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朝倉海は復帰戦で元谷友貴に勝てるのか?バンタム級王座に返り咲く可能性は? 5・6『RIZIN.42』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
約1年半ぶりにリング復帰を果たす朝倉海(写真:RIZIN FF)

傷めた右手は完治している

「怪我をしていた期間にたくさんの方に支えてもらいました。皆さんに恩返しができるような最高の闘いを約束します。そしてRIZINには『やっぱり朝倉兄弟が必要だ』と思ってもらえるように頑張ります!」

3月6日に東京・銀座で開かれた記者会見で『RIZIN.42』(5月6日・有明アリーナ)での復帰が発表された直後、朝倉海はそう話した。この時、彼は米国でトレーニング中、会見にはリモートで参加している。

久しぶりの闘いだ。

一昨年(2021年)大晦日『RIZIN.33』以来のリングとなる。

あの日のメインエベント「バンタム級トーナメント決勝戦」で朝倉は扇久保博正(パラエストラ松戸)と闘い判定で敗れた。その数時間前には準決勝で瀧澤謙太(フリー)と対戦し勝利したが、この時点で右手を負傷。そのまま決勝戦を闘ったことで右手の状態が悪化し、長期にわたる戦線離脱を余儀なくされていた。

本来は昨年7月の沖縄アリーナ『RIZIN.36』で再起の予定だったが、練習中にまたもや右手を傷め同大会を欠場。リング復帰まで予想以上に時間がかかった。

「傷めていた箇所も完治し、いまは体調的にも問題ない。しっかりと勝ちます」

そう話す朝倉は、2月下旬から米国にわたりラスベガスにあるジム「シンジゲートMMA」を拠点に、UFCファイターのメラブ・ドバリシビリ(ジョージア)、Bellatorで闘っているパッチー・ミックス(米国)らとともにトレーニングを行っている。新たな技術も身につけ、再出発に万全を期しているようだ。

そして5・6有明のリングで対峙するのは、”いぶし銀”元谷友貴(フリー)─。

記者会見後、朝倉海のパネルを手に撮影に応じ闘志を滾らせる元谷友貴(写真:RIZIN FF)
記者会見後、朝倉海のパネルを手に撮影に応じ闘志を滾らせる元谷友貴(写真:RIZIN FF)

5連勝と勢いに乗る元谷友貴

朝倉がリングから離れている間、RIZINバンタム級戦線に大きな動きはなかった。タイトルマッチも行われていない。

それでも敢えて挙げるなら、トピックは次の2つ。

まずは、王者の堀口恭司(ATT)がフライ級転向を表明しベルトを返上。もう一つは、元谷が5連勝を果たしたことだ。

一昨年の大晦日『RIZIN.33』で金太郎(パンクラス大阪・稲垣組)に判定勝ちした元谷はその後、アラン”ヒロ”ヤマニハ(ボンサイ柔術)、太田忍(パラエストラ柏)、倉本一真(リバーサルジム新宿MeWe)を立て続けに撃破。そして昨年大晦日『RIZIN.40』では、元UFCファイターのホジェリオ・ボントリン(ブラジル)からKO勝利を収めている。

朝倉は、いま乗りに乗っている男と再起戦を闘うことになるのだ。

粋なマッチメイクだと思う。

総合的に見て、両者の力は互角。

打撃力で上回る朝倉と、組み合いと寝技で粘り強く闘える元谷。自らの得意な展開に引き寄せた方が勝利を掴むだろう。

ただ相性においては、朝倉に分がある。

元谷は、ガチガチのグラップラーに対しては強く、引き出しの多さとスタミナで勝ち切る能力を有している。しかし、ストライカーに対する対処には難があるように思う。

朝倉が自らの距離をキープし打撃で攻め込んだなら、元谷が組みつくのは容易ではない。フィジカルにおいても長ける朝倉が一気に攻め切る展開になるのではないか。7-3で朝倉優位と見る。

アーチュレッタと井上直樹

そして今回の試合は、堀口恭司が返上したRIZINバンタム級タイトルへとつながる。『RIZIN.42』では、井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)vs.フアン・アーチュレッタ(米国)も行われ、それぞれの試合の勝者が7月下旬に首都圏会場でバンタム級王座決定戦に挑むことが決まっているからだ。

朝倉が元谷に勝利すれば、井上、アーチュレッタのいずれかと闘うことになる。

昨年大晦日、RIZINに初参戦しキム・スーチョル(左)に勝利したフアン・アーチュレッタ(写真:RIZIN FF)
昨年大晦日、RIZINに初参戦しキム・スーチョル(左)に勝利したフアン・アーチュレッタ(写真:RIZIN FF)

朝倉と同じく米国からリモートで会見に参加した元Bellatorバンタム級王者のアーチュレッタは言った。

「イノウエとの試合の次がタイトルマッチになることは非常に嬉しい。私は必ずイノウエに勝つ。そしてカイ(朝倉海)と闘うのが相応しいだろう。多くのファンが、それを望んでいると思う」

対して井上は「次につなげるためにしっかり勝ちたい」とだけ話し、敢えて朝倉には触れなかった。

4人の中で誰がベルトを腰に巻くのか?

本命・アーチュレッタ、対抗・朝倉。

これが大方の予想だろう。

それでも4人の実力は拮抗している。一昨年大晦日の「バンタム級トーナメント」で扇久保が優勝したようなアップセットが起こっても何の不思議もない。

朝倉海は米国修行を経て、さらに輝きを増しているのか? 進化するRIZINバンタム級戦線においても再びトップに立つ実力を有しているのか?

まずは5・6有明、バンタム級の熱き闘いを注視したい─。

<『RIZIN.42』主要対戦カード>

上記のカードを含め全10~11試合が予定されている(提供:RIZIN FF)
上記のカードを含め全10~11試合が予定されている(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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