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バスケットボールU19代表:八村のファウルトラブルを脇役たちがカバー。日本は3点差でマリを撃破

青木崇Basketball Writer
マリに競り勝って喜びを爆発させたU19日本代表 (C)FIBA.com

「技術はないけど、身体能力が高い。まるで日本にいる留学生が5人いるようだった」

フォワードの増田啓介がマリをこう評価したように、身体能力とサイズで上回る相手に、日本はなかなかリバウンドを奪えないシーンが何度も繰り返される。また、八村塁以外の選手によるオープン・シュートは、ことごくリムに嫌われることが繰り返しで前半終了。3Q残り5分42秒に八村が4つ目のファウルを吹かれたことで、日本は最悪のシナリオ直面したと思われた。しかし、このチームはここから心身両面でタフさを発揮する。

スペイン戦とこの試合の前半で当たりのなかった杉本天昇が右コーナーから3Pを決めると、4分50秒にシェーファー・アヴィ幸樹がオフェンス・リバウンドからのフィニッシュしての3Pプレイで、日本は43対42とこの試合で初のリードを奪う。シェーファーはその後もリバウンドで奮闘し、タイミングのいいカットから得点するなど、11点、10リバウンドのダブルダブルを達成。プラスマイナスもゲーム最高となる+11を記録するなど、八村がベンチに下がっている間に、日本が最大で11点のリードを奪う原動力となった。昨年アメリカに渡り、NCAAディビジョン1に多くの選手を輩出するブリュースター・アカデミーで1年間頑張ってきた成果が出たのはまちがいない。「自分に与えられた裏方の仕事を頑張ってやるしかないです。公式戦ではこれがベストゲームですけど、課題もたくさんあります。もっとできることをやっていくしかない」と、シェーファーはこの大会でレベルアップにすることに強い意欲を示す。

3Qの逆転時で存在感を示した杉本 (C)FIBA.com
3Qの逆転時で存在感を示した杉本 (C)FIBA.com

八村が4Q5分54秒に戻ってくるまでの間、日本は30-14の猛チャージで試合をコントロールした。「アジア選手権の後も結構合宿をしていたので、練習の成果だと思います」という杉本の言葉は、アジア選手権を勝ち上がったメンバーたちのプライドを示すもの。前日のスペイン戦で存在感を発揮できなかった増田も、立ち上がりに2本の3Pシュート、中盤にマリの追撃を受けた時に2本のジャンパーを決めるなど、4Qだけで12点の大活躍。「八村がいると攻撃力が増すんですけど、ちょっと頼り過ぎてしまう部分もある。ファウルトラブルになった時、チームが一丸となれて、シュートを決めることができてよかったです」と語った増田は、昨年よりもシュートのレンジを広げ、選手としてレベルアップしていることを世界の舞台で示した。

最後の3分でシュートの早打ちやつまらないファウルを犯したことで、マリに3点差まで詰め寄られた。残り15.6秒でセコウ・デムベレが2本目のフリースローを外した後にオフェンス・リバウンドを奪われると、残り8秒にイブラヒム・カマラに決まれば同点という3Pを打たれる。しかし、ボールはリムを弾いた後にサードチャンスを与えながらも、その直後に打たれたのは2Pシュート。これもミスとなった瞬間、日本は76対73でマリを撃破。トーナメント1回戦でアメリカを回避し、準々決勝進出の可能性が上がるという点で、この勝利は大きな意味があった。

「今日、塁はあまりいいゲームができなかったけど、ベンチ陣のパフォーマンスは素晴らしかった。4人が2ケタ得点を記録したし、増田とアヴィが大きな違いになった。彼らがステップアップしてくれた。増田は何度もビッグショットを決めてくれた。終盤のマネージメントはもっとよくしなければならない。最後の3分は、寿命が10年縮まったような感じだった」

トーステン・ロイブルコーチは試合をこう振り返る。4Q終盤のプレイで賢さがなかったのは明らかといえ、これも世界の舞台で戦うからこそ味わえる貴重な経験。このU19ワールドカップ中にリードして終盤を迎えたとき、マリ戦の勝利が生きるはずだ。4日に対戦するカナダは、アメリカに続く優勝候補の一角と言われる強豪。日本にとっては失うものがない1戦となるだけに、ミスを恐れずにアグレッシブに40分間戦うことを期待したい。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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