジアカップとワールドカップ1次予選でも同じグループになったことからすれば、抽選といえ、FIBAアジアには少し工夫がほしかったと思わざるをえない。

 日本が2020年の東京五輪の開催国として出場権を得るうえで、ワールドカップ出場は最低条件である。それを考えると、今回のアジアカップはワールドカップ予選に向けての準備という意味合いが強くなった。そう言える理由の一つに、チャイニーズ・タイペイは東アジア選手権で日本を倒した際に大活躍した帰化選手、クインシー・デイビスをロスターから外していることがあげられる。アジアカップでは別グループといえ、フィリピンも元NBAのアンドレイ・ブラッチが不参加となり、中国も大黒柱であるイー・ジャンリャンが不在。強豪国がベストメンバーを揃えたわけではないのだ。

 だからこそ、ワールドカップ予選に向けてのプロセスとして、日本はアジアカップで自信のレベルを上げなければならない。7月29日と30日のウルグアイ戦は、新指揮官となったアルゼンチン人、フリオ・ラマスのネットワークが生かされたもの。なかなか対戦することができない南米のチーム相手に、アジアと違うフィジカルの強さと長い腕を体感できた点で大きな意味があった。

 ウルグアイ代表のセンター、エステバン・バティスタはホークスに2年在籍した元NBA選手であり、日本戦でもフィジカルの強さを生かしたポストプレイからの得点、リバウンドの強さで存在感を示した。アジアカップの日本は2m以上のビッグマンが太田敦也、竹内公輔の2人しかいない。彼らにとっては、元NBAでバティスタよりも身長の高いデビッド・アンダーセンがいるオーストラリア戦に向けて、いい準備ができたと言っていい。2戦目に先発してインサイドの攻防でいい仕事をした太田について、「アジアカップ前にこういった試合をやることで、いい経験になる」とラマスコーチは評価している。

 長い腕へのアジャストという点に目を向けると、1戦目に比べると2戦目はパスが弾かれるシーンが減少。スクリーンを使った後のプレイ、ドライブからのキックアウト後にボールをスイングすることで、オープンでシュートを打てる機会が増えていた。また、ポイントガードとのパス交換後にシューティングガードが3Pラインに沿って逆サイドに動くプレイは、アルゼンチンがマヌ・ジノビリでよくやっていたもの。走ったシューティングガードにパスが通るシーンがほとんど見られなかったのは、腕の長い選手が多かったことや、そのプレイに対するウルグアイの認知度の高さが影響している。とはいえ、ラマスがアルゼンチンのスタイルを活用しようとしているのは、前半を見た時点で把握できた。

 FIBAランキングで日本を上回る26位のウルグアイとは、非公開スクリメージを含めて3試合行われた。長旅の疲労が取れず、時差ボケが解消できていなかった相手に、日本は非公開スクリメージで30点以上の差をつけて勝ったが、7月29日の試合で目の色が変わり、気合十分のウルグアイにティップオフ直後から主導権を握られて10点差で敗戦。それでも、翌日に各クォーターの失点を17以下に限定させたディフェンスの頑張り、ボールを動かすことを重要性をオフェンスで体現して勝った(72対57)ことは、アジアカップに向けて大きなプラスと言える。

「まだまだ先は長いが、選手の姿勢と理解力、この2つが日本のスタイルを探すために重要な要素となる」というラマスコーチの言葉は、アジアカップのテーマになるだろう。NBA選手が不在といえ、オーストラリアに勝つのは今の日本だと正直言って厳しいだろう。しかし、デイビスのいないチャイニーズ・タイペイには、東アジア選手権の雪辱の意味も含めて負けるわけにいかないし、ワールドカップ予選に向けたメッセージにしなければならない。

 アジアカップの日本代表については、「結果よりもワールドカップ予選に向けた準備」という見方を改めてお勧めする。最悪のシナリオを想定すれば、準々決勝進出決定戦で敗れて終了ということもありうるが、悲観的になる必要はない。東京五輪への道を切り開くには、アジアカップよりもワールドカップ予選突破が一番重要なのだから…。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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