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B1初代王者は栃木ブレックス。勝因は最後まで継続できたタフなディフェンスに尽きる

青木崇Basketball Writer
栃木の一体感が感じられた試合後の会見 Photo by Takashi Aoki

"Defense win the championship."

ディフェンスで頂点に立つというのは、アメリカだと必ず言っていいくらい出てくるフレーズだ。Bリーグの初代チャンピオンとなった栃木ブレックスが、千葉ジェッツ、シーホース三河、川崎ブレイブサンダースという並いる強豪を撃破できたのは、タフなディフェンスが一番の理由だった。

千葉とのクォーターファイナルでは、富樫勇樹を起点にしたピック&ロールと、3Pシュートを打たれないようにボールのない局面での対応が非常に厳しかった。抜群のシュート力と得点力を誇る三河の金丸晃輔に対しては、古川孝敏、須田侑太郎、熊谷尚也の3人が代わる代わるマッチアップすることで、ゲーム3の終盤で消耗させることに成功。川崎とのファイナルでも、4Qで辻直人と篠山竜青を存在感のない状態にさせ、2人に1点も取らせなかった。栃木のディフェンスがいかにタフで、ここぞというときに相手をどうしてストップできたのか? その理由は、1対1で粘り強くディフェンスし続けたことに尽きる。

千葉とのシリーズでは、ハードショーでピック&ロールの機能性を低下させたことに加え、ヘルプやダブルチームを極力減らすことで、3Pシューターを決してオープンにさせなかった。それは、富樫、タイラー・ストーン、石井講祐が2試合で1本も3Pを決められなかったことでも明白。三河のアイザック・バッツ、ギャビン・エドワーズ、桜木ジェイアールというインサイドが強いトリオに対しては、ライアン・ロシター、ジェフ・ギブス、竹内公輔のフロントラインが1対1で対応することを最後まで継続。その成果は、ゲーム1で金丸を9点に抑え、15点差で快勝したことが物語っていた。

川崎とのファイナルでも、ニック・ファジーカスという強力な得点源に対し、ロシターとギブスが1対1でディフェンスし続ける。ヘルプやダブルチームで仕掛けることは、千葉戦や三河戦同様にほとんど見られない。バスケットボールは1チーム5人で行うスポーツだが、マッチアップする個々の戦いで優位に立てるかも、勝つための大事な要素。栃木はある程度の失点覚悟でファジーカスを1対1で対応し続けると同時に、チャンピオンシップで絶好調だった篠山、当たりだすと止まらない辻をボールのないところで封じることを、ディフェンスの最優先事項にしていたのである。

昨日アップしたファイナルのプレビューでは、勝敗を分ける要素の一つとして3Pシュートをリストアップ。栃木はチャンピオンシップを通じて、3Pシュートを徹底的に抑えるプランが一貫していた。川崎は辻と篠山が1本ずつ決めただけの15.4%と非常に低い成功率だったのに対し、栃木は古川の3本を最高に5本成功(31.3%)。古川は残り1分7秒に点差を3に広げるビッグショットを決めるなど21点を奪っただけでなく、厳しいディフェンスで辻を9点(3Pは1/7)に限定させた。小野龍猛、金丸、辻という違うタイプとマッチアップしながらも、攻防両面で活躍できたことを考慮すれば、チャンピオンシップのMVP選出に十分値するし、トーマス・ウィスマンコーチが「すばらしい仕事をしてくれた」と称賛するのも当然と言えよう。

川崎はディフェンスのタフさで、栃木に負けていた。82点目となった古川のシュートは、栃木がハーフコートのセットで最も得意とするダウンスクリーンからのプレイ。千葉やゲーム2の三河に比べると、川崎がこのプレイから失点したシーンが多かったのは、篠山の「栃木のほうが気持で上だったのかなという印象です」というコメントからも十分理解できるはずだ。

栃木も川崎も主力の顔ぶれはここ数年大きな変化がなく、チームとしての完成度が高いチーム。B1初代王座をかけたファイナルで勝敗を分けたのは、やはり心身ともにタフでなければ最後までやり切ることのできない、ディフェンスだった。1対1の攻防で負けないこと、チームが一つとなって戦うということでは、栃木のほうが少しだけ川崎を上回ったのである。それは、キャプテンである田臥勇太の言葉に集約されていた。

「最後の残り5分くらいですが、だれひとりあきらめる選手はいませんでしたし、チーム全員で自分たちのバスケットをやり抜こうということだけでしたね。みんながお互いに声をかけ合ってやれたことが、本当に大きかったと思います」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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